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異世界移転するたびに俺が伝説の英雄になる件  作者: 杏子
第一章 人間世界から昆虫世界編
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12話 サールと道の謎が解けた

コム狩りの帰り、事故が起きた!

 12話 サールと道の謎が解けた




 次の朝、ミルを頬張りながら進んでいると、後ろの方で「わあ~っ!」という声と、ザザァッ!という音が聞こえた。

 振り返ると、みんなが道の端から下を見ている。


 急いで行くと、道の横に大きな穴が開いていて、そこにタムごと一人が落ちていたのだ。 メンバーの一人のダントだった。


「ダント! 大丈夫か?」

「手と足をやってしまった!」


 キムルが声をかけると下から声がした。 一緒に落ちたタムは倒れたまま動かない。

 それを見た俺は、タムから降りると躊躇(ちゅうちょ)せずに穴の中に飛び降りた。


「あっ! ケントさん!」


 キムルがそう言った時には、既に俺はダントの横に立っていた。


「ダントさん、大丈夫ですか?」

「ケント様、右手と右足をケガしたようです」


 診てみると、足は捻挫だけのようだが、右上の手は折れているようだった。


「キムル! 包帯か縄を投げてよこしてくれ!」

「はい!」と言って、キムルが包帯を投げてよこす。


 下に落ちている木切れを添え木にして折れた腕を包帯で固定し、余った包帯をナイフで切って、右手を首から吊った。

 タムは気を失っているだけのようなので、取り敢えずそのままにして、ジャンプして一度崖の上に戻った。


「ダントさんは手足をケガしているので自力では登れない。 ちょっと抱えて登るのも無理だな······」


「どうする」「どうする」と周りが言う中、いい事を思いついた。


「網に乗せて、引っ張り上げよう」

「網?」

「コムの柵に使った網の両側に縄を付けて、ダントさんを乗せてタムで引っ張り上げるんだ」


「よし!」と、みんなが作業にかかった。



 縄の先をタムにつなぎ、網が降ろされた。 網の目はかなり大きいが、横になれば落ちずに乗ることが出来るだろう。

 俺は再び飛び降りて、その網にダントを乗せた。


「ここをしっかり掴んでいてくださいね。 よし! 上げてくれ!」


 俺が声をかけるとタムを引き、少しずつ引き上げていく。

 途中、飛び出た岩があったので、俺が崖とダントの間に入り、彼が傷つかないように間を広げながら一緒に登っていった。

 後少しと言う所で、いくつもの手が伸びてダントが引き上げられた。


「やった~!」

「ありがとうございます」


 みんなが喜ぶ中、俺は再び飛び降りた。 アンが心配そうに崖の下を覗き込む。


「ケントさん! どうしたのですかぁ?」

「タムも引き上げる。 網を降ろしてくれ!」

「えっ? タムを? 上がるかな······」

「無理そうなら、コムに引かせてみてくれ」

「わかりました! コムならいけるだろう」


 タムに近付き、体を叩いたりさすったりしているうちに、タムが気付いて起き上がった。

 ケガはないかと色々診て見たが、幸運な事に大丈夫そうだった。



 上から網が降ろされた。

 網を下に広げ、タムを網の上に引いて来る。 中足がちょうど網の穴に入るように立たせた。


「少しだけ、引いてみてくれ。 少しだぞ!」


 網が少し上がり、2本の中足がうまく網の中に通り、腹の下をすっぽりと網で支える事が出来ているのを確認する。 暴れないか心配したが、案外落ち着いていてくれるので安心した。


