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良縁悪縁ひっさげ歩む我が人生  作者: あすか
序章
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第十話「労災あるかな」「慰謝料は取れそう」

オウカと一緒にいた女神はアーゼスと名乗った。


『サザール騎士団』の副団長だという。シムとは同期で、彼の急襲で頭を怪我した俺の治癒をしてくれただけでなく、どこか異常は無いかと暫く様子を見てくれた。


「なるほど……シムの大声に驚いて、天井まで飛び上がったと」

「はい、なんか【脚力強化S】なんて身に覚えのない能力が発動して……」

「…………………まさか大声かそこまで脅威になるなんて」


頭を抱えるアーゼスさん。ちなみにオウカは濡れタオルで血で汚れた俺の頭や顔を拭いてくれた後、倒れてるシムをどこかに引き摺って───あ、廊下にポイ投げした。


「カイト君、貴方の【身体能力:B】なんだけどね。詳しく調べたら特化型だったのよ」

「特化型?」


首を傾げる俺にアーゼスは簡単に説明してくれた。


曰く、【身体能力】には万能型と特化型の二種類があって特化型には条件付きで何かしらの強化を受けられる、と。


俺なりに解釈するとステータスの数値にあまりばらつきが無いバランスタイプが万能型で、ステータスの一つの項目だけが異常に高く他が低いのが特化型ってことか。


「ランクが高い万能型とかキツくないです?」

「まあBランクはまだしも、AランクやSランクまでくるとそれだけで脅威よね」


いくら努力値を振っても野生と伝説では元のステータスからして大きな差がある。ランクが高い万能型は伝説、それ以下は野生と覚えとこう。やだなぁ伝説、戦いたくない。


「脚力特化型。カイト君の場合、脚力がBランクで他がDからCランクね。そして強化の方は回避・逃走する際に脚力がAランクに、危機的状況下の際に脚力はSランクになるわ」


それを聞いて思ったのは、これランク詐欺じゃね、という疑問と、昨日のオウカからの弾幕から逃れたのはこの強化によるものか、ということだった。


「……ん? つまり俺はシムさんの大声を聞いて、それが俺にとって危ない状況だと体が判断したことで脚力がSランクになって、普通じゃ届かない天井まで勢いよく飛び上がったと?」

「そうなるわね、認めたくないけれど……」


まさか同期の大声が他者にとって、危機的状況だと思われるくらいにデカいなんて思いたくないだろう。そんな生きる音爆弾が俺の友達だったら間違いなく距離を置いてる。


「俺、ここのメンバーになるんですよね? というかもうなってます?」

「シムがもう貴方の書類を王宮の執務室に紛れこませちゃったし、バレてなきゃ、もうここの騎士って扱いね」

「あの人、いつもあんな大声なんですよね……?」

「いつも大きいわね……」

「「…………………」」


不意打ち同然にいきなりあんな大声で声をかけられ、その度に脚力が強化されて、その状態で飛び上がる毎日が容易に想像できる。


「シムにはよぉ~く言って聞かせるわ……」

「その、ご迷惑をおかけします……」


とりあえず分かったのは、アーゼスさんは苦労人だってことだった。



その後、オウカが客室に戻ってきた。真新しい白の制服を抱えている。


「これがカイトの制服。隊舎で待機してたり、式典とかパーティーに出席する時に着るものだから、なるべく綺麗にしててね。あっ、大きさは合ってると思うけど、違ったら言って」

「ありがとう、後で確かめておくよ」

「それから鎧なんだけどカイトは使う?」

「いや、必要ないな。このままでいい」


『偵察兵』という職業や俺の戦い方に鎧はいくら軽装でも邪魔で目立つからな。


「そこまで潜むことに徹底した格好をするくらいだもの。鎧は要らないって言うのも当然ね。でも騎士団に所属している証として、腕章はくらいは付けていて欲しいわ」

「強制しないんですか?」

「貴方は騎士団の偵察班に配属されるのだけれど、そこでは装備について特に決まりはないの。オウカも偵察班だけど、彼女の場合は軽装備の方が動きやすくて全身鎧は趣味じゃないし動きにくい。あと魔法で自分の格好を自由に偽る得意技があるからどうにでもなるのよ」


