43話 ファーノザ国、国王
43話 ファーノザ国、国王
兵士に案内されて広い謁見の間に入った。
突き当りに三段ほど階段状になっている高い場所があり、そこにある玉座にチンパンジーの貴猿が座っている。 いかにも国王風の赤い衣装と長いマントに身を包んでいた。
階段の下の左側にはヤコボ町で会ったお医者さんの顔をひと回り大きくしたようなオランウータンが紫色のローブを着て座っている。
多分宰相のような、一番偉い人だろう。 貫禄十分だ。
そして右側には、ファビオより大きいのではないかと思うほど大きくてガッチリした体系のゴリラが立っていた。 略式ではあるが鎧を着て、背中に剣を背負っている。
絶対将軍だ。
······強そう······
俺たち4人は(ノエミちゃんもヴィート先生の胸ポケットから出てきて、横を歩いている)国王の前まで行き、膝をついて頭を下げた。
「ヴィート先生! 久しいの! おぉノエミ殿も。 御二人ともお元気にしておられたか。 堅苦しい礼はいらないので立ってくれ」
俺たちは遠慮なく立ち上がった。
「大変御無沙汰しております。 王様こそお変わりはございませんでしょうか?」
「もちろんだ」
「それはようございました。 先ずはこちらを」
ヴィート先生は早々に胸から巻物状の書状を取り出して差し出した。 すると案内してくれた兵士がそれを受け取って、ゴリラの将軍に差し出した。
そしてゴリラの将軍が階段を一歩上がり、膝をついて国王に書簡を捧げ持つ。 国王はそれを受け取って巻物を広げて読み始めた。
少し読み進むと「えっ?」という表情で顔を上げ、俺を凝視した。
······人間族の事が書いてあるのだろう······
再び視線を落として読み終わると、オランウータンの宰相に差し出した。
受け取った宰相もその書状に目を通すと、同じように顔を上げて俺を見つめた。
「王様、改めて紹介いたします。 こちらの貴狼族はインザーギ・ニコロ殿。 そしてこの御方が」
俺の方に手の平を差し出す。
「人間族のクラキケント様です」
国王は立ち上がり玉座から降りてきて、なんと! 俺の前で膝をついた。
「私が生きている間に人間族にお会いできるなんて、光栄の至りに存じます」
「王様、やめてください」
俺は慌てて国王を抱き起す。
「昨日の強盗の話しを耳に挟んだのですが······」
「さすがよくご存じですね」
「やはりそうでしたか。 貴猿離れした力だという報告を受けていました。 まさか人間族だとは思いもしませんでしたが」
「王様、ヤコボ町のピューマの話しは聞かれていますか?」
ヴィート先生が得意げに横から話しかける。
「もちろんだ。 貴猿と貴狼の4人組が倒したと······もしかして、お主たちか?」
「あれはケント様お一人で倒されたのです。 我々は事後処理をしたまで」
「誠か!! 一人でピューマを倒す事など可能なのか?! いやぁ、感服した」
「国王様、一つお願いがございます」
「なんだ? ヴィート先生、遠慮なく申せ」
「実は、申し上げにくいのですが······昨夜、貴狼を捕えられたと思いますが、彼を開放していただきたいのでございます」
「捕らえるにはそれなりの理由があります」
そう言ったのはゴリラの将軍だ。
「当然でございます。 しかし彼にはやんごとなき事情があったのでございます」
「その事情とは?」
ヴィート先生は俺の顔を見る。 まだ迷っているのだろう。
しかしこの国王には疚しさが微塵も感じられない。 これが演技だろしたら心底恐ろしい食わせ者だ。
おれはヴィート先生に向かって頷いた。
踏ん切りがついたのか、ヴィート先生は女王失踪事件の事の始まりから、ファビオが城に忍び込んだ理由まで全てを話した。
「実はこの国を訪れたのも、表向きは人間族のケント様の視察となっておりますが、女王様の手掛かりを探すのが本当の目的でした」
国王が兵士に目配せすると、兵士は走って行った。
「どう思う?」
国王は宰相に問いかける。
「我々に容疑をかけて、貴狼族と我々を戦わせようという魂胆のようにも思えます」
「ケント様も同じ事を仰っています」
「貴豹の奴らの罠か?」
将軍が身を乗り出す。
「そう決めつけるのも危険です。 それに国王様の仕業ではなくても、貴狼族と貴猿族の戦争を望む者が仕掛けた罠かもしれませんし」
「ケント様! 失礼ですが、貴猿族にそのような輩がいると聞こえるのですが?!!」
大きなゴリラが怒りを露わにすると、迫力が半端ない。
「あくまでも可能性を言っているのです」
「まぁまぁ将軍、落ち着いて。 とにかく我々も協力して調べましょう。 女王様のような白い貴狼を見たか、もしかしたら翼竜を見た者がいるかもしれません」
そこへノックがあり、先程の兵士の後ろからファビオが入って来た。
「ケント様!!」
「ファビオ!」
尻尾を振りながら走って来た。
「申し訳ありません」
「お前も無茶をするなぁ」
「捕まるつもりはなかったのですが、見つかってしまっては抵抗するわけにもいかず、こういう事になってしまいました」
「地下からのファビオの声をニコロが聞き取ってくれなければ、そのまま牢に入ったままだったぞ」
「みなさんが城に来ることは分かっていたので、ニコロなら必ず聞き取ってくれると思っていました。 ニコロ、ありがとう」
「俺やなかったら聞き取られへん所やったわ」
「コホン、みなさん、王様の前ですよ」
「失礼いたしました!」
ファビオが直立不動になる。
「ジャンシャード国近衛隊副隊長ですが、現在はクラキケント様直属護衛のサルバトーレ・ファビオであります。 この度はご迷惑をおかけいたしました」
深く頭を下げた。
「おぉ、そなたがサルバトーレ殿か。 名は聞き及んでおるぞ。 恐ろしいほどの腕前で、奇跡の剣士と呼ばれておるとか」
「恐れ入ります」
「それと、先程はケント様の事で、そのままになっておったが、インザーギ殿も双剣の鬼神と呼ばれておると聞いておる」
「恐縮です!」
国王は満足そうに頷く。
「女王様の件はこちらでも聞き込みをしてみよう。 もちろん女王様が拉致された件はここにいる者だけに留めておく。 よいな」
将軍と宰相、そして俺たちを案内してくれた兵士にもしっかりと目を見て確認した。
「ありがとうございます。 よろしくお願いいたします」
お礼を言って帰ろうとすると「ちょっとお待ちを」と、国王が呼び止める。
「もうお帰りですか? 貴狼国の話しなどをゆっくりとお聞きしたいのですが······お忙しいですよね······」
国王という威厳はどこへやら、上目遣いで可愛らしく聞いてくる。 俺たちは顔を見合わせた。
「じゃあ、ヴィート先生だけでも······あっ、ノエミちゃんのお友達だったラウラちゃんを呼ぼうか?」
「ラウラはまだここで働いているのですか?」
「もちろんだ」
ヴィート先生の肩に乗っているノエミちゃんがキラキラした目でヴィート先生の顔を覗き込む。
「わかりました」
ヴィート先生は俺の肩をポンと叩いて、戻っていった。
「そうだ、みなさんも晩餐に御招待いたしますので、夜にお迎えに上がります。 それではお気をつけて」
俺たちの返事も聞かずにそれだけ言うと、ヴィート先生たちとさっさと奥に入っていった。
無事にファビオが解放されて良かった!
いい王様のようですね!
( ´∀` )b




