7話 初めての死闘
7話 初めての死闘
翌日から俺はビルビに槍術とナイフ術、体術を習い始めた。
スーパー〇ンの力を持っているが、戦いというものをしたことがない。 ギギがどんな動物かは知らないが、素手で戦うのは無理があるだろうし、危険な生き物はギギだけでもないらしい。
この昆虫世界には弓がない。 それに剣や刀もない。 それを作る材料も技術もない。
ただみんなが使っている刃渡り20㎝ほどのナイフは一見プラスチックだが、切れ味が抜群で刃こぼれもしないので、研ぐ必要もないそうだ
実はそれはズブグクという生き物の鎌だと教えてもらった。 その鎌をディナという硬い透明の石で削って形を作る。
一度ナイフを加工するところを見せてもらった。
透明の石をロクロのように回しながらナイフを削っている。 海で見かけたダイヤモンドかもしれないと思った。
というのもディナはとても硬く、どんなものも削ることが出来るそうだが衝撃に弱く、扱いには注意が必要だと言っていたからだ。
その場所で俺に合った槍とナイフを作ってくれた。
······やったぜ!······やはり男は武器に萌える······
それはいいのだが、訓練中のビルビは鬼教官だった。
彼女曰く「貴方の身体能力が高すぎるので、私も本気で相手をしないと直ぐに負けてしまうもの」だそうだ。
水泳部のしごき並みにしごかれる。
狩りにも連れて行ってもらった。
動物を殺すのは忍びなくて、初めは見ているだけだった。 しかし獲物の恵みに感謝し最大限苦しまずに、そして安らかに地に還ることが出来るようにしてあげる事が、我々の最大の謝罪だと言われた。
フォーアームスは決して無駄な殺しはしない。 それは自然の秩序を守る事でもあると言われた。
初めは小さなウサギのような動物だった。 槍で倒した後に必ず急所を刺して、できるだけ苦しまないように息の根を止めてあげる。
左側の一つ目と二つ目の足の間が急所だ。 そこにナイフを差し込むと、一瞬硬直してから力尽きる。
慣れとは恐ろしいもので、3頭目には躊躇いもなく急所にナイフを突き刺すことが出来るようになっていた
◇◇◇◇◇◇◇◇
最近の俺は暇が出来ると、アンを連れて村の中を見てまわっている。
村の周りは柵で囲ってあるが畑の周りと、道のある所は柵が切れている。 すぐ横が森なので、猛獣などが潜んでいれば危険だ。
「ここに門をつけた方がいいな。 今度ナブグさんに相談してみよう」
「ここは柵が壊れているから修理をしてもらわないと」
先ずは守りの強化だ。
俺が来てからまだひと月も経っていないのにもかかわらず、既に二人の子供がいなくなっている。 守ってあげる事も遺体を見つける事さえできなかった。
村人が会うたびに「腕を失くした神」と言って話しかけてくれる。 「ケントと呼んでくれ」と言っても誰も聞いてくれない。
腕を失くした神と言われるたびに、心が痛んだ。
◇◇◇◇
それから一か月ほど過ぎたある日、俺が畑の中程にやってきた時に急にアンが唸りだした。
嫌な予感がしてアンの唸っている方向に走っていくと、大人達が畑仕事をしている横で遊んでいる子供に向かって、黒い物体が近付いてくる所だった。
「逃げろぉ!!」
俺は大きな声で叫び、猛スピードで走ってその物体に体当たりした。
俺に体当たりをくらったそれは吹っ飛び木に叩きつけられたが、すぐに体制を立て直した。 そして今度は槍を構える俺を標的にしたようだ。
それは体長が3m以上ある黒っぽい虎のような猛獣だった。 多分こいつがギギだろう。
思った以上にデカイ。
「アン! 離れていろ!」
横でバウバウ吠えるアンを後ろに押しやると、理解したように少し離れて静かになった。
「よし!」
様子を窺うギギに向かって再び槍を構え直した。
ギギは遠巻きに俺の周りをゆっくりと移動する。
実のところ俺は攻撃してくる猛獣と対峙するのは初めてで、心臓が早鐘のように打っている。 ギギの動きを少しも見逃さないように、全神経を研ぎ澄まして集中する。
ギギの足が地面を蹴った。 間一髪のところでギギの爪を躱して、離れ際に槍で足を斬る。 しかし傷は浅い。 直ぐに身を翻して大きな口を開いて向かってくる。 俺は飛び上がりギギを飛び越えて後ろから槍を振り下ろすが、やはり大きな傷を与えることが出来ない。
大きなギギに対して槍の刃は短い。
何度か口や爪を躱しては攻撃するが、深い傷を与えることが出来ない。
「とにかく動きを止めないと······どうすればいい······」
再び飛びかかって来たので横に躱すと、ギギは俺の後ろにあった太い木をクッションにして身を翻し、再び襲い掛かって来た。 予想外の動きに慌てて避けるが間に合わずに、ギギの太い爪先が左肩を引っ搔いた。
「つっ!」
左肩に激痛が走る。 しかしギギは攻撃を緩めないので痛がっている暇はない。
身を翻すと同時に攻撃してくるので後ろに飛び下がり、先程のギギのように後ろの木を蹴ってギギを飛び越えると、爪を伸ばしてくる前に思いっきりギギの腹を蹴り上げた。
「ギャァ!」と叫びながら飛ばされて、大きな岩に激突してギギは気を失った。
急いで倒れているギギの所に飛び、急所にナイフを突き刺す。 すると一瞬体を硬直させると、ぐったりと動かなくなった。
「ふぅ~~っ、やっと倒せた······」
安心した途端、肩の痛みが襲ってくる。 木にもたれて座り込むと、アンが走ってきて俺に飛びつき、顔を舐めてきた。
「いい子だったな、アン。 よしよし」
俺がアンを抱きしめていると、建物の陰から俺の死闘を見ていた村人たちがゾロゾロと出てきた。
「凄い! 一人でギギを倒した! 腕を失くした神が助けて下さった! ありがとうございます!」
みんなが俺を取り囲み、片膝を着きながら口々に叫んだ。
その後ろからガルヤたちが走ってきて、死んでいるギギを見て呆然としていた。
猛獣のギギを倒した!!(´д`|||)




