30話 ラクイラ大陸とリーヴォリ大陸
30話 ラクイラ大陸とリーヴォリ大陸
警察隊の正式名称が決まった。
【警察消防隊】だ。
顧問になった俺は超多忙だった。
そんな事は自分で考えろよ!! と言いたい相談が次々に寄せられてきた。
俺も警察官だった訳ではないのでよく分からない事も多い。
そこでヴィート先生に相談してみると、思いもよらない名案を提言してくれる。
女王様にお願いして、ヴィート先生を顧問補佐官に任命してもらえることになった。
半年後には試験運用され、一年後にはジャンシャード国全域で警察消防隊の活動が始まった。
警察消防隊の傭兵側の代表はもちろんアイマーロ・グイドだ。 そして兵士側の指導役に選ばれたのは、なんと!! あのダメダメ詰所のカタラーニ・ニッコロ班長だった。
実は『アレッシアちゃん捜索事件』でカタラーニ班長は義務感に目覚めたらしい。
詰所の中だけでは飽き足らず、手が空くと街中を巡回して、住民たちの苦情やお願いに応えるために奔走し、犯罪者も数えきれないほど捕まえたらしい。 もちろん班長をしているだけあって、剣の腕はなかなからしい。
そんな気構えを認められファビオの推薦もあって決まったそうだ。
あの時ファビオがポツンと言った「変わってくれればいいが······」という言葉を思い出す。
何度も試行錯誤をして出来上がった強力な消火栓と4階まで伸びる梯子を作り、数名の貴猿族を消防隊に入れる事で、死角がなくなった。
そんな消防隊のおかげで、全焼する火事は5分の1に減り、焼死者は10分の1まで減った。
そしてもちろん警察隊のおかげで街の犯罪も激減し、安全平和な街になった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「気持ちいいなぁ~~~」
今日はみんなの休日が合ったので、ピクニックに来ている。
俺とファビオとニコロ、ロキとアージア先生、そしてヴィート先生と助手のノエミちゃんも一緒に郊外の見晴らしのいい丘の上に敷物を引いて、お弁当を広げていた。
グイド達も来たそうだったが、休みが合わなかったので、また今度という事になった。
「ケント兄さん、今日は副隊長···じゃなくてファビオ先生の実家にはいかないの?」
半年ほど前からロキの武術訓練が始まり、剣術を教えているファビオの事をファビオ先生と呼んでいる。
「この前行ったばかりだろう? フェデルさんたちも仕事が忙しいのだから、そんなに邪魔はできないよ」
「ファジモちゃんがそろそろ転変しそうだから、見に行きたかったのに」
「ロキ様が楽しみにされていると言っておきましたので、転変できるようになれば、手紙をくれる事になっています。 その時にまた行きましょう」
「うん! 楽しみだね」
「はい、その時には必ず」
そういうファビオの横にヴィート先生がピッタリと寄り添って座り、ノエミちゃんはお弁当を夢中で食べている。
そしてニコロはアージア先生の横でデレデレしながらお弁当をつまんでいた。
まだニコロとアージア先生は進展がない。
告白しろよって煽るのだが、二の足を踏んでいるのだ。
······全くウブなんだから······
その時、近くの草むらからウサギが飛び出してきて、俺たちの前を横切って行った。
真っ白いアレッシアちゃんと違って耳が短くて茶色い可愛いウサギだ。
「あっ! うさぎ!」
ロキが追いかけて走っていく。 慌ててファビオがロキの後を追って行った。
ヴィート先生が残念そうにそんなファビオの後姿を見ていた。
「ファビオも大変だな」
俺もファビオの後ろ姿をみていたが、目の前の美しい景色に視線を移した。
「しかし、気持ちいい~~」
「本当に気持ちいいですね」
ヴィート先生がファビオを諦めて、俺と同じように景色に見とれていた。
「貴猿王が憧れる気持ちが分かります」
「貴猿王? 貴猿族の王様を知っているのですか?」
