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魔法が使えないエルフと最強魔法使いの冒険譚  作者: タライ
トント王国編
17/413

疑う前に話を聞こう!

「こいつ、もしや」


 いや、寝るんだ。今の発言はただの寝言……そう、寝言に過ぎないんだ。

 俺はそう思いながら、恐る恐る隣でかわいらしい寝息を立てるアリを見る。


「誰にも渡さにゃいにゃ」


 はい、黒だな急にだめになったな。

 まさかこいつが……。


「ヤンデレだなんて……」


 そういうのは求めてないんだよなぁ。

 いや~ね、文句は言える立場かというと……いやあるよな!だって俺の事だもん!

 ヤンデレか~、セレスはわがままなエルフで、こいつはヤンデレキャットピープル、ちくしょう語呂が微妙にいいのがむかつく。


「すぅすぅ、うにゃぁあ」


 俺の腕に絡まって寝息を立てるアリは、それはもう本当に可愛いいのだが、先ほどの発言のせいで、素直に喜ぶことができない。

 まぁ、爪もないから本当の意味でアリの女の子らしい、やわらかい所がまんべんなく、俺の右腕にくっついているので、はたから見ても俺から見てもまさに今このベットは天国である。っと言いたいが、やっぱり素直に喜ぶことができないなぁ~。

 出来ることなら普通の子に好かれたい……。


「するにゃぁ」

「ひっ!」


 アリが急に、大声を出すものだから思わずびっくりしてしまう。

 そんなアリの声に反応するように、この部屋の外が少し騒がしくなり。

 誰かの足音がたどたどしく音を立てて、この部屋の前でピタっと止まる。


「ちょっと、アリ~、カイトの居場所知らない?あいつ私の部屋の鍵をどっかに持って行った……みたいで」

「……」


 扉を開けて入ってきたのはセレスだった、そういえば部屋の鍵閉めるの忘れてたなぁ~、なんていう後悔が頭をよぎったり、セレスに部屋の鍵渡すの忘れてたなぁっていう後悔も、時すでに遅し。無言でベットの傍まで来るセレスの顔を俺はまともに見れない。

 セレスが近くまで来たのを感じたその瞬間だった。

 アリが大きくくねりながら……。


「カイト激しいにゃ」


 どんな夢を見てるんだ!

 そしてこのタイミングでその発言はいろいろやばい!

 なんだか後ろのほうから、骨を鳴らす音が聞こえる。


「覚悟はできてるの?まさかアリに手を出すなんて、いい度胸ね?」

「一応この国ではアリは成人だぞ、って違う違う!それで手を出していいなんて思ってない!オイその拳どこに振り下ろすつもりだ!場合によっては一日スライムの刑にするぞ!」

「いいわよ別に、この服ね、なぜか知らないけど溶けないのよ。」


 そういえば、アリを仲間にしたときもこいつをスライムの刑にしていたが確かに服は溶けてなかったなぁ。

 ちょっと、待てよつまりこいつにスライムの刑での脅しは通じないぞ!

 じゃあ、宙づりの刑で脅しをかけて!

 俺が何かを言う前にセレスからの鉄拳制裁が下った。


「観念しなさい!」

「ぐふぅうう」

「にゃ!にゃに!」

 

 セレスの拳は一寸の迷いなく一点を狙っており、そしてその狙いはそらされることなく、ピンポイントで攻撃して見せた。

 どこかというと、俺の息子にだ。


「ん?今なんかむにゅって、いや」

「いぃぃぃいぃ、いやじゃあ、ねぇよ。このバカエルフ!早とちりにもほどがあるだろ!」


 俺の息子を攻撃した感触に嫌悪感を抱くセレスに、怒る俺。

 状況が理解できない元凶のアリはというと……。

 猫耳をぴくぴくと動かして、尻尾を小刻みに振る様子を見るに、動揺しているようだ。

 そんなアリが俺の肩を軽くたたいてきながら


「にゃ、にゃにが起きたにゃ?」

「こいつが俺の息子を殴った。」

「にゃっ!カイト息子がいたのかにゃ!」

「いや、そういう意味の息子じゃあ、ってうおっ」


 俺が息子と言った途端に、心配するような目で見てきてたアリの目が、一気に細くなって猫のそれになった。

 目こわっ!! これはマジな奴ですやん。

 この後のセリフも想像できるよ……。


「う、浮気ものにゃ、カイト私と一緒に寝ておいてひどいにゃ」

「ま、まぁ落ち着けって、というかその言い方だと、いろいろ語弊が生まれるからさ、セレスも何か言ってやってくれ」


 俺は、まるで浮気男のような台詞をそのまま口にして、セレスはというと。

 何かを考えるそぶりを見せると、現在進行形で怒っているアリに向けて。

 

「この泥棒猫」

「にゃんだって!」

「このタイミングでいうなバカ!うおおお、意外と握力があああ!」

 



