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41話 奇跡の剣士

 41話 奇跡の剣士




 詰所に向かっている俺たちの周りを囲んで一緒に歩いている野次馬たちの話しが弾む。


 始めから見ていたというキツネザルの貴猿の話しに、野次馬はもちろん、俺やファビオも耳を傾けていた。



「兄ちゃんが宝石店に入っていくのを見て、マントヒヒ一味(いちみ)は笑っていたよ。 案の定、直ぐに店に入って行ったんだ。

 見張りがいるので俺は近付けなかったが、(しばら)くして見張りが慌てて中に入ろうとした途端、もう一人の強盗をあの兄ちゃんが投げ飛ばして見張りにぶつけ、そのまま二人とも道の端まで飛んで行ったんだ」


「あのカニクイたちを?!」

「そうだよ! で、そいつらは強盗だから捕まえて店に運んでくれ!って兄ちゃんが叫んできたので、俺は周りの者と一緒にそいつを担いで店に入ったんだ」


「どうだった?! お店はグチャグチャになっていたの?!」


「とんでもない! ガラス一つ割れていなかったよ」

「うっそぉ~~!!」

「「「おぉぉぉ~~~」」」


 周りからもため息が()れた。


「それを本当に彼がしたの?」

「そうだよ」

「でも倒すところは見ていないのでしょう?」

「でも彼しかいなかったし」


「店員もいたでしょ?」

「いたけど」

「本当に彼が倒したのか、聞いてみなさいよ」

「俺が?」

「他に誰がいるのよ」


 ここまでキツネザルが生唾を飲み込む音が聞こえてきた。




 キツネザルがススッと俺の横に来た。


「なぁ、あの強盗たちを倒したのは兄さんだよな」


 物凄く遠慮がちに聞いてきた。 俺は笑いを(こら)えて(うなず)いた。


「4人とも? 一人で?」

「そうです」

「じゃあ、もしかしてヤコボ町でピューマを倒した4人組って······」

「俺たちです」

「俺は何もしていない。 ケント殿一人でピューマを倒したんだ」


 なぜかファビオが口を挟む。

 キツネザルの顔がパッと明るくなり、周りの野次馬たちも騒ぎ出した。


「ほら見ろ!! この人だったんだ! 聞いたか? ピューマも一人で倒したそうだ!」

「「「おおぉぉぉぉ~~」」」


「兄ちゃん、スゲ~な!」

貴猿技(キエンわざ)じゃないな」

「素敵だわ!」


「でも見なれない種類ね、何の種類か聞いてみてよ」

「また俺がか?」

「他に誰がいるのよ」


「ケント殿ニコロを呼ばなくていいですか?」


 ファビオが俺に話しかけてきた。 野次馬の質問を(さえぎ)るためだろう。 



······やっぱり気配(きくば)りのできる男だ······



「別に呼ばなくてもいいだろう

「この状況の中に自分がいなかったことを知ったら(くや)しがりますよ」

「ハハハハハ、だろうな。 ファビオは居合わせて良かったな」

「本当ですよ! 何だか通りが騒がしいので行ってみたら、案の定ケント殿が元凶(げんきょう)でした」

「おいおい、俺が悪者みたいじゃないか」


 ファビオはフッとため息をつく。


「ケント殿の行くところでは、必ず事件が起きますからね」

「俺が起こしているんじゃないぞ」

「分かっていますよ、ハハハハハ」


 俺がほっぺを(ふく)らませて(すね)ねてみせると、珍しくファビオが声を出して笑った。




······ファビオの笑い声を初めて聞いた気がする······




 俺も嬉しくて一緒に笑った。




 ◇◇◇◇




 詰所に着いた。 貴狼族の詰所と造りはよく似ている。

 強盗犯たちは奥に連れていかれる。 ドアの隙間から奥の部屋に鉄格子があるのが見えた。


 俺と従業員の2人はカウンターの前の椅子に座るように言われ、紙とペンを目の前に置かれた。


「先ずはこれを書いてくれ」


 名前と住所、年齢、種族と種類を書く欄がある。



 名前を書くと「クラキケント? 変な名前だな」と、兵士が向かい側から俺が書くのを見ながら自分の手元の調書に書き写している。



 俺が書く住所を見て「嘘をつくな」と怒りだした。


「これは貴狼国の王城の所在地だぞ」

「よく知っていますね。 今、お城でお世話になっています」

「えっ? 本当か?」

「疑うのでしたら彼に聞いてみてください」


 俺は後ろを指差した。


 ファビオは俺の後ろの壁際で腕を組んで仁王立ちしている。 貴猿族はノエミちゃんのように小さい者もいるが、兵士たちはだいたい150㎝~2mほどのサイズなので、3mあるファビオは見上げるほどデカい。

そしてなぜか(にら)んでいるように見えるので、知り合いでなければ、俺でも怖い。



「か······彼の名前は?」

「サルバトーレ・ファビオ」

「ん?······どこかで聞いた名だな······」


 すると、隣の兵士が急に立ち上がり、わざわざ剣を抜いて柄の部分を胸に当てる。 貴猿兵の敬礼だろう。


「お会いできて光栄です、サルバトーレ殿!」

「えっ? もしかしてサルバトーレ近衛隊副隊長?!」



······凄い! こんなところまで名が(とどろ)いているんだ······



 他の兵士たちも同じように敬礼する。

 ファビオはいつものように片手を挙げてからまた腕を組んだ。



······やっぱりカッコイイ!······人顔だと、もっとカッコいいんだろうな······



 思わず想像して、ニヤついた。


挿絵(By みてみん)



「なぜサルバトーレ殿と貴猿国まで?」

「ちょっと用事で······もしかしてインザーギ・ニコロって、知っていますか?」

「もちろんです!」


 始めに立ち上がった隣の兵士が答える。


「双剣の鬼神のインザーギ殿も()()()()()のサルバトーレ殿も、我が国で知らない兵士はいません」

「奇跡の剣士?」


 思わずファビオを見ると、視線を()らされた。



······そんな呼び名があったなんて、知らなかった······



「今回、ニコロも一緒に来ているんです」

「本当ですか?!! 是非とも今度、インザーギ殿とお越しください!」

「機会があれば」


 

······ニコロが()()()()な大阪弁だという事は知らないだろうな······大阪弁じゃないけど······




 再び記入用紙に向かう。


······次は年齢か······今は21歳くらいかな?······


 21歳と書いたら「えっ?」と、驚かれた。 貴猿族の寿命も貴狼族と同じ位なのかもしれない。



······次からは3倍の年齢を書くことにしよう······



 そして種族の欄に人間と書くと、兵士は「ん?」と、見直している。



······字を間違ったかな?······



「種類は······黄色人種? 日本人?······分からないや」

「え?······人間と書いているように見えるが?」

「よかった、書き間違えていませんでした?」


「「「ええぇっ?!!」」」



 宝石店の店員も一緒に全員が立ち上がった。



「人間?」

「本当に人間族?」

「あの伝説の人間族?」

「本当にいたんだ······」

「サルバトーレ殿、本当ですか?」


「ケント殿が貴猿族に見えるか?」


「そう言われれば······」

「野次馬でも気付いたのに、兵士のくせに観察力がないぞ」



「「「·········」」」




 みんな驚いた顔のまま固まっていた。







貴猿国でも二人は有名なようですね!

( *´艸`)


ファビオの人顔をベアごんさんに描いていただきました!!

♪( ´∀`)人(´∀` )♪


画素数が高いのか、イラストがでかかった(;^_^A

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