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22話 ファビオの天敵?

 22話 ファビオの天敵?




 コルラードがヴィート先生のために、貴猿用の椅子を持って来て俺の横に置いた。 するとヴィート先生はチッチッチッと、人差し指を立てて左右に振る。



「コルラード君、椅子はこちらに。 ニコロ君、貴方(あなた)はあちらに」


 ファビオの横に椅子を持ってこさせ、ニコロには俺の横を(あご)で示した。


 どうやらファビオの横に座りたいようだ。 


 ニコロが椅子を持って移動しようとすると、ファビオが(すが)るような目をしてニコロの(そで)を引く。 しかしニコロは笑いを殺して済まなそうな顔をしてみせた


「すまんな」


 そう言ってニコロは俺の横に椅子を置いて、小さな声でクックッと笑いながら座った。





「それでケント様、多くの噂が飛び交っていますが、どこまでが本当なのですか?」



 ヴィート先生は、ファビオの方に椅子を引きずってピッタリと寄せてから、満足そうに座りながら聞いてきた。



「どこまでと言われても······」


 ニコロが、はい!と手を挙げる。 



······授業かよ······




「先生! 俺が代わりに話します。 俺の知る限りではひったくりを捕まえて、強盗団を捕えて、6人の傭兵をやっつけて······」


 グイドたちが一斉に顔を伏せる。


「それから火事で燃え(さか)る建物の3階と4階から子供とご婦人を助け出したってところですわ。

 それもここ数日の間にやで。 凄いやろ。

 それにケント様は自慢になるような話を自分から話したりするような人ちゃうから、俺が代わりに話したんです」



「さすが、伝説と言われる方にふさわしい人物のようですね」

「伝説? 貴狼族の?」


「いいえ。 貴猿族にも昔から伝わる言い伝えがあります。 

『貴猿にして貴猿に(あら)ず。 貴猿の能力にして(はる)かに上回る。 降臨召(こうりんめ)されし人間族が、獣人族に降りかかる暗雲(あんうん)を一掃されるであろう』

 もちろん貴狼族にも同じような伝説がありますが、実は貴豹族(きひょうぞく)にもあると聞いています」



······突っ込みどころ満載だが、降臨(こうりん)って······俺は神かよ······



「今まで3種族間での戦争はありましたが、その時には人間族は降臨されませんでした。

 それぞれの種族が戦争時に人間族の降臨を祈りましたが、もちろん(かな)わなかったのです。

 なのに平和になったこの時期に人間族のケント様が降臨されたという事には意味があると思います」



······いや、それは······()が勝手に······



「もしかすると、我々の知らないところで何か大きな()()が迫ってきているのかもしれません」


 聞き耳を立てていた店の客たちがざわついた。


「あくまでも私一人の考えですので、思い過ごしという事もありえます。 そうであればいいのですが」

「大きな()()か······」




······イルムナックでも、知らないところで巨大生物が育っていた。 ここでもどこかで何かが起こっている可能性が無きにしも(あら)ず····だよな······




 つい考え込んでいる俺を見てヴィート先生は(のぞ)き込む。


「何か心当たりでも?」

「あっ······いや、全くないです。 今は出来る事を精一杯するつもりです。 先ずはこの国の治安を変えていくつもりで動いています」


「さすが人間族のケント様です。 楽しみにしております。 では、お話も聞けましたので、私共は失礼いたします。 ごゆっくりと御食事を御続けください」

 


 ヴィート先生は()()()()()で前を(にら)んだまま座っているファビオに視線を向けた。


「ファビオちゃん、今度お酒でも一緒に飲みましょう。 ウフ」



······『ウフ?』······



 ヴィート先生は立ち上がりざま、ファビオの腕をスッと撫でた。 するとファビオの全身の毛がブワッと逆立つのが分かった。


「それでは失礼します」

「ファビオちゃん、ニコロ君、コルラード君、また会いましょう」



 二人が店から出て、見えなくなった途端、ファビオは大きく息をつき、体の毛も元に戻っていった。



「クックック、久しぶりにファビオの逆毛(さかげ)を見せてもろおたな」

「黙れ」



 なかなかファビオの反応は笑えた。 もちろん笑わないが······



「ヴィート先生はファビオの()()か?」

「先生はとても頭が切れて、人望もある御方なのですが······」


 ファビオはシュンとして耳を垂れる。



「ファビオさんが昔の()()()とは知らずに先生を呼んでしまって、申し訳ありませんでした」


 コルラードが立ち上がって頭を下げると、ファビオは気にするなと手を挙げた。



······()()()は大勢いそうだ······



 ヴィート先生がいなくなったところで他の客たちの興味がなくなったのか、それぞれが話を始めていつものようなザワザワした店内になった。




 それをいい事に、グイドがコルラード前のテーブルをコンコンと叩き、小さな声で(ささや)く。


「おい、コルラード。 お前、()()()()()()だとは思っていたが、ファビオさんと同じ学校を出ているのか? 結構な名門校だろう?」

「まあ······」


「それに貴猿の知り合いの先生までいたのか。 今まで貴猿にちょっかいを出してきた俺たちがバカみたいだろう? どうして黙っていた」

「いや、成り行きで。 それに貴猿の知り合いはヴィート先生だけだし」


 聞こえないと思っていたのだろうが、丸聞こえだ。


「グイド、聞こえているぞ。 それにもう貴猿族を差別しないと約束したのだから、もういいだろ?」

「へ~い。 そう言えばケントさん、この国を変えるために動き出していると言ってましたが、何をしているんですか?」


「まさか俺たち傭兵を締め上げたりしないですよね」

「傭兵に罰則を決めるとか」

「ただでさえ貧乏なのに、罰金とか取らないわよね」


 俺は可笑しくてハハハと笑ってしまった。


「みんな自覚はあるんだ。 その意識だけでも変えてくれればこの街は平和になると思うんだけどな」

「勘弁してくださいよ」

「でも、みんなの話しに近いかな?」

「「「ええっ?!」」」


「君たち傭兵にもっと働いてもらおうと考えている」

「俺たちを?」


「まだ始まったばかりで何も決まってはいないのだが、俺の考えでは·········」




 警察という組織体制にするのだが、兵士を傭兵のリーダーにつけて街を巡回したり、犯罪を見つけたり、犯人を捜したり、時には人探しや落とし物の捜索や苦情の解決などをしてもらう。


 そのかわり詰め所を拠点にして、訓練を行ったり、休憩したりできるようにする。


 そしてこれはどうなるかは分からないが、地区から出る給金以外に手当を支給してもらいたいと進言している事も話した。




「面白いじゃねえか!」

「ただブラブラしているより、断然いいわね」

「だからなんで()()()なんだよ」

「黙れ兄貴!」


「でも兵士に()()こき使われそうな気がするんですけど」

「それも考えた。 兵士だけじゃなくて、傭兵も権限を利用して前以上に街の人たちに迷惑をかけてしまうんじゃないかと」


「前以上って······当たっているだけに反論できねえ······」


「はははは、これもまだ俺だけの考えなんだが、兵士と傭兵のお互いがお互いを見張るようにするのはどうかな?」


「面白い。 点数制にして、よければ加点、悪ければ減点するとか」

「兵士は詰所の配置転換は1年に一度なので変えられないが、傭兵の担当を毎回変えればお互いなれ合いにならないだろうし」





 色々な意見が出てきた。


 もちろん()が作るので傭兵の好きには出来ないが、なるべく色々な意見を参考にしたかった。










ヴィート先生って、ファビオ狙いだったのか!

( *´艸`)

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