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異世界移転するたびに俺が伝説の英雄になる件  作者: 杏子
第一章 人間世界から昆虫世界編
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31話 黒い箱に入った黒い物体

 31話 黒い箱に入った黒い物体




 今度こそ墜落した宇宙船に向かって出発した。


 当然野生のハクがついてきている。 

本来ハクに(おび)えるはずのアミであるネッドが落ち着いているのにも関わらず、ガルヤとツーラが不安そうに辺りを気にしているのが可笑しかった。





 宇宙船に到着した。


 2年ぶりの機体には前以上に(つた)のような植物が網目のようにびっしりと張り巡らされて、(ほとん)ど山と一体化している。

 草を切り落とし、(あら)わになった宇宙船の中に入ってみようと試みたが、全てが潰れていて中に入ることが出来ない。 周りを調べてみても何の収穫もなかった。




「やっぱり洞窟の中だな」




 その時、横でおとなしく見ていたハクたちが頭を上げ、森の方を見つめた。

 ハクの視線の先を見ると、2つの頭が丈の高い草の上から出たり入ったりしている。


「おい! カルコだ!」

「6タールどころじゃない。 8······いや10タールはあります」


 アストは小声で叫んだ。 全員が森を見つめ、キムルとダムダが矢を構える。

 その時、「クエ~ッ!」とカルコの警戒の鳴き声が聞こえ、2頭が慌てて逃げていく。

 どうしたのかと思ったら、ハクたちがカルコに襲い掛かっていたのだ。 そしてあっという間に倒したと思うと、ガルガルと喧嘩をしながら我先に食べ始める。


「す···すげぇ・······」


 ガルヤとツーラはかなり引いているが、みんなもあっけに取られて見ていた。


 そして俺も違う意味で見つめる。




······そうか······みんな腹が減っているのか······




 ハクの食事をいつまでも見てないで、再び捜索をはじめる。 今度は機体の下にできた洞窟の中の捜索だ。


 機体の下の隙間は狭く、フォーアームスが入るのは厳しいので、俺は一人だけで松明を灯して四つん這いになり、洞窟の中に入って行った。

 アンも窮屈そうに屈みながらついてくる。

 

 以前入った時は、松明を点けていなかったので気が付かなかったが、壁にズブグクの鎌でつけたような傷がいくつもある。 それとカルコの羽と何かの動物の毛も落ちていた。


 念のためその羽と毛を拾ってポケットに入れた。



 そして洞窟の中の地面を這う虫たちは、普段見ているサイズの数倍はあったのだ。



「やはりこの中に何かあるな」




 最奥までたどり着いた。 張り巡らされた木の根の隙間から見える機体は崩れていて、船内を垣間見ることが出来る。 しかし残念なことに、ここも中にまで入るのは無理そうだった。



「なにもないな······ん? 何かあるのか? 」


 アンが土に鼻をつけて臭いを嗅いでいる。


 そちらに松明を近づけてみると、半分土に埋もれている機体の下の土の中に、黒くて四角い箱の一部が見えている。 俺はナイフを取り出してその箱を掘り出した。


 20㎝四方ほどの四角い箱で、(ふた)が壊れて少し開いている。


 こじ開けてみると、中に大きな虫の幼虫が入っていた。 普段見かける虫の幼虫だと思うのだが、5倍以上のサイズだ。 そして箱の中には黒光りする石のような物が大事そうに収められているのだが、ただの石ではなさそうだ。 半分溶けているからだ。


「燃えるのか? 石炭みたいにも見えるが、こんな大事そうに箱に入れるほどの物だから、高価な物だと思うのだが······これの可能性が高そうだ」


 みんなに幼虫も見せようと、そのまま(ふた)をして脇に抱えた。




 念のためにもう少し辺りを探してみたが、機械の破片ばかりでこれといった物は見つからなかったので、黒い物体が入った黒い箱だけを持って洞窟から出ることにした。



 ◇◇◇◇



「どうだった? 原因は分かったか?······それか?」

「うん、多分」

「「「わぁ!!」」


 (ふた)を開けて虫を見せると、一同が驚く。


「こいつは?」

「この箱の中に入っていたんだ。 それとこれも」


 カルコの羽と緑色の獣の毛を見せる。


「カルコの羽と······これはモルドの毛か?」

「モルド?」

「ケントは見たことがなかったか? ボルナックに一番近い生き物で、普段は木の上で生活している。 子供を産むときだけ巣穴を使うのだが、モルドもこの巣穴を使った可能性があるな」