なるほど。それは便利で、面白そうな魔法だ。


「腕章は後で用意するわ。偵察班での仕事とかは後で説明するとして、先ずは外に行きましょうか。カイト君の能力についてこちらも把握したいの」

「分かりました」


俺の能力は流石に気になるよな。でも俺ですら【保管庫】にどんなのがあるか正確に把握してない。全部使って見せるのはなんか面倒だし、こっそり使いたい物があったりするから、とりあえず召喚するのは求められる物だけにして、残りは事前か事後にでも報告すればいいだろう。


アーゼスさんとオウカに連れられ、昨日と同じく運動場に移動。既に何人かの騎士がランニングしてたり、木剣で打ち合ってたりと朝活に励んでいる。


あと隊舎の窓から大勢の人がこちらを見てくるがアレは見物人だろうか。


「シム団長が、カイトの能力のお披露目するから気になる奴は見ておけ、なんて言ったものだからみんな来たみたい」

「そこまで気になるのか、俺の能力」

「何かを撃ち出して攻撃するってことしか分からなかったからね。全く知らない、未知の攻撃の正体をみんな知りたいの。私だってその一人だから」

「それは同じ偵察班の先輩としてか?」

「勘だけど、私とカイトで組むと色々と戦術が広がりそう」


それは俺も思った。


「じゃあ今からカイト君の能力を見せてもらうわね。先ずは、昨日使った武器は出せる?」

「はい」


俺は左手人差し指に付けた指輪の凹凸部分を押してバーストアサルトライフルを召喚した。昨日と同じってことならレア度はR(レア)だ。


「なんだあれ」

「鈍器か?」

「それにしては細身というか……」


見物に来た騎士たちがざわつくのを聞きながらアーゼスさんに銃身と銃口を見せながら説明する。


「銃と言います。筒状の銃身……ここの穴から弾を発射する道具です」

「えっ、これで? この穴から?」

「はい」


信じられないといった様子だ。特に銃口の穴の大きさに注目している。


「この穴から出るってことはそれだけ小さい弾よね……それであの威力を……」

「何か的になる物を出してくれれば実際に使って見せますが」

「オウカ、お願い」


オウカが頷きやや駆け足で運動場の真ん中辺りまで行き地面に向けて手を向けると、


「……土人形(ドール)


ボコッと地面が盛り上がって土や石で出来た人形が出てきた。


「カイト、土をメインにして強度は人間と同じようにしたから。特に人間に対して使う武器なんでしょ?」

「ああ、ありがとう。危ないからこっちに戻って」


生物、特に人間を殺す武器だって言ったのを覚えていたのかな。だから土の人形の強度を調整したんだろうけど、お陰でアーゼスさんや見物してる騎士たちが思いっきり警戒心を露にしたのを背中で感じることになっちまった。すごい視線を感じる……。


「それじゃ、いきまーす」


相手が人でなく人形だから気軽になれる。構えは膝立ち(ニーリング)。狙いを合わせることに集中する。そして体の揺れを無理に抑えようとはせず、人形の片足の付け根に照準が合った瞬間を逃さず、引き金を引く。


タタンッと。二回の破裂したような発砲音と共に二発の銃弾は狙い通り、土人形の片足に命中。


土を撒き散らし、吹き飛んだ片足が崩れて地面に還る。


「更に……」


続けて、一本足になって倒れる寸前の土人形に発砲。胴、腕、頭に撃って風穴を開け、土人形はボロボロと崩れ落ちた。


「まあ、こんなもんです。今はこんな距離ですけど、もっと遠くからでも攻撃できますよ」

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