32話 ちょっと淋しいパオ狩り
32話 ちょっと淋しいパオ狩り
次の日の朝、アスト達がパオ狩りの準備を整え、数人を引き連れてサールに入って来た。
そして全部で18人の先発隊が騎乗し、西の草原に向かって出発した。
二つ目の太陽が出る前には西の草原に到着した。 そこには丈の高い草が生い茂り、所々に大きな木が生えていて、10頭近いパオの群れがその木の葉を食んでいる。
パオとは象のような動物だと思っていたのだが、とんでもない! どう見ても恐竜だ。
尻尾の先に4本のトゲがあるのだが、頭にも同じような角が4本生えている。 一瞬、どちらが頭か迷ってしまうほどだ。 肩までの高さはフォーアームスの2倍以上あるので、かなりデカイ。
しかし実物の恐竜を見ることが出来るなんて、ちょっと萌える。
アストがガルヤと俺のところへ近付いてきた。
「良かった。 パオがいましたね」
「そうだな。 どいつを狙う?」
「そうですね······先ずはあの右手の木の下にいる奴でどうでしょう」
「よし! 決まりだ。 今回ケントは見ていろ。 俺の勇姿を見せてやる」
「わかった、気を付けろよ」
「おう!」
俺以外が全員タムに伏せて散っていく。 俺はその様子をネッドに乗ったまま森の入り口で興味深く見入っていた。
ゆっくりと目標のパオを取り囲むように移動していき、全員が配置に着いたところで、数人が先に石を付けたロープを手に取った。
一斉に投げられたロープがパオの足に絡まり、動きを止めた。 周りにいたパオ達は逃げ出し、四本の足をロープが絡まったパオは逃げ出そうと暴れたが、角や尾先のトゲにもロープをかけられ、身動きが取れなくなっていた。
動きを鈍らせようとガルヤが槍でパオの足を斬る。
一層逃げようともがくパオに向かって今度はアストが槍を振り上げた時の事だった。
既に逃げて散っていたはずの大きなパオが、捕まったパオを助けようと後ろから突進してきたのだ。
「あぶない!」と言う間もなくみんなは蹴散らされ、そのパオにぶつかられたアストがタムごと吹っ飛ばされた。
大きなパオはガルヤ達を追い駆けまわして暴れていたが、アストが起き上がってこない。 俺はアンに「待て」と制止をかけ、慌ててネッドで向かった。
その時、パオがアストの倒れている辺りに向かって突進してきた。
「アストさん!! 危ない!」
俺はネッドから飛び降りて全速力で走り、パオの背中に飛び乗った。 そして頭まで駆けていき、剣を抜いて渾身の力を込めて角の間にあるという急所に向かって振り下ろした。
するとパオはウンとも言わずにズドドッ!と地響きを立てて頭から崩れ落ちた。
パオの頭から振り落とされた俺は地面で一回転して起き上がり、急いで倒れたアストに向かう。
「アストさん! 大丈夫ですか?!」
気絶したタムの下敷きになり動けないでいたアストは、すぐ目の前に倒れたパオの顔を蒼白な顔で見つめていた。
俺が気絶したタムを持ち上げると、アストはゆっくりと体を引き抜いて立ち上がり、パオと俺を見比べている。
「アストさん、ケガはないですか?」
アストの返事はなく、未だに俺を見つめているだけだ。
ただ見たところアストにケガはなさそうなので、とりあえず倒れているタムの様子を先に見る事にした。
倒れているタムを叩いたり揺すったりしていたが、やっとタムが気付いて起き上がる。 ケガをしていないか確認したが大丈夫そうだ。
その時、ガルヤ達が集まって来た。
「ケント! お前、パオを一撃で倒すなんてありえないぞ!」
「ガルヤ、アストさんが······」
「アスト?······アスト、どうした? 頭でも打ったのか?」
ガルヤがアストの肩をポンと叩いた。 するとアストはハッとしてやっと我に返り、俺の前に走って来た。
「ケ···ケントさん! ありがとうございましたぁ!」
アストは突然、俺に抱きついてきた。
「ち···ちょっと、アストさん?」
すみませんと言って俺から離れた。 しかし今度は俺の前に片膝を着き「生涯あなたに忠誠を誓います」と頭を下げた。
「何だか、久しぶりに見る光景だな」
ガルヤに言われ、俺は頭を掻いた。
「キムルさん! ケントさんは凄いですね」
「お···おう。 俺も自分の目を疑ったぞ」
「ケントさんって、凄い人だとは思っていましたが、あそこまで凄いとは思いませんでした。パオを一撃で倒すなんて」
「まあな」
ダムダが感動したように言うが、イルムナックの者たちも一斉に頷いていて、なぜかガルヤたちが得意顔になっていた。
アストは立ち上り、苦笑いしている俺に向かってもう一度頭を下げた。 そして落とした槍を拾い上げた後、みんなに向かって手を上げる。
「このパオはケントさんが倒してくれました。 ですからこのパオは野生のハクに食べてもらってもいいですよね、異論はありませんか?」
「もちろんだ」
「当然だ」
「という事なので、ケントさん、このパオはお任せします」
「あ···ありがとう」
「ではもう一度、パオ狩りを始めましょう!」
「「「おぉ~~っ!!」」」
俺はみんながタムに乗って、離れていくのを少し寂しい気持ちで見送った。
······みんなと一緒にパオ狩りをしたかったな······
倒してしまったので仕方がない。 俺はアンを呼び寄せた。 すると森の中からハクたちもゾロゾロと一緒に出てきた。
「アン、食っていいぞ」
こういう群れの動物たちは先ずボスが獲物を食べる。 故にアンが食べるのを他のハクたちは我慢して待っているのだ。
アンが一口食べてパオから離れると、ハクたちが一斉にかぶりつき始めた。
「獲物がこれだけ大きいと、みんな腹いっぱいになるな」
ちょっとお母さんの気持ちだ。 と言っても実際に目の前で繰り広げられている光景はガルガル喧嘩しながら我先に獲物に群がるスプラッタだが······
草原に目を向けると、パオの狩りが始まっていた。
ロープを足に絡めて引き倒そうとしているところだ。 今度は他のパオが助けに戻ってくる様子はなさそうなので安心だ。
食事に夢中なハクたちは置いておいて、今度はアンも連れてパオ狩りを近くで見ようと、ネッドを駆った。
捕まっているパオの足を何度も斬りつけているうちにとうとう崩れ落ちた。
今度は倒れたパオの長い4本の角と尾にあるトゲにかけてあるロープをみんなで引っ張って頭部を固定し、最後に角の間にある急所に槍を刺して完全に動きが止まった。
「「「うおぉぉぉ~~!!」」」
やり遂げた歓声が上がり、それぞれが称え合っている。
20人近い者達が力を合わせてこれだけの大物を倒したのだ、達成感があるだろう。
成り行きとはいえ、一撃で倒してしまった事が何とも寂しかった。
みんなとの共同作業で倒した時の達成感を味わいたかった······(TДT )




