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良縁悪縁ひっさげ歩む我が人生  作者: あすか
第一章
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第十三話「戻して来なさい!!」「まだ子供なんです!!まだ子供なんです!!」

二人と一匹がいたのは中央広場から少し離れた場所にある『冒険者ギルド』。


駆け付けた時にはもう大勢の冒険者が野次馬として集まっていたが、俺やオウカの腕章と鎧を見て、直ぐに道を開けてくれた。『サザール騎士団』が見回りしてからというものこうした問題の解決も役目の一つになっている。実に面倒だ。


「カイト、私はあの魔獣を見てるから女の子の方をお願い。なるべく優しくね?」

「俺をなんだと思ってんだ。……獣人だからある程度の意志疎通が出来るんだったな、任された」


さて、と……先ずは少女の方だが、黒髪のロングヘアに赤い瞳。白い花の装飾をあしらった赤のワンピース、黒い薄手のカーディガンを羽織っている。


平民か貴族かは着る服装でなんとなく見分けがつく。


彼女の服装は平民にしては上等なものだ、貴族……もしくは名門のお嬢様、といったところだろう。


「そこのキミ、これはなんの騒ぎだ?」

「何よ!? ───って、きっ、騎士!?」


話しかけると少女はキレ気味で反応し、直ぐに俺の腕章を見てその態度を一変させた。おお、こわっ。


「『サザール騎士団』のカイトだ。とりあえず落ち着いて、何があったのか話を聞いてもいいかい? 見たところ、貴族様か名門の家のようだが……」

「わ、わたしはルイズ……ルイズ・アレイスターと言います。お見知りおきを……」


びくびくしながら少女───ルイズはカーテシーをして見せた。


「アレイスター……なるほど、キミが」


魔法の中でも精霊や魔獣を召喚し使役する魔法である『召喚魔法』。アレイスター家は、それを使いこなす優秀な『召喚士』を多く輩出してきた名門だ。


しかしそれはもう過去のものとなった。


二ヶ月ほど前に、魔獣を従えてクーデターを起こし国家転覆を図ったとして当主のオルキス・アレイスターが捕らえられて処刑され、アレイスター家は没落したと新聞にでかでかと書かれていた。


一年前に勇者召喚するに至った魔獣の軍勢。それがオルキスが召喚したもので、勇者召喚したのもオルキスであり、全ては彼の自作自演である、という多数の貴族からの証言によって……。


ルイズはオルキスの一人娘。母親はルイズを産んで直ぐに亡くなっており天涯孤独の身だ。今は『平民街』で静かに暮らしていると噂話で聞いたが、


(どうも()()()んだよな、証言した貴族ってのが……)


そもそも多くの国を追い込むほどの数の魔獣を一人の人間が使役できるのかって話だ。『召喚士』たちがオルキスに協力したのなら可能かもしれない。でも罪に問われ、処刑されたのはオルキスのみ。他の『召喚士』はノータッチときた。これではまるでオルキスのみを一点狙いしたようじゃないか。


「そちらはキミの友人かな?」


いまだに正座している青年は、白シャツに黒のベスト、黒のズボンと見た目は普通の服装だがブランド物だ。ただそれ故になんか着せられてる印象がある。藍色の髪に灰色の瞳で俺よりも年は下だろう。


「レンは、わたしの従者です。わたしが昨日番犬が欲しいなって言ってたのを聞かれたみたいで、どこかで野良犬でも拾ってくるのかと思ったら……」


ルイズがチラッと魔獣の方を見る。


「わっ、すごい良い子じゃない」

「ワオン」


オウカに撫でられてご満悦な魔獣。日の光で銀色に輝く大きな狼型のその魔獣を俺は知っている。魔獣の討伐作戦で何度か遭遇したからな。


「Bランク魔獣の銀狼(シルバーウルフ)……群れで行動し、素早く隙の無い連携で獲物を追い詰める厄介な魔獣だ。しかもこの大きさ……群れのリーダー格だな、となると強さはAランクか。ここにいる冒険者が全員でかかっても返り討ちにされるな」

「ヒイッ!!」


蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていく野次馬の冒険者たち。彼らも強さは装備を見れば分かるからな、なんならルイズ以上にびくびくしながらこの魔獣を見てたし。


「よし、野次馬も消えたことだし場所を変えようか。ずっとここにいるのも周りの迷惑になる。オウカ、ソイツは大丈夫そうか?」

「今、自分が勝手に動いたら彼の迷惑になるから言われた通りにする、って言ってる」

「彼?」

「そこの彼のことだと思う」


オウカが指差したのはレンという青年だった。


「オイオイ、まさか従属しているのか?」

「そうみたい、信じられないけどね」


魔獣の世界は弱肉強食。Aランクともなれば滅多なことでは負けることはない。真正面での戦いなら同格かそれ以上のSランクでなければ勝てない。


そんな存在が、この青年に従属している。


(つまりこのレンって奴は銀狼(シルバーウルフ)と同格か、それ以上ってことかよ……)


多分まだ未成年だろうに、人は見かけによらないとはこのことか。


「じゃあレン、アイツはお前の言われた通りにするようだ。大人しく付いてくるように言ってくれるか?」

「は、はい……おいでロルフ……」

「ワン!!」


尻尾を振りながら銀狼(シルバーウルフ)はレンに近寄る。すごい懐いてるな。


「ってレン!? もう名前まで付けてるの!?」

「うん、カッコいい名前だろ?」

「~~~~~~っ」


あー、その気持ちは分からなくもないぞ。


もう何から言っていいのか分からないって感じのルイズ。犬が欲しいって言って連れてきたのが魔獣ってだけでもどうしてそうなるって話だし、しかもそれがAランクでなんか懐いてるし、名前まで付けてある。突っ込みどころしかない。


「はぁ……じゃあ、わたしの家でどうですか……?」

「それで構わない。案内してくれ。いいよなオウカ」

「魔獣を勝手に連れ込んだのは問題だけど、ここまで懐いてるなら問題は無いしね。ロルフくんをどうするかの解決案も浮かんでるでしょ?」

「前にもこんな事があったからな。あの通りにすれば大丈夫だろ。それでダメだったら、泣こうが喚こうが問答無用で出てってもらうだけだ」


既に似た案件を何度か解決したことがある。ルイズにとっても悪い話ではないはずだ。


(あとはもし俺の予想か当たっているなら、忠告もしておかないといけないからな)


ルイズに道案内を任せ、俺とオウカはその後ろを付いて行く。


だがこの時、俺もオウカも気付いていなかった。野次馬の冒険者がいなくなったことで、この場には俺たちしかいないと思い込んでしまったから───。




「……ふーん、もうAランク魔獣を手懐けられるようになったんだ。中々の成長速度だ、うん、これなら次の段階に進んでも良さそう。それとあの彼は他とは変わった()を感じるね、あとでレンくんに聞いてみようかな」




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