「よし! ゆっくり上げてくれ!」


「いくぞ!」という声がかかり、少しずつ引っ張り上げてられていった。


 ダントの時と同じように、タムと崖の間に入り、タムを傷つけないように注意しながら少しずつ引き上げていった。



 最後はタムが引きずられないように、俺はタムを持ち上げて道に降ろした。


「うお~っ! ケント様! 凄い!」

「ケントさん! 凄いです!」


 みんなは大喜びだった。

 ダントは手綱を持つ下の手はケガをしていないので、そのままダントのタムで帰る事ができる。



「よし! 急いで帰るぞ! 少しスピードを上げる。 後ろからコムを追ってくれ」


 ガルヤとツーラはボスコムに(つな)いだ縄から手を離すことが出来ない。 他の者が時々コムを槍の後ろで叩きながら進んだ。




 ◇◇◇◇




 急いだおかげで、日が沈む少し前に村に到着する事ができた。



 今回の大収穫に次々と村人が集まって来て、その日の夜はサールで祝賀会が催された。


 今回の狩りに同行した者は、俺とアンの大活躍をあっちでもこっちでも、声高に周りの者に話していた。

 次の日には話に尾ひれがつき、俺がタムを抱えて崖から飛びあがって来ただの、コム15頭をアンが一頭で集めて来ただの、凄い話になっていた。



 そんな中、ダンテが片足を引きずりながら俺の所にやってきた。 痛そうにしながらも、無理に片膝をつく。


「今回は、命を助けていただいて、本当にありがとうございました」

「みんなが助けてくれたんですよ。 ケガは大丈夫ですか?」

「はい。 腕をこうして首から吊っていただいたので、とても楽です。 ありがとうございました」


 そう言って何度も頭を下げながら帰っていった。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇




 今日はガルヤ、キムル、ツーラ、ビルビとアンも連れて遠出をした。


 森を出たところから見える高い岩山に向かって走る。

 この辺りの高い木はまばらで、森の中にあるような真っすぐな道はないが走りやすい。


 タムよりアミの方が足が速いと聞いているが、実際どれだけ速いのか試したくなった。



「ちょっと先に行く! ビルビ、岩場まで競争だ!!」

「いいわ!」


 ビルビがアミを全速力で走らせる。 アミが本気で走るとタムとのスピードの差は驚くほど違う。 あっという間に引き離した。 


 カラフルな木々の景色が後ろに流れていき、少し伸びてきた髪が風になびく。 

 とても爽快な気分だった。


 マリは早い。 ともするとビルビのアミまで引き離してしまいそうになるので少しスピードを落として並走する。

 ただ、アンがアミのスピードに十分ついてくる。 ハクの速さにも驚いた。




 しかし風が気持ちいい。 風を切りながらビルビと顔を見合わせて微笑み合う。




 岩山に到着した。 この辺りは高台になっていて、眼下に広い森と美しい湖が見えた。

 森というのは一面の緑というイメージだが、この世界にはそういう常識はない。 森というのはカラフルなものなのだ。

 マリから降りて、眼下に広がるカラフルで美しい景色に見入っていると、やっとガルヤたちが到着した。



「気持ちいいな」

「本当ね」

「しかし、アミが速いのは知っていたけど、ハクは速いな。 持久力もあって、バテた様子もなく付いて来ていたぞ」

「そうね。 肉食獣の中では足が速い方ね。 まあ、持久力は一番だと思うわ。 でもアンはハクの中でも特別速いと思うわ。 この子はとっても頭も良いし、ハクにしては体も大きいし、とっても頼もしい相棒ね」

「そうだな。 村にギギが来た時も初めに気付いたのはアンだし、野生でこんなやつがいたら、怖いだろうな」

 

 ガルヤたちがタムを(くい)(つな)いでからようやく横に来た。


「ハクは群で行動するから賢いリーダーのいる群は特に怖い。 ギギは強いが一頭倒せば終りだ。 しかしハクはチームプレイで攻撃してくる。 見張り役や(おとり)役なんかもいて、こっちから攻撃を受けたと思ったら後ろに回ってくるやつがいたりするし、数で攻めてくるからある意味一番怖いんだ」

「そうか······お前が味方で良かったよ」

 

 すり寄ってくるアンの頭を優しく撫でた。



 完全に成獣になったアンは、肩までの高さが1m以上はある。 スマートな体形で、六本足と耳が無い事を除けば、地球にもこんな種類の犬がいた気がする。

 しなやかな体に短いい被毛、全身少し青味がかった黒だが、ビロードのような滑らかな感触の体に対して、首の後ろと腰から生える青く長いふさふさの長い尾は、走る時によくバランスを取っていてとても優雅に見える。

 赤っぽい瞳は一見怖そうだがとても優しく、愛情に満ちている。

 

挿絵(By みてみん)


 今では、なくてはならない俺の家族だった。




 その時アンがスッと立ち上がり、下に向かって小さく唸った。 アミたちは平然としているので、すぐに危険が迫っているという訳ではなさそうだ。


 アンの横から下を覗き込むと、何か大きな動物がいる。

 小山のようなそれはほとんど動いていないが、その動物の後ろには道が出来ていた。


 ガルヤが後ろから覗き込んできた。


「あれはマウタンという生物で、まるで害は無い。 近付いても上に乗っても平気なくらいだ。 奴がこの森の道を作っている」

「道?」

「そうだ。 サールとサールを(つな)ぐ道だ。 奴が作った道を我々が使わせてもらっている。 マウタンは真っすぐに進みながら、目の前の木は全て根こそぎ食べ尽くす。 低木も巨木もだ。

 だから後は何も残らずに道ができる。

 そして冬になると移動をやめて、その辺りの木を食べ尽くす。 それがサールだ。 奴のおかげで森を楽に移動できる。 だから俺達は決して奴を殺さない」

「そうだったのか。 サールからサールへはほぼ真っ直ぐだけど、目的地に行くには結構遠回りをしないと行けないから、なぜこんな道の作り方をするのかと思っていたんだ。 そういうことだったのか」


 今まで疑問に思っていた事が一つ解決して何だか嬉しかった。


 しかし俺は、ふと気がついた。


「冬? 冬があるのか?」

「ああ、あるぞ。 木の実の季節が終わると、少し寒くなる。 もうすぐ木の実の季節だから、まだ先だけどな」

「じゃあ、他の季節は?」

「草の芽の季節、夏、木の実、冬と四つで一年だ」

「へぇー、四季があるのか」

「まあ、一年を通して、そんなには変わらないけどな。 我々森の民は少しの違いを感じ取る。 お前は草の芽の季節の初めに来たから、もうここに来て半年が過ぎたんだな」



 もう半年が過ぎたのか······



 なんとなく感傷にふけっていると、ビルビが声をかけてきた。


「そろそろ帰りましょう」

「よし。 急いで帰ろう」

「今度は俺達を置いて行かないでくれよ」


 キムルがタムに飛び乗りながら笑った。






サールと道はフォーアームスが作ったわけではなかったのですね( ̄ー ̄)b

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