「今の貴猿王がまだお小さい頃から存じ上げています。 頭の回転が速く、聡明でお優しい御方です」
「へぇ~、ヴィート先生は王様の側近だったのですね」
「王は貴狼族がお好きで、将来退位してから貴狼国で暮らしたいと仰っていました」
「王様は貴狼国に来たことがあったのですか?」
「お小さい頃に一度視察でいらした事はあったようですが、その少し前に、貴猿国にふらりと現れた一人の男性に命を救っていただいたそうです」
「旅行者の貴狼に?」
「こっそりと外に遊びに出られた時に、猪に襲われたところを助けてもらって命拾いしたそうです」
「ロキみたいな王子様だったんだな」
「フフフ、そうですね。 それから暫くの間、王宮に宿泊されたその貴狼と懇意にされて、貴狼国の話しも沢山聞かれたそうです」
「俺みたいな奴もいたのか······それで?」
「来た時と同じように、ふらりといなくなったそうです。 しかしその貴狼から話を聞き、実際に貴狼国を訪れた王はこの国がとても好きになったと仰っていました」
「それで王様をやめてからこの国で老後を過ごしたいって言っているのか」
「そうです」
「そうなのか」
······結構、貴猿を差別的な目で見ている貴狼も多いのに、大丈夫かな?······
他人事ながら、少し心配になった。
しかし、消防隊に貴猿族を入れた事で、その能力が一般にも認められ、少しずつ受け入れられてきたようだと聞いた。
これもまた、いい方向に転がってくれればいいと願った
俺はゴロンと寝転がる。 相変わらずバカデカイ月が空に浮かび、薄くかかった雲を抱き込んでいるようだ。
「あれ?」
そのバカデカイ月を横切るように何かが飛んでいるのだが、鳥にしては大きく見える。
「ヴィート先生、あれは何でしょう? あんな大きな鳥がいるのですか?」
「どこですか?」
「大きい月の右下の方です」
俺は指さして示す。
「なんや? 鳥がなんやて?」
アージア先生を見つめる目を離してニコロも月に視線を送る。
「ほんまや! 鳥とちゃうな! かなり大きいで」
「あれは······珍しいですね······翼竜です」
「「翼竜?!!」」
俺とニコロは声を合わせて驚いた。
「翼竜って空を飛ぶ恐竜だよな······そんなのがいるのかよ」
「きょうりゅうですか? 面白い呼び方ですね」
「恐竜って呼ばないのですか?」
「貴竜族です」
「貴?!······もしかして、転変するのですか?!!」
「はい」
······あんなデカイ奴が転変って······想像できない······
「もしかして海の向こうの?」
「よくご存じですね。こちらの大陸はラクイラ大陸と言いますが、あちらはリーヴォリ大陸と言います」
「こっちはラクイラ大陸っていうのか······こっちの大陸は貴狼族と貴猿族と貴豹族だけですよね」
「そうです。 そしてリーヴォリ大陸には貴竜族と貴鰐族と貴蜥族がいます」
「貴鰐族と貴蜥族?」
「あぁ、貴鰐族はワニ族で、貴蜥族はトカゲ族です」
「竜とワニとトカゲか······」
「ただし、貴竜族が飛び抜けて強いために、貴鰐族は貴竜族の配下になり、そして貴蜥族はその貴鰐族に完全に支配されて奴隷のような扱いを受けています」
「リーヴォリ大陸に行ったことがあるのですか?」
「一度だけですが」
「わぁ! 転変した貴竜族って、どんなでした? 凄そうだ」
「残念ながら見ていません。 遠くの方を翼竜が飛んでいるところだけしか見えませんでした。
私のような余所者はあちらのバルレッタ港があるアンコーナ町より内陸には入れてももらえないのです。
ですから港には貴鰐族と貴蜥族しかいませんでした」
······何だか想像するだけで凄い気がする。 ワニとトカゲと恐竜が転変する世界って······
ワニやトカゲはともかく、恐竜が転変する姿って?!( ̄□||||!!




