第1話 追い出された様だ
斜め上のダンジョンマスターの続編になります。
異世界を魔王から救った俺は危険人物として異世界から追放された。行きたくもない異世界に無理やり連れ去られてダンジョンマスターとして頑張ったのに、この仕打ちって酷いと思う。俺は本当に頑張ったんだ、ダンジョンの中を快適空間にして魔族から迫害を受けてた人間達や獣人、他にもエルフやドワーフと言った人達全てを受け入れて街を作って、魔族や厳しい自然環境から守っていたんだ。
「ううう、・・・・・・チクショウ」
「頑張ったのに・・・・・・俺は意外と頑張ったのに・・・・・・」
追い出されて戻って来たのは元の世界、そして異世界に1年以上いたはずなのにここでは時間が経過していなかった。つまり異世界の活躍は全て無かった事にされたのだ。向こうでゴブリンに噛まれたりオークに噛まれて頑張った事や、必死に貯めたポイントで呼び出した美人さん2人、友達になった人達とも強引に引き離されてしまった。今や俺は唯の人になってしまったのだ。
腹を立たてても腹は膨れない、現代社会で暮らすには金が居るのだ。異世界ならそこら辺に有る物を食べて、川で水でも飲めば良かったが、現代社会では川の水を飲んだら腹を壊すし、どこかで寝ていたら警察に捕まるのだ。だから俺は仕事に行く、毎日毎日同じことをして自分の時間を金に替えるのだ。
「慣れないな~」
異世界に行くまでは、楽チンな仕事に納得していた。時間外も無いし仕事も超絶楽なホワイト企業に勤めていたから。でも異世界を知ってしまうと物足りない、あそこのダンジョンマスターはもっと楽だったのだ、好きな時に起きて、出勤すらする必要が無かった、なにせダンジョンマスターだから自宅が職場なのだ、引き籠もりに最適な職業だったのだ。それに美人の護衛が2人いた、こっちの女等比べ物に成らない程の美人さんだった、性格のキツさもこちらの女性とは比べ物に成らない位キツかったけど。
そうした何の変化もない生活を続けて1ヶ月後。日本中の雑誌、広告、ウエッブに有る広告が大々的に載った、内容はと言えば。
ダンジョンマスター募集のお知らせ。
内閣府はダンジョンマスターを募集します、
月給20万、危険手当80万円各種保険完備
募集資格 日本国の国籍を持つ18歳以上の者
給料はともかく、危険手当80万は怪しさ大爆発の条件だ。だが内閣府が大々的に宣伝している所を見ると冗談では無い事は確かだった。
物凄く怪しい物件ではあるがダンジョンマスターに未練が有った俺は履歴書を用意して、募集要項に書いてあった所に郵送で送ってみた。俺の履歴は履歴書1枚に収まらない大人の事情が有ったので適当に端折って書いてみたりした。だがまあ、ダンジョンマスターに学歴や職歴は関係ないから良いのではなかろうか?
そして俺の売りって奴は履歴書の特記事項という欄に書いた(ダンジョンマスターの経験有ります)という点だと思う。でも、知らない人間が見たら、腹を抱えて大笑いするだろうな~等と思いながら書いてみた。
そして履歴書を送って1ヶ月後、2次の面接のお知らせが自宅に届いていた。応募総数が100万件を超えたので選別に時間が掛かったらしい。そしてこの1ヵ月で色々な情報が明らかに成って来た、どうやら政府は隠している様だが日本の何処かにダンジョンが出現した様だ。そしてダンジョンの調査に向かった政府の職員が全員帰って来なかった事で大問題に成っているのだそうだ。最初は市役所の職員、次に県の職員、そして誰ひとり帰って来なかった為に自衛隊が出動したのだが偵察小隊も1人を除いて全員未帰還なのだそうだ。
「成程ね~、入ったら帰って来れないから危険手当80万なんだな。ショボイ政府にしては高いと思ったけど死亡率ほぼ100%で危険手当80万は安すぎるだろ」
最初の頃は調査目的で入りたがったが、自衛隊の偵察小隊が一人を除いて未帰還になってからは、政府はダンジョンの封鎖に方針を切り替えた様だ。メディアは連日情報を開示せよと大騒ぎして、他国も政府が情報を隠しているせいで連日大騒ぎしていた。
そして2次面接、これは各県の職安で行われた。ここで人数を絞って3次面接は東京で行われるのだそうだ。俺は職安に何時もの様にジーパンとTシャツで行った、中にはスーツを着ている人間も居たが、ダンジョンマスターに応募する人間なので俺を含めて変な奴が多かった。
「え~と、質問が有るのですが、宜しいですか?」
「どうぞ」
「ダンジョンマスターの経験有りと履歴書に記載されてますが、事実ですか?」
「事実です、ダンジョンマスターをやってました。証明はできませんがね」
面接の係員は笑いたかったのかも知れないが笑わなかった、俺の事を馬鹿かと思ったかも知れないが学歴も職歴もまともだからな。
そして200人程居た面接を突破した俺は3次面接へと進んだ。内閣府の募集は中々待遇が良くて旅費が支給されるって事だったので、俺は有給を取って悠々と東京見物をして面接に向かうのだった。
そしてこの時点でダンジョンの調査にはアメリカの軍隊が投入されていた、アメリカの軍隊なら自衛隊より装備が良いから大丈夫だろうと投入したのだが、投入したデルタの強行偵察中隊は一人も帰って来なかった。世界最強の中隊が敗北したのだ、これでアメリカ政府も日本政府も大騒ぎになった。
そして更に、日本政府はダンジョンの入口から戦車を入れようとして重機や爆薬を使って入口を広げようとしたのだが、ダンジョン入口は傷一つつかなかったらしい。これにより、ダンジョンは完全封鎖、自衛隊とアメリカ軍により周囲1キロは人が入れない立ち入り禁止区域となった。




