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34話 貴猿国に向かう旅

 34話 貴猿国に向かう旅





 貴狼国内には思ったより村や町が多く点在する。 つい、イルムナック村とターンナック村の距離感で考えてしまっていたが、この地全てが貴狼国だからあちらこちらに村や町があるのだ。




 日が落ちてきた時に着いた町で宿をとった。


 ヴィート先生がファビオと同じ部屋にと言ってきたが、もちろん却下!

 小さいチーム(貴猿族と俺)と大きいチーム(貴狼族)に分かれた。




 風呂に入って夕食を食べに食堂に行ったが、ファビオとニコロがなかなか来ない。 ノエミちゃんが部屋に呼びに行ったが返事がないという。 留守のようだ。


 どこに行ったのだろうと思っていたら、2人が外から入って来た。


「遅くなりました」

「どこかに行っていたのか?」

「はい、情報が何かないかと······」


「······それで?」

「残念ながら」

「翼竜を見た者がいるかと思ったんやけど、おらんかったわ」

「そうか······」



······忘れていた···つい楽しい旅のつもりになっていた······



 自分が仕えている女王様が拉致されて、ファビオとニコロにとってはそれどころではないのだ。

 もちろん俺にとっても散々世話になった方だし、ロキにも約束した。


 そして貴狼国の将来がかかっているのだ。




······気を引き締めよう······




 ◇◇◇◇




 翌日の夜には大きなビトントという町に入り、宿をとった。


 今夜は宿で夕食を取らずに、外で食べようと提案した。 情報を集めやすいと思ったからだ。



 ニコロが食事の前にこの町の警察消防隊支部に寄りたいというので、向かう。




 しかしこの街はやけに貴猿が多い。 だいたい俺と同じくらいのサイズか、もっと小さい貴猿も多くいる。

 本当に種類がバラエティーに富んでいる。


 聞くと、このビトント町は貴猿族との貿易の拠点だそうだ。 そのため、貴狼(ジャンシャード)国なのに多くの貴猿族がこの街に住んでいるらしい。



 それで宿も貴猿族用の部屋も用意されていたのだ。



 小さいチームのノエミちゃんのために、お人形さん用かと思えるようなとても可愛らしい天蓋付きのベッドまでが用意されていて、ノエミちゃんはキャッキャと喜んでいた。



 ◇◇◇◇



 警察消防隊の建物に入ると、中には多くの兵士と傭兵がいた。

 俺たちが入ると、一斉に視線を向けてくる。



 先に受付カウンターに行ったニコロが話しをしていたが、受付の兵士がビシッと直立不動になる。 そして俺たちを別室に案内してくれた。




「今、ここの警察消防隊の隊長を呼びに行ってもらってるんや。 すぐに来ると思うで」


 直ぐにノックがあり、警察消防隊隊長がもう来たのかと思ったら、飲み物を持って来てくれた兵士だった。

 チラチラと俺の顔を見ている。 俺が人間という事が知れたのだろう。 


 またノックがあって入って来た兵士は籠に盛ったお菓子を持って入って来た。 しかしその扉の先に大勢の兵士や傭兵たちが中を覗き込もうとしているのが見えた。




······いつもの事だけど······




 ノックがあって入って来た兵士は息を切らしている。 入るなり直立不動になった。


「ビトント町、警察消防隊隊長 パッティ・ラニエロであります!」

「楽にしてええで。 これ、命令書や。 とにかく読んでくれ」


 ニコロがいつの間にか受け取っていた命令書を懐から出してラニエロ隊長に渡した。


 ラニエロ隊長は命令書を開いて読んでいたが、次第に目を大きく開き、驚いた表情になっている。


(まこと)ですか?!」

「残念ながら。 ただ、まだ大っぴらにはしたくないんや。 みんなに動揺が広がったらいかんやろ?」

「も···もちろんであります······」


「俺たちはこれから貴猿国に行くつもりなんやけど、せっかくやから何か情報がないかと思ってな。 なんでもいいからここ数日の間で変わった報告は受けてへんか?」

「変わった事······ですか?······」


「例えば白い貴狼をみたとか、翼竜(よくりゅう)を見たとか······」

「白い貴狼はたまにいますが、女王様とは明らかに違います。 それと、翼竜ですか?······まてよ······少しお待ちください」


 ラニエロ隊長は慌てて部屋を飛び出した。




「もしかすると、飛竜の目撃者がいたのかもしれないな」

「そうやとええんやけど······いや、良くはないけど······」




 暫くしてラニエロ隊長は一人の兵士を連れてきた。


「彼が見たと言っていました」

「飛竜を見たのか?」

「はい!······多分」

「いつ頃の事だ?」


「昨日の早朝······4時半頃だったと思います。 交代の時間なので詰所に向かっている時の事でした。 初めは遠くの方を大きな鳥が飛んでいると思いました。 しかし目を凝らしてよく見ると、歴史書に描いてあった翼竜にそっくりだったのです」


 俺たちは顔を見合わせた。


「そいつの上に誰かが乗ってたとか、何かを口にくわえていたとか、足で掴んでいたとかしてへんかったか?」

「さぁ······よく分かりません。 一瞬の事だったもので」


「まあいい。 ありがとう」

「失礼いたします」



 その兵士は出て行った。 すると、ラニエロ隊長は得意げに尻尾をブンブン振っている。



「お役に立ちましたでしょうか?」

「もちろん。 ありがとう」



 ラニエロ隊長の尻尾が千切れんばかりに振られていた。




 ◇◇◇◇




 俺たちは警察消防隊の建物を出て、食事をしてから宿に戻った。 ファビオとニコロはもう少し聞き込みをしてみますと言って、夜の街に消えていった。



 小さいチームの部屋に落ち着き、ベッドに腰かけた。


「ファビオもニコロも落ち着かないみたいだな······」

「もしも貴猿王が拉致されれば、私もじっとしてはいられないと思います」


「そうか······俺がいた世界には王様なんていなかったからな」

「では誰が国を治めていたのですか?」


「王様が治めている国もあるけど、俺の国はみんなが選んだ人が国を治めていました」

「みんなが選んだ人ですか?」



 旅の途中で俺が異世界移転してきた事は話してある。 文明の発達した日本という国から来た事も話した。 内心はどう考えているのかは分からないが、俺の話しを信じてくれている。



「もちろん女王様は知らないわけじゃないので、なんとしても助け出したいとは思います。だけど、もし俺の仲間が拉致されたなら、逆に平常心ではいられないでしょう。 そう考えると彼らが落ち着いて対処しているのは凄いと思います」


「そうですね」



 天蓋付きのベッドでキャッキャと喜んでいたノエミちゃんの寝息が聞こえてきた。



「そういえばケント様、何があって異世界に移転してきてしまったのですか?」

「それは······」


 

······神様に会ったという事まで話すと、嘘くさく聞こえるかな?······



「俺は自分の世界にいた時に、事故で崖から落ちて死にかけました。 その直後に目が覚めたら違う世界にいました。 実はここではない違う世界に一度飛ばされたのです。」

「はぉ~~、ここ以外にも?」


「そこでもまた死にかけたのです」

「そしてこの世界に移転してきたと?」


「はい」

「ではもし、この世界で死にかけるような事があれば、また移転するのでしょうか?」


「それは俺にも分かりません。 俺の意志ではありませんから」

「そうですね······もし、ケント様が急に消えたなら、違う世界に行ってしまったと考える必要がありそうですね」



「いやいや、拉致されたのかもしれませんから、探してくださいね」


「フフフ、もちろんです」









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