「猿のような生き物かな······しかしそれはまずいな······俺が思うに、この箱の中の物が原因じゃないかと思うんだ」

「そうですね。 ケントさんの考えに賛成です。 とにかくこの虫も一緒に父に見せましょう」



 サムトが箱を受け取り、タムに付けている袋に入れると、俺たちは急いで村に帰った。




 ◇◇◇◇




「この箱の(わず)かに開いた隙間から入ったと思われますが、中でこんなに大きくなっていました。 しかし見当違いの可能性もあります。 ですからこの石と一緒に虫を飼ってみて様子を見ればはっきりすると思うのですが、どう思われますか?」

「そうですな、それがいい」

「原因を確実に突き止めておく必要がありますからのう」

「そうじゃそうじゃ」


 イルムナック村の主だった者達が集まる中で、俺が提案した案に全員が賛同した。


 

 話し合いの結果、モムという虫で試すことになった。 モムは卵から(かえ)ると5日で成虫になり、成虫になってからも10日程で寿命が尽きる。

 今丁度、モムが卵から(かえ)る時期なのでちょうどいいという事だ。


 サムトが任され、他の虫や生き物が触れないように責任をもって管理すると豪語していた。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇




 夕食時、俺達ターンナックの商隊のサールにイルムナックの者達が食べ物を持って集まって来た。


 例の石の話しはもちろん、ハクやカルコの話しや自作の弓の話など、いつもながら大盛り上がりだ。


 その中で、西の草原にパオが来ているという話になった。

 ガルヤがいつも世話になっているので、パオ狩りに付き合うと言っている。



「ガルヤ、パオって何だ?」

「そうか、ケントは初めてだな。 ターンナックでは滅多にお目にかかれないからな。

 パオはブムの木の葉を好んで食べるが、ターンナックの近くに、ブムの木はあまり生えていない。 だからパオも滅多に来ることはないな。

 パオはマウタンほどではないが、かなり大きな動物だ。 本来おとなしい動物だが縄張り意識が強く、大きさが大きさなだけに倒すのは大変だ。

 前足の間の急所の他に角と角の間に急所がある。 ただその角の長さが槍より長いので攻撃は難しい。 それの頭と尾が長いので、足の急所への攻撃も困難だ。 だから大勢でロープを使って動きを止めてから攻撃するんだ。

 結構時間がかかるから体力勝負になるな。 まあ、一頭倒せれば村人全員に分けても余るくらいある。 

 パオの肉は美味いぞ」

「へぇ~、まだ知らない動物は沢山いるんだな。 丁度良かった。 野生のハクたちに餌をやらないといけないと思っていたんだ。 ハクたちの為に1頭倒したいが構わないか?」


「も···もちろんだ。 初めの1頭は俺たちが倒し方を見せてやるので、2頭目をハクたちの為に一緒に倒そう。 とにかく明日朝一に出発だ。 アスト、人集めを頼めるか?」

「もちろんです。 例年なら15~20名ほどの先発隊がタムで行き、後発隊が荷車を引いてくる事になっていますが、同じでいいですか?」

「おう、それでいいだろう」

「はい。 では任せて下さい。 パオの肉は美味いから、みんな喜びますよ」


「アストさん。 後発隊の荷車を引く者の中に、先日のハクを連れた者を入れておいてください。 外のハク達が追って来るから、その時に襲われないように」

「わかりましたケントさん。 その事もみんなに伝えておきます。 慌てないようにって」

「この辺りの野生のハクはあいつらだけだろうから、奴らが来たらハク達が落ち着くまでは、じっとしているように言っておいてください」

「わかりました。 では、人集めに行くので、失礼します」




 アスト、ダムダ、ナムルトは走って行った。











宇宙船から持ち込まれた黒い物体が原因なら、解決だ!( ̄ー ̄)b

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