「なんだ、私の勘違いか」

「ごめんにゃ、カイト大丈夫かにゃ?」

「あぁ、大丈夫だ。腕の骨が折れただけだからな、ぜーんぜん大丈夫だ」

 

 俺は二人に笑顔でそう言うと、二人は同時に頭を下げてまた謝ってくる。

 なんかこうもっとうまくいかなかったのかな~。


「はぁ、いいよもう、そんなに謝んなくて、まぁ一応俺にも非はあるしな」

「そうよね、あんたが悪いわよね、私な~んにも悪くないもんね」

「そうだにゃ、そもそもカイトがベットで寝なければよかったんだにゃ」

「……お前ら、歩いて帰らせるぞ」

「いやぁ!! 私達が人の話を聞かないのが悪いわよね!! っねアリ」

「そうだにゃ!! 人の話をちゃんと聞かない私達が悪いんだにゃ!! だから馬車には乗せて欲しいにゃ!!」


 二人が笑顔でそういうのを見てから、俺はベットから立ち上がる


「どうしたの?」


 セレスがそう聞いてくるので、俺はアリのベットに敷いてあったシーツを一枚とりながら


「シーツもらうぞ、ちょっとひらめいたことがあってだな」


 

 ベットが狭くてまともに寝られないのなら


「ライトアーマード」

「「あっ」」


 俺はライトアーマードでシーツを浮かせてそのうえに乗り


「うん、これはいいな、俺ここで寝るからな」

「あ~!!ずるいにゃ、すごく楽しそうだにゃ!!」

「私もそれで寝たい! ねぇ~カイト!」

「やかましい!! セレス、お前の部屋の鍵渡すから、お前らは普通のベットで寝るんだな!」


 ジト目になるアリ、頬を膨らませるセレス。

 俺はセレスに鍵を渡そうと懐を漁っていた時、ふと思い出す。アリに抱き癖があって何かを抱いてないと寝れないことを……。


「悪いセレス、やっぱり鍵はなしだ。アリと一緒に寝てやれ、そいつ何かを抱いてないと寝れないらしい」

「えっ、そうなの? まぁいいけど」

「べ、別にそういう訳じゃにゃいけど、でも確かに何かを抱いていたほうが寝やすいにゃ」

「アリちゃんどこ見て言ってるの?」


 アリが豊満なセレスの胸を凝視して

 セレスが何か嫌な予感を感じたように俺の傍まで来ると

 

「カイト、私の部屋の鍵頂戴、なんだかね嫌な予感がするのよ」

「セレス一緒に寝ようにゃ、もぎ取ってあげるにゃ」

「カっ、カイトいやカイト様! 女の子と一緒のベットで寝てた事とか、黙って置いてあげるから、お願い私の部屋の鍵を頂戴! 身の危険を感じるのよ!」

「お前! さっきは反省した振りをしてたな! 何が黙って置いてあげるだこのバカ! 嘘つきエルフが!」

「誰が嘘つきですって!!」

「セレス~、ここに来るにゃ……、大丈夫だにゃ、明日にはいろいろ軽くなってるにゃ」

「嫌よ! 身の危険を伴う添い寝って何よ!」


 まったくベットに行こうとしないセレス、ベットから降りてセレスの腕を掴むアリ。


「ちょっ! 引っ張らないで!」


 冒険者であるアリは、セレスを少しずつベットのほうへ連れて行くが……、神具によって身体能力を大幅に強化されたセレスのほうが優勢のようなので……。


「お~い、セレス」


 俺の呼びかけで、顔だけこちらに向けてくるセレス。

 その表情は必死に助けを求めているものだったが、俺の表情を見てか、その顔が絶望の色に変わっていく。


「何! 助けてくれるの! 違うわよね! こういう時カイトは私を助けないわ! なんのようょZZZZZZZ」


 言ってる最中に意識を無くして、寝始めるセレス。


「カイト、なにをしたにゃ?」


 急に寝たセレスを見て、アリが怪訝そうな顔で俺に聞いてくる


「青魔法のスリープをかけた。」

「強制的に眠らせる魔法……、私には使わないでにゃ?」


 俺の魔法を見たアリが、恐る恐る俺に疑問形で言ってくる。


「場合による、まぁ極力使わないように努力はする」


 青魔法の効果で眠りについたセレスをベットに連れて行くアリ、さすが冒険者、そこそこ体重があるであろうセレスを軽々と持ち上げた。

 そして、ベットに寝かされたセレスは枕を手に取ると気持ちよさそうに寝る、セレスのその様子を見ていた俺とアリはお互いにあくびをして、その日は眠りについた。

 ところで余談だが、青魔法スリープは魔法図鑑に載っていない魔法だ。

 俺が独自の練習で体得した魔法である。

 全員が寝息を立てる部屋……、窓から入ってくる月明かりは心地よく、冷たすぎない印象を持てる。

 俺が寝ているのは、その付近で……、そして気づくべきだった、窓が開いていることに。


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