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久しぶりの実家は雅子にとって楽園だった。
もう、憂鬱な思いを抱きながら生活する必要はない。
小鳥のさえずりが聞こえそうだ。
今は心底、幸せを感じる。
引っ越しを終え、離婚届けも提出し、ようやく一つのケジメがついた。
ただいま。幸せ。
離婚に至ったが、一応は秀郎にも感謝している。彼とは合わなかっただけなのだ。
自身も多数至らぬ点があった。反省すべきところも多い。
「あぁ。色々あったなぁ」
引っ越し業者のマークがプリントされたダンボールを開け、運ばれた荷物を取り出しながら雅子は感傷に浸る。
後悔は一切なかった。
私、雅子は人生の新しいスタートを、きる!
部屋の整理を終え、箱から取り出した一足のシューズを持ち、部屋を出た。
ハワイで購入した美しいベビーピンクのマノロのシューズを履き、雅子は家の玄関のドアを開けた。




