58話 俺が標的?!
58話 俺が標的?!
「是非ともライオン祭りを楽しんでいってください」
◇
ライオンの丸焼きをしていた大広場に行くのに、馬車に乗せられた。 それも俺は貴豹王と同じ馬車だ。
······ちょっと嫌な予感······
大広場に近づくにつれていい匂いが漂ってきた。 大勢の貴豹族で大広場は埋め尽くされ、屋台で買ったものを食べながら、ライオン料理が振舞われるのを今か今かと待っている。
案の定、舞台の上の貴賓席の横に馬車が止まった。 既にカズデリをはじめ、あの時の商隊メンバーが奥の貴賓席に座っている。
馬車を降りようとした時、プオ~~~ッ! と、ラッパの音が鳴り響いた。
すると大広間の中がシンと静まり返った。
貴豹王と俺たちが舞台の上に上がると、わぁ~~っ!! っと歓声が起き、王が手を上げると再びシンと静まり返った。
「今まで多くの犠牲者を出して我らを苦しめていたあのライオンの群れが、昨日退治された! その立役者を紹介しよう。 先ずはあちらにいるゾーエ商隊と傭兵の皆さんです!」
カズデリたちは立ち上がり、申し訳なさそうに一礼する。
「そしてこの方たちを紹介しよう! 奥から貴豹兵のスフォル・グラウド殿」
わぁ~~っ!と歓声が起きる。
「貴狼族双剣の鬼神インザーギ・ニコロ殿と、同じく貴狼族奇跡の剣士サルバトーレ・ファビオ殿!」
すると、どよめきと共に歓声が起こった。
「そしてこの御方は、貴猿族ではなく······小さな巨人!! 人間族のクラキケント殿ですぅ!!」
ううぉぉぉぉぉ~~~!! 地鳴りのようなどよめきと歓声が起こった。
······この王様も物好きだな······絶対楽しんでる······
······でも思いっきりバラされたよ······まぁいいけど······
俺たちの前に料理が並べられた。 ライオンの肉らしき数種類の肉が色々な料理になり、多くの野菜に彩られ、とても美味しそうだ。
しかし民衆にはまだライオンの肉は配られていない。
「それでは皆の者!! ライオンの肉を楽しもうぞ!!」
「「「おぉぉぉぉぉ~~~!!」」」
王様の一声で、肉が解禁になったようだ。
俺も一口食べてみる。
「美味いな、 ファビオ、食べてみたか?」
「いえ······まだ······」
ファビオの向こう側にいるニコロとグラウドも緊張した面持ちで、食べ物には手を付けていない。
「おいおい! お前らもしかして緊張してるのか?」
「こ···こんな上座に座る事はないやんか。 ちょっとビビるわ」
「王様の後ろなら平気なのですが」
「ハハハハハ、街の人たちはカボチャと思えばいい。 この世界にもカボチャがあるのかどうかは知らないけど」
「カボチャ······と思うんか?」
「カボチャはあるんだ。 でなければ、自分の部下たちを並べてると思えばいい」
「部下か······」
そう呟いたのはファビオだった。
······ファビオも緊張していたんだ······
その時、貴豹王が話しかけてきた。
「ケント殿、ライオンの肉はいかがですかな?」
「美味しいです。 もっと筋張っていて硬いのかなと思っていたのですが、思いのほか柔らかくて美味しいですね」
「ハハハハ、それは良かった。 ライオンの肉はそう手に入る物ではないので、皆も喜んでいる事でしょう。 それも6頭などと、前代未聞ですね。
しかし本当に雄ライオンをケント殿一人で倒されたのか?」
「まあ······」
「人間族とは想像を超える力を持っておられる」
「それほどでも······ハハハハ」
笑ってごまかした。
しかし、貴豹国の料理はマズくはないが特別美味しいとは思わなかったのだが、ここに出てくる料理は美味しい。
カボチャのアドバイスをしてからファビオたちは緊張がほぐれたみたいでよく食べている。
食後にデザートが出てきたのだが、ダニオのケーキ屋並みに美味しかった。
······ダニオのケーキのほうが美味いけどね······
美味しかったケーキの上にとても香りのよい果物が乗っているのだが、見たことがない。
俺のは食べてしまったのでファビオのケーキを指さして果物の名を聞こうと横に体をずらしたその時の事だった。
ズドッ!と、俺のケーキ皿の横に矢が刺さったのだ。
「「「キャァァァ~~ッ」」」
それを見た民衆から悲鳴が上がる。
「えっ?!!」
矢が飛んできた方を見るが誰もいない。
俺は矢が飛んできたと思われる建物の屋根に飛び乗った。 しかし既に誰もおらず、弓と矢だけが落ちていた。
反対側の道を覗き込むが、人通りが多くて弓を持っていないので犯人を特定することが出来なかった。
「ケント様」
屋根に飛んできたのはグラウドだ。 直ぐに数人の兵士も登って来た。
「弓を置いていかれると、誰が射たのかわからない」
「ずる賢い奴ですね」そう言ってからグラウドは兵士に向かう「ここから飛び降りた者の目撃者がいないか探してくれ」
「承知」
兵士たちは犯人が逃げた方向に飛び降りて行った。
会場の方を見てみると、ファビオとニコロが心配そうに見上げていて、貴豹王は兵士に囲まれながら馬車に乗り込んで城に戻っていくところだった。
◇
俺はテーブルに刺さった矢を見つめる。
「俺を狙ったんだよな」
「はい。 よっぽど下手な射手でなければ」
「目が覚めたわ。 腹いっぱいでちょっと眠たかったんや。 しかしなんでケント様を狙ったんや?」
「俺も知りたい」
俺たちも兵士に護られながら城に戻った。
◇◇◇◇
「ケント殿、大丈夫ですか?」
「はい、しかし残念ながら逃げられてしまいました」
「いま、調べさせていますが、人間族のケント殿を狙う理由が分かりません」
「俺がいては困る者がいるのでしょう」
僭越ながらとファビオが口を開いた。
「我々貴狼族にはこのような言い伝えがあります。
『人間族の英雄が突如降臨し、貴狼族を導き、この獣人界に平和をもたらすであろう』
そしてこのような言い伝えは貴猿族にもあり、ここ貴豹族にもあると聞きました。
人間族の英雄に平和にしてもらっては困る者の仕業だと思います」
ファビオの発言に貴豹たちは顔を見合わせている。
「戦争を望む者。 世界が乱れた隙をつこうと虎視眈々と狙っている者」
「本当に貴竜族なのでしょうか?」
「分かりません。 しかしラクイラ大陸の三種族ではありませんでした。 もしかすると力を持つ個人の可能性も無きにしも非ずですが、俺はリーヴォリ大陸に答えがあると思っています」
「攻めてくるとお考えですか?」
「心づもりは必要だと思います」
「貴狼国にはいつ戻られるのですか?」
「明日の朝にも」
「出発前にもう一度城にお越しください」
「分かりました」
兵士に送らせるというのをお断りして、俺たちは日が傾いて薄暗くなってきた街中を宿に向かって歩いた。




