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第1話 私の週末の楽しみ

   

「いらっしゃいませ」

 マスターの柔らかい声に迎えられて、心地よい香りで満ちた店内に足を踏み入れる。

 チェーン店ではなく、今時珍しい個人経営の喫茶店だ。家から徒歩十五分の距離にあり、ここで旨いコーヒーを味わいながら小説を書くのが、私の週末の恒例となっていた。


 小説を書くといっても、別に私は作家ではない。ごくごく平凡なサラリーマンだが、投稿小説の執筆が趣味なのだ。

 ガスランプを模した、ほんわりとした室内照明の下。茶色い革張りの椅子に座って、持参してきたノートパソコンを広げる。

 画面の右半分でワープロソフトを使い、左半分には、小説投稿サイトを開いておく。私が三年前から利用しているところであり、サイト名は『Jeder Stern』。ドイツ語由来で「全ての人々に星々を」みたいな意味らしい。

 小説投稿サイトなので、素人が書いた小説でも、読者は喜んで受け入れてくれる。それも素晴らしい出来事だが、私が気に入っている『Jeder Stern』の最大の特徴は、毎月二回、短編コンテストが開催されていることだった。

 登録以来、私は欠かさず応募している。平均すると、毎回三作品くらいだろうか。一作品しか書けなかったこともあるが、逆に一回のコンテストで五作品応募したこともあった。

 ちょうど数日前が応募締切だったコンテストでも、『子供の頃の夢』というテーマに対して、『宇宙飛行士になりたかった男』『大きくなったらパパのお嫁さんになる』『夢を忘れて挫けた時は』『大人と子供の見る世界』『純真無垢な時代』の五作品を応募したばかりだ。


 現在は二つのコンテストが開催中であり、それぞれテーマは『お婿さん』と『(いかり)』。前者には既に三作品を書いたので、今日は『(いかり)』の方を書くつもりだった。

 いつもいつも海に落とされて嫌になっちゃうよ、といういかりの嘆きを軸にした物語だ。主人公は擬人化されたいかりだが、船員や乗客など、普通の人間も登場するので……。

   

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