13話 試しに弓を作ってみる
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13話 試しに弓を作ってみる
この世界では金属の加工技術が無いので武器は槍だけである。 弓の様な飛び道具も無い。
先日はコム狩りだったので問題はなかったが、いつも狩りの時に槍だけでは不便だと思っていた。
槍は大きいので獲物に気づかれる。 外れると次がない。 一番ひどいのは、中途半端に刺さって槍が刺さったまま逃げられてしまう事だ。
そこで俺は弓を作ってみることにした。
実は父さんが若い頃は弓が好きで、弓道部にも入っていたそうだが、趣味で弓を作っていた。 そんな事もあって子供の頃に父親と一緒に小さい弓を作ってみたことがある。 原理は同じだろう。 大きい弓に挑戦してみる。
先ずは弓に適した木を色々探した。 チョールという白い木が丈夫で弾力性があり、弓に適していた。
そして弦にはタムの尾の毛を少し拝借した。
矢には枝が固くて真っすぐな低木のテクを使った。 飛べない鳥カルコの羽を付けて、矢尻には薄く割れるが丈夫な石を使う事にした。
結構試行錯誤をして、それなりの物ができた。
試し射ちをしているところにガルヤがきた。
「ケント、それはなんだ?」
「これは弓と言うんだ。 遠くの物を射る事が出来る」
「俺の槍より飛ぶのか?」
「じゃあ、思いっきり槍を投げてみろ」
ガルヤの槍は良く飛んだ。 しかし俺が矢を射ると、その数倍は軽く飛んだ。
「ケントだから良く飛んだんじゃないのか」
「じゃあガルヤが自分で試してみろよ」
持ち方や狙い方などを説明してやり、ガルヤが射た。 すると俺と同じくらい飛んだのだ。
「凄い! 凄く飛ぶぞ! ケントと同じくらい飛んだぞ!」
「弓は腕力だけで飛ばすわけではないんだ。 多分ビルビでも同じ位飛ぶはずだぞ。 それに、槍は投げてしまうと丸腰になってしまうが、弓は矢の数だけ攻撃出来る。 君達は腕が四本あるから、槍を持ったまま弓を使えるんじゃないか?」
そう言うとガルヤが少し得意そうに笑った。
「やっぱりお前は凄いな。 俺達とは発想が違いすぎる」
「これは前の世界にあった武器だ。 便利かと思って作ってみた」
「やっぱり俺達の救いの神か?」
「だから神はよせよ」
「「ハハハハハ」」
「早速みんなにも作り方を教えてくれ」
「もちろんだ」
◇◇◇◇◇
ツーラとキムルも興味津々で、ビルビまで自分の矢を作ると言いだした。
試作品なので、みんなでアイデアを出し合って改良していった。 フォーアームスは体が大きいので、弓も大きく強力な物を作った。
的を作り、俺も含めてみんなで練習した。 キムルは特に夢中になって練習をしていた。
俺達が毎日熱心に練習をしているのを見て、何人かが教えてくれと言ってきた。
そしてガルヤ達も警備隊のみんなに、弓と矢の作り方と使い方を教えてまわる。 そして弓の練習が日課になった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「冬は過ごしやすい良い季節だな」
俺はガルヤと漁の手伝いに来ている。 その休憩中の事だった。 この世界での冬というのは、俺の世界での秋ほどの涼しさで過ごしやすい。
「ああ、夏は暑すぎる。 冬が一番いい。 そうだ、明後日から俺達はしばらく村を離れる」
「どこかに行くのか?」
「イムルナック村まで商隊の護衛をするんだ」
「イムルナック村?」
太い流木に腰かけて水を飲みながら、ガルヤを見上げた。
「唯一交流のある村だが、年に一度、こっちからは海の産物や毛織物や特産物などを運び、イルムナックからはこちらでは取れない塩や金、その他色々な物を交換して持って帰ってくるんだ。
一年おきに交代で荷を運ぶのだが、今年はこっちが行く番だ。 タムで急げば3日で行ける距離だが、大きな荷と一緒に歩いて行くから片道10日はかかる。 だから往復で20日以上は戻ってこられない」
「僕も一緒に行ってはだめかな?」
「ケントも? そりゃあお前が来てくれれば心強いが、危険だぞ。 途中で猛獣に襲われて、商隊が半数位まで減ってしまう事もあるからな」
「それならなおさら、僕にも護衛させてくれ」
あちらで、漁が再開される笛が鳴った。
