18話 恐ろしい惨劇に初めて出会う
18話 恐ろしい惨劇に初めて出会う
3日が過ぎようというのに、塩採取の一団は戻ってこない。
イルムナックの者達にも焦りが出てきた。
夕食時にズブグク捜索隊が俺達の野営しているサールに集まった。 サムトと俺が並んで座り、ガルヤとツーラとキムル、ダムダとアストとナムルトが取り囲んだ
差し入れの料理を並べてくれているのを見ながら、俺が口を開いた。
「サムトさん、塩の採取場って遠いのですか?」
「荷車で5日ほどです」
「タムなら丸1日ってところか······例えば、そこに行く途中に10タールのズブグクが入れるような洞窟なんかはないですか?」
俺の問いに、サムトはみんなの顔を見回す。 するとアストが顔を上げた。
「あっ! そういえば一か所心当たりがあります。 ほらサムトさん、四角い家が降ってきたところ」
「おぉ! そうだ」
「四角い家がなんだって?」
ガルヤだけではなく、ターンナックのみんなは何の事だと首を捻る。
「一昨年の今頃、空から大きな火の塊が落ちてきたのを知らないですか?」
「おうおう! あれの事か?」
「落ちた時にこの辺りが凄く揺れました。 恐ろしかったですが、捨て置く事も出来ないのでみんなで見に行ってみたら、四角い家が土に埋もれていて、辺りが燃えていました」
空から落ちてきた四角い家?······
「もしかして宇宙船?」
俺が言うとみんなが、えっ?と俺に注目した。 ガルヤが並べられた料理に手を出そうとして止まった。
「うちゅ······なんだって?」
「宇宙船。 空飛ぶ船の事だよ」
「なんだそれ?」
この世界にそんなハイレベルの文明があるとは考えもしなかった。 というか、俺もテレビや映画の中でしか知らない。
やっぱりこの世界は夢なんだ······何でも有りだな······
しかし、宇宙と言っても分からないのか······それなら······
「俺のように違う世界から来た知能の高い生物の乗り物だよ」
「よくわからんが、ケントがそう言うならそうなのだろう」
「アストさん、その場所までどれくらいかかりますか?」
「塩場のすぐ近くです。 一つ目の太陽が昇ってから出発して、それが天中高く昇る頃には着けると思います」
「取り敢えずこの8人でそこに行ってみよう。 それで何もなければそのまま塩場まで行くというのはどうだ?」
「決まりだな! では食おう!」
ガルヤは話が決まるなり、待ちかねていた料理にかぶりついた。
◇◇◇◇◇◇◇
一つ目の太陽が、天中高く登った頃に、その場所に着いた。
その山の麓には確かに宇宙船が大破して突き刺さっていた。
蔦のような植物で覆われている宇宙船は、ロケットというより、スター○ォーズに出てくるミレニアム○ァルコン号を思い出されるような形で、見たこともない計器類が蔦の間から見えていた。
「あそこです」
アストが指差した洞窟とは、宇宙船の下側にある大きな隙間だった。 衝突の衝撃で山が吹き飛び崩れてきて、機体の下に隙間ができたのだろう。
タムから降りて覗いてみたが奥までは見えない。 這って入らなくてはいけないほど狭いが、かなり深そうだ。 しかしアンに何も反応がないので今は何もいないだろう。
「ケント、そんなに近づくと危険だぞ」
ガルヤはタムの上からズブグクに聞こえないように小さな声で囁く
「アンが落ち着いているから大丈夫だ。 とにかく俺が見てくる」
「そんな! 危険だ!」
「じゃあ、どうする。 出てくるのをここでいつまでも待つか?」
ガルヤは黙ってしまった。 しかしガルヤ程の男がそこまで恐れるなんて、どんな生き物なのだろうと興味がわいた。。
━━━ しかし俺は自分がなぜそこまで楽観視していたのだろうかと、後に悔む事になる ━━━
━━━ この現状を本当に理解はできていなかった事を後悔することになるのだ ━━━
「みんなはもう少し離れていてください。 もしズブグクがいたら、急いで逃げるように」
「ケントさんは?」
アストは心配そうだ。
「俺は逃げ足が速い。 それに確かめるだけだから大丈夫だ」
ニッコリと微笑んで見せた。 みんなは離れた森の中に隠れる。
みんなが隠れたのを確かめてから、俺はアンが飛び出していかないように首の毛を掴んでそっと洞窟に忍び寄った。
入口のすぐ横に身を潜めて様子を覗っていたが、物音一つしない。
しかし中からは生臭い臭いが漂ってくる。 何かが巣穴として使っていた事は間違いないようだ。 足元の石を拾い中に投げてみた。
カランコロンと石の音が響くだけで、何の反応も無かった。
再びもっと奥まで強く投げてみたがやはり、反応は無かった。
用心しながら洞窟の奥に踏み込んだが、中は空っぽだった。
「何もいなかった。 しかし、何かの巣穴である可能性は高い。 時間が許す限り、巣穴の主が戻って来るのを待ってみよう」
みんなギリギリ巣穴が見える場所でタムに伏せながら暫く待ったが、巣穴の主は現れなかった。
◇◇◇◇
塩場はこの道を真っすぐ行った所にあるそうだ。
塩場に向かって走り出してすぐにガルヤが止まれ!と叫んだ。
「どうしたんだ?」
「血の臭いだ」
するとアンが臭いを嗅ぎながら横道に逸れていく。
「アン? 戻れ!」
俺はアンの後を追うと、恐ろしい光景に出くわした。
何人ものフォーアームスがあちらこちらを切り刻まれ、手だけ、足だけ、頭だけになって血まみれで転がっていたのだ。
俺は一瞬目の前が真っ白になった。 胃の中から酸っぱいものが逆流してくる。 俺はタムから飛び降りて草むらに向かって胃の中の物を口から噴き出した。
しかしそのすぐ先に顔をこちらに向けている頭部だけが転がっていて、恨めしそうに俺を見つめる複眼と目が合った。
「ひぃぃっ!」
俺は尻もちをついてしまった。
「ケント! 大丈夫か?!」
ガルヤが慌ててタムから飛び降りて俺の元に駆け寄る。
「こんな惨劇を見るのは初めてか······無理もない」
少し離れたところで、サムトとナムルトも嘔吐していた。
普通の高校生だった賢斗には、あまりにも残酷な場面でした( ̄□||||!!




