15話 カッコいいファビオ
15話 カッコいいファビオ
数日が過ぎた。
熊の一件から剣を持ち歩く事にした。
ターンナック村で作ってもらった剣のホルダーは防具と一体になっているので、ガントの鍛冶屋で、鞘ベルトを買った。
貴狼族と同じように、背中に一本背負うようになっている。
新しい服と靴も出来上がったので、心機一転! 今度は個性の強い獣人になった。
······転変は出来ないけど······
剣術の訓練も順調だ。 もうファビオに勝てるようになり、数人の兵士に手伝ってもらって1対数人の練習をしている。
今度双剣を教えてくれる貴狼が来てくれるらしいので楽しみだ。。
いつも訓練後は兵士の風呂に入って汗を流す。 ただ貴狼族にとって、体に毛が生えていない俺の体が珍しいらしく、一緒に入った者が(遠慮がちに)ジロジロ見てくる。
もう慣れたが、それでもちょっと恥ずかしい。
◇◇◇◇
今日は外で食事をしようという事になった。
ファビオは珍しく私服だ。 やっぱりカッコいい! これからは制服ではなく私服で俺の供をするそうだ。
近衛隊は王族の護衛なので、俺の護衛は私服の方が都合がいいと、お願いしたのだそうだ。
······色々面倒なんだな······
しかしこれで、カッコいい貴狼と個性の強い獣人コンビだな。
前回行った食事処に向かう。
「双剣を教えてくれる人は他の町に住んでいるのか?」
「転変して走っても、丸一日かかりますから」
「狼の姿で走ってくるのか」
「数日かかる時は荷物を乗せる事ができる馬で行きますが、一日で行ける距離なら訓練されていれば、我々の方が早いですから」
「さすが貴狼族だな」
そんな事を話しながら歩いていると、前から剣を背負った四人組が歩いてきた。
彼らはニヤニヤしながら俺をチラチラ見ている。
この世界には傭兵が多くいる。 個人に雇われている者もいるが、地区に雇われている警備隊も多くいる。
彼らは「街を守ってやっているんだ」と言っては、店の売上金をせしめたり、ただで飲食をしたりする者も少なくないという。
一番治安を乱しているのはお前らだろうと俺は言いたい!
奴らは俺にぶつかって因縁をつけようとしているのだろう。
一人が俺の方に向かってフラフラ歩いてくる。 思った通り俺にぶつかろうとしてきたので、スッと避けて何事もなかったように通り過ぎる。
ファビオと話しながらチラッと後ろを見ると、悔しそうな顔でこっちを見ていた。
······その手には乗らないんだよ······
食事処に入って前と同じ席に着くと、直ぐにウェイターが来た。
「またご一緒ですね。 いつものでいいですか?」
俺の事を覚えていてくれたのが嬉しい。
ファビオが頷くと、直ぐにお持ちしますと、奥に入って行った。
「そう言えば、兵士がいるのに今度は挨拶がないな」
「もちろん目の前に来た時などは挨拶をしますが、私服の時はお互い干渉しない事になっています」
「プライベートは守られるって事だな」
その時、先程の傭兵たちが入って来た。 俺を睨みながら入り口近くのテーブルに着く。
大きな声で貴猿がどうとか言いながら下品に笑っている。 それを聞いてファビオも顔をしかめ、周りの客も迷惑そうに振り返っていた。
······面倒くさいな······
サッサと食事を済ませて店から出ようとした時、俺の足を引っかけようとして足を出してきた。
もちろん俺は何事もないようにその足を避けて出て行った。
店の中から「貴猿の野郎!」という怒鳴り声が聞こえてきた。
◇◇◇◇
店から出てしばらく歩いていると、前の方が騒がしい。 そして幾つかの遠吠えが聞こえてきた。
「強盗だと言っています」
「強盗?!」
見ると、数人の男たちが人ごみをかき分けてこちらに向かって走ってくる。 剣を振り回しながら袋を担いだ男が4人だ。
俺とファビオが道の真ん中で仁王立ちになって待ち構えた。
当然強盗たちは小さい俺のいる方を突破しようとするだろう。 ファビオはそれを察して数歩下がって待ち構える。
俺たち以外の歩行者は、異変に気付いて道の端に慌てて避難してゆき、強盗犯と俺たちの前には誰もいなくなった。
先頭を走る一人が剣を振り回しながら「どけぇ~~っ!!」と叫ぶ。
微動だにしない俺に剣を振り上げながら向かってくる。 それでも避けようとしない俺に向かって剣を振り下ろしたが、その勢いで腕を掴んで後ろに投げ飛ばした。
二人目は俺に足を引っかけられて地面で顔をしこたま打ち付けて蹲り、三人目はファビオに任せて四人目の腕を掴んで投げ飛ばした。
当然ファビオに任せた強盗犯は既にのびていて、まだ意識がある強盗を俺とファビオが取り押さえた。
あっという間に終わった捕り物劇に周りから拍手が沸き起こった。
直ぐに彼らの後ろから、警備の傭兵たち6人が追いついてきた。
倒れている強盗犯を見て一瞬驚いていたが、気をとりなおして俺とファビオから犯人を受け取って縛り付け、伸びている者たちにも縄をかける。
「もしかしてサルバトーレ様ですか?」
ファビオが頷く。
······傭兵もファビオの事を知っているんだ······さすが······
「どこの家の者だ?」
「第8地区のシモーネ宝石店です。 助かりました、ありがとうございました」
警備の傭兵たちは強盗犯を引き連れて、ゾロゾロと戻って行った。
日本で17年間生きてきたが、強盗犯などはテレビでしか見たことがない。 しかしここに来て数日で二回の犯罪に出くわすとは、運がいいのか悪いのか······
「ひったくりや強盗は多いのか? それともたまたま俺が出くわしただけか?」
「特に多いとは······」
「日常なのか······」
「仕事のない傭兵がひったくりや強盗をする事が多いですね」
「犯人は傭兵で、捕まえるのも傭兵か······なんだか変な話だな」
「面目ない」
◇◇◇◇
夕食の時、またまたファビオが強盗犯の事をロキに説明し始めた。
「剣を振り回す強盗犯が迫ってくるにも関わらず、ケント様はデンと構えて······」
ロキは尻尾をブンブン振りながらキラキラした目で話を聞いてウンウン頷き「それで?」と話を促している。
ファビオもロキに対する緊張はなくなり、威厳はどこに行ったのか、芝居じみた話し方で語っている。
最近は俺を置いてきぼりにして二人で俺談義に花が咲く。
······別にいいけどね······
というより、ファビオの変化が嬉しい。
未だに俺に対する敬語は直らないが、心を開いてくれている事を肌で感じる。
見上げるほど大きく、剣の腕も凄く、兵士たちの前では口数が少なくて威厳があるのだが、俺の前ではそういう殻を破って接してくれるカッコいいファビオが大好きだ。
カッコいいファビオと個性の強い獣人の主人公のイラストを描きました!
微妙なデッサンの狂いには目をつぶってくださいね!
(/ω・\)チラッ