「そうか······じゃあ、今日一つ目の太陽が沈む頃、族長の家に商隊の責任者達が打ち合わせに来るから、一緒に行こう」
「わかった。 ありがとう」
二人は漁場に戻って行った。
◇◇◇◇
一つ目の太陽が沈みかける頃にナブグの家に行くと、既に商隊の責任者達が来ていた。
ナブグがみんなを紹介してくれた。
総責任者のガルーラ、積荷責任者のタラック、野営や食事などの雑務責任者のバラゴ、そして護衛責任者が、ガルヤだった。
「ケント様も商隊に同行していただけるとか」
「色々な所を見てみたいのです。 この世界はまだまだ知らないことだらけです。 もっとこの世界の事を知りたいと思っているのでガルヤにお願いしました」
「ふむ、それがいい。 色々と見てきなされ。 ただし、我々にとって貴方は大切な御方じゃ。 危険の多い旅じゃから、くれぐれも気を付けて行ってきて下され」
「腕を失くした神に御同行していただけるなら、これほど心強い事はありません」
総責任者のガルーラが頭を下げる。
「ケントと呼んで下さい。 よろしくお願いします」
◇◇◇◇
次の日、日が昇る前から集合し、一つ目の太陽が昇る頃には出発準備が整った。
荷運びのために徒歩で行く者が22名、ガルーラと警備のガルヤ達、タムに騎乗する者が8名。 それとアンを連れてマリに乗る俺を含めて31名の商隊だった。
商隊の家族や友人が大勢見送りに来ていた。 命がけの旅になるので、それぞれ家族や友人との別れを惜しんでいた。
もちろんナブグやビルビ達も見送りに来ていた。
「ケントさん、気を付けてね」
「うん、トワを頼んだぞ」
「ええ、任せて」
「ナブグさん、ヤンドクさん、行ってきます」
「無事なお帰りを、お待ちしておりますぞ」
出発の笛が鳴り、商隊が動き出した。
先頭にガルーラ、そしてガルヤと俺。 その後ろに、タムに引かせた大きな荷車が四台と、アミに引かせた少し小さな荷車が二台。 荷車の左右を囲むように護衛を乗せたタムが四頭、最後尾にツーラとキムルが続いた。
みんな、振り返り振り返り手を振って、別れを惜しんだ。
◇◇◇◇
しばらく行ったところで、ガルヤが話しかけてきた。
「昨年の旅は酷かった。 ギギに襲われる事は時々あるんだが、昨年は40~50頭のハクの群に襲われたんだ。 殺しても殺しても次から次に攻撃してくるから、隊の半数近くやられたんだ」
そう言って、アンをチラッと見た。
「何とか回避する事は出来ないのか?」
「無理だろうな。 ハクに聞いてくれ」
「だよな」
俺もアンを見た。
◇◇◇◇
一日目は何事も無く、野営予定のサールに到着した。
サールに入ると真中に火を起こし、その周りに人とアミが、その外側に荷車を置き、そして荷車と荷車の隙間を埋めるように十二頭のタムを繋いだ。
夕食を食べながらこの野営の並べ方は?とガルーラに聞いてみた。
「アミは危険に敏感で、いち早く危険を教えてくれるので手元に置きます。 そしてタムはギギでも下手に近付くと蹴り殺す事もあり、大抵の肉食獣は近付きません。 ですからこうやってタムに囲まれている間は我々も安心です。 ただ、移動中はタムとタムの間を狙って襲って来るので、安心はできませんけどね」
「タムは凄いですね」
「はい。心強い連れです」
そんな話をしながら食事を終え、俺はマリのすぐ横でアンを枕に眠りについた。
◇◇◇◇
そうやって何事も無く4日が過ぎ、その日の夜、いつものように寝ていると、アンがピクッと動き森に向かって低く唸り始めた。 マリも少し落ち着きが無い。
俺は飛び起きた。
「ガルヤ、起きろ」
槍を手に、アンの見ている森を見つめた。
ガルヤ達も弓を構えて下の手には槍を持ち、荷車の手前から森の様子を覗っている。 他のアミたちも、ブルルと鼻を鳴らしながら落ち着きがなくなってきた。
今では全員が目を覚まして固唾をのんで構えていたが、そのうちケンも落ち着きを取り戻し、アミたちも静かになった。
「行ったみたいだな」
「タムがいるから夜の間は滅多な事は無いと思うが、交代で見張りを立てよう。 奴らは様子を見ているのだろう」
そう言って護衛達を集め、夜の間は二名ずつ交代で見張りをする事になった。
それからも時々夜にそういう事があったが、特に襲ってくる様子も無く、さらに4日が過ぎた。
イルムナック村までの危険な旅が始まりました!
(|| ゜Д゜)




