憧れと仲間
「てめぇらのせいで、痛い目見たじゃねーぇか!」
「私達が悪いって言うの! どう思うよ皆」
「横暴だにゃ」
「興奮するっち」
「「チィエラは黙って!!」
ひりひりと痛む頭を押さえて、尻餅の状態から立ち上がる。
同じようにセレス、アリ、チィエラが立ち上がる。
タマはいつの間にか竜人の姿になっていて、ブランコスと対峙していた。
アスル、ベルデ―、ネグロも同様に対峙している。だが、ブランコスの視線の先には彼らの姿は移っていない。
ブランコスが見ているのは、俺。
「カイト、どうして?」
「どうしてって、なんだよ。まるで仲間だったみたいな言い方するな、俺はお前の仲間じゃなければ、父ちゃんでもない」
俺の言葉に、ブランコスは口を手で覆って、その場にうなだれる。
「お前が人類を滅ぼそうとするんなら、俺はそれを止めるだけだ、俺にだって守らなきゃいけない、なk……変人達がいるんだ」
「今、仲間って言おうとして、変人に変えたわよ」
「てれたにゃ、カイトがてれたにゃ」
「あたち、今からあそこのベットでカイトと作ってくるっち!
が……外野がうるさい。ええいそんなことは気にしてはいけない!
とりあえずマリオネットを発動して、いつどこから攻撃されてもいいように構えて置く。
俺は、キッと目を細めて、ブランコスを睨む。
敵だ、そこにいるのは敵だ。
「見て見て、元々人相が悪いのに、更に悪くしようとしてるわよ」
「言ってやるにゃ、カイトはこういう時に真剣になる節があるにゃ」
「んんん!!」(あぁ!! いい!! これは縛りプレイだっち!!)
が……外野が……うるさい。いやいや、目の前の敵に集中しろ、そうだよ。
ブランコスは人類を滅ぼそうとしてるんだぞ、そんなこと許されていいはずがない。
俺は、魔法でアクアソードとビエントを使って、剣と盾を作る。
俺、タマ、アスル、ベルデー、ネグロがじりじりとブランコスににじり寄る。
「普段はあんなの持たないのに、カイトったら自分の事を勇者かなんかと思ってるのかしら?」
「言わないでにゃ、それにしても、ぶふっに、似合ってるにゃ」
「んんんー!!」(あぁっ! なんだか縛りが強くなったっち! もっとだっち!)
「お前ら!! うるさーい!!」
俺の堪忍袋の緒もついに切れた。
ふざけるな!! 人が真剣やろうとしてるときに、なんでこいつらはこんな邪魔しかしないんだ!
俺が、顔を真っ赤にしながら、三人に詰め寄る。
セレス、アリ、変態の順に俺が見ていると、セレスが一歩詰め寄ってくる。
「カイト、あんたがここで何を見て、何を感じたかは知らないけど……」
セレスは俺の手を取って、まっすぐに目を見てくる。
「全部一人で抱えなくていいのよ、私達仲間でしょ、何があったか聞くつもりはない。でもせめて……敵がいるなら、いつもみたいに一緒に戦おう」
俺はセレスの言葉ではっとする。そう言えば……いつもならセレス達に頼っていたところを、俺は一人で……そうだよ、天空山から抜け出す時、だって……あの時には羊皮紙もあったんだ、ブランコスの隙をついてセレス達に連絡できたかもしれない、三つ首竜を仲間に引き入れる時だって、俺らはセレス達の力を借りようとは思わなかった。
ブランコスの記憶を見たことで、俺は……。
全部一人で背負った父ちゃんをカッコいいとそう思っていた。
仲間達の思い、帝国の命運、地球にいる親友、何よりも……俺の事。
父ちゃんは最後に全部背負って……殺された。
無意識化で僕は父ちゃんの悔いを晴らしたかったのかもしれない。
そうだ……。俺は昔憧れていたんだ、父ちゃんのようなすごい人になりたかったっと。
「悪かった、皆……俺に力を貸してくれ」
「「もちろん!!」」
「んんん!!」
俺は変人な仲間達とブランコスに立ち向かった。




