6/144
関心
緊張が解けたのか、秀郎は雅子の視線に全く気が付く様子も無く、大きな声で話し始めた。
こんなに鼻毛が出ている人初めて見た、などと感心しながら秀郎の鼻毛を見る。
それと同時に、雅子は少し顔がこわばってしまっていた。
たかが、鼻毛。されど、鼻毛。
その鼻毛を見てテンションが下がってしまった雅子は、それでも一生懸命に秀郎の話を聞いていた。
そして、「明日映画に行きましょう」という秀郎の突然の誘いに雅子は了承してしまい、また明日会うことになった。
家に帰ると母が興味深そうに聞いて来た。
「どうだった?」
その瞬間、雅子は鼻の両穴から鼻毛が出た状態で微笑む秀郎を思い出した。
「気の良い人だと思う。でも、鼻毛がでてた! しかも両穴から」
あまりにも薄い娘の感想に、母は少し呆れたようだった。




