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記憶とカルマ

少しシリアス。

アリアちゃんは、泉の精霊の所に毎月一回行くことになった。


そう、カルマを解放する為に。


でもね、最初その説明を聞いた時、カルマを無くす重要性がすごく腑に落ちたので感心しきりだったけど、よく考えたら何故記憶を消すのにカルマを無くさなくちゃいけないの? と、気が付いた。


私の疑問にアリアちゃんも、あ、と思ったみたい。それでまた聞いてみた。


精霊さんによると、あくまでアリアちゃんの場合そうなのだと言う。

天界の娘であるアリアちゃんに、わざわざ神様が浄化し記憶をも消してくれてたのにも関わらず、思い出してしまうのは、実は辛い記憶が辛いという執着になってしまってカルマとなり、そのカルマが消した記憶を呼び戻してしまうのだとか。


元々天界の住人は人間と違ってカルマは本来無いのだという。


私は普通の人間の場合はどうですかと尋ねたら、そもそもこんなに鮮明に事細かく前世を覚えている者は稀でしょ? とのこと。確かに覚えていてももっと断片で朧げだと思う。


ただ、人間の場合前世を詳しく覚えていたり、思い起こす事が出来る者は霊的な能力を持つ者が主で、こちらはカルマではなく能力が理由で前世を思い出したり覚えているらしい。


カルマというのは、あるのがいけないとは言わないけれど、無い方がやっぱり良いって話。


精霊さんは私にも、自分とそしてカルマと向き合うといいと言っていた。


私自身、普段へらへらとお気楽に生きているけど、悩みやふとした時に思い出す辛い事が無い訳ではない。


例えば子供の時親に言われた事、友達に裏切られたように感じた時や、酷いことを言われた時、大人になり子育ての時、ママ友や学校行事の付き合いで嫌々愛想笑いで付き合っていた時のこと、子供にもっと親身になってやればよかったと後悔したこと、旦那と大喧嘩したこと、そのまま冷戦状態で仲直りする前に事故で亡くしてしまったこと・・・・


思い出したら結構あるわね(溜息)


私は本当に辛い時、今凄い辛いんだなと、とことん落ち込むことにしていた。これはどん底まで行こう、そしたら後は上がるだけ、という根拠なき浮上のやり方なのだ。


でも深く考えてなかったけど、とことん落ち込むという感情を味わうということは、きっと無意識にいろんな事を向き合っていたのかしらね? わりと早く浮上したから。まあ、悲劇の主人公になるのはやめようとも思ったわ。


そう言えば、本で見たか、テレビで見たか、ネットで見たか忘れたけど、人間の寿命って生まれる前から決められているって話を聞いて、とても感銘を受けた。これは、例えば50歳で死ぬと決めて生まれて来たとしたら、50歳で亡くなるという事。そして死亡の理由は病気だったり、健康で死にそうになかったら、事故だったり自死だったり、何かしらの理由を設けてその決めた歳で亡くなるんだと。


それがホントかどうかはわからないけど、私自身は腑に落ちたし、慰められもした。そうか、自分で決めて来た寿命か、旦那がそう決めて生まれてきたならしょうがないな、ってね。


なんだか、しんみりしちゃったかな。まあでも、私ももう若くもないし、これからは人生後半は気楽に楽しく生きていくわ。


勿論アリアちゃんの幸せを応援がてらね。





洋子さんと二人三脚で泉に通って、また一年経った。


私アリアはもう、16歳になったのよね。


泉に行くその合間に、時々だけどドラゴンの遺跡や魔王の酒宴に顔を出している。だってもう来ないのか? と必死な顔なんだもん(汗)


キューブは「甘いですよお嬢様」なんて言うけど、キューブだってあの後から毎回連いて来ている、強引に。


洋子さんは、「勉強になるわ~、これって自己啓発セミナーみたいよね。アリアちゃんの応援引き受けてよかったわ」と言ってくれた。


確かに、行く度に気持ちが軽くなる。


ところで、悲しい事がひとつだけあった。


あの半年後、泉の精霊のお母さんが亡くなった。これはね、最初から決まっていた事なんだって洋子さんが教えてくれた。卵から子供が孵ると、親は死ぬって。だから精霊の子供が寂しくないように仲良くなろうって思ってる。


そうそう、感受性や信仰心が高くなってきたから、モンスターとの戦闘が減った。出会っても会話をする事が出来て戦闘にならないのだ。どうしてもお金を稼ぐ為に戦いたいのであるなら、悪魔に挑めばいいと洋子さんの話し。ボコるなら悪い奴よとのこと(汗)


でも、最近何もしなくてもお金が入る。グランパァのお小遣いだけでなく、あのちょっと気持ち悪い貴族みたいな人が、お金を持って求婚に来るのだ。で、断ってもお金を置いていくのだ。


泉に行って、色々な人と出会ったり話したり、お父さんと旅行に行ったり、キューブと他の方面の武者修行に行ったり、たまに習い事に行ったり、いろんなことをして過ごしているうちに、ある日ふと気がついた。


「私、もう、覚えていない・・・・ 忘れようと思ってたのに、忘れられなかった辛い場面が、もう全然思い出せない! 覚えていない! 悔しい事も惨めな事も荒んだ事も、そういう事が事実として過去あったという事は覚えているけど、もう視覚でも感触でも感情でも、記憶としての事やその時の感情は、何も覚えていない・・・ 洋子さん、もう覚えてないよぉ・・ う・・ううっ 」


嬉しくて泣いた。洋子さんも泣いてた。




こっそり娘の様子を覗き見ていた父とキューブも、陰ながら泣いていたのは、二人も気付かなかった(汗)

良かったね。

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