心の導線help me
当たり障りのない天気の話題や今日着ている服が素敵、と褒めあったりと、随分とぎこちないものだった。
私はこのお見合い相手である秀郎が、あまり話し上手ではないことは、三分でわかった。
彼が話さないのは緊張のせいだろうか?
そんなことを思いながら、私の方からたくさん話をする。
日頃の婚活の為、飲み会等で初対面の男性と話す話題を考え、話しをするのは得意となってしまっていた。
自然と婚活で鍛えられてしまった自身の能力を雅子は認識していた。
雅子が話題を振ると、秀郎はとても嬉しそうに答えていった。
ドラマで見るような「ご趣味は?」といった堅苦しいものではなく、お食事会といった雰囲気である。
食事をしながらお互いに、今までどういう物が好きで、どういう生活をしてきたか? という会話をちょうど一周したところでお開きとなった。
「この後お二人でどこか行ったら?」
仲人さんと母達に言われてそうすることになった。
その後、植物園に行くことになり、園内を歩き(その日履いていたマノロブラニクのシューズで土を踏むハメになった)カフェにはいった。
カフェに入り、席に着くと秀郎は雅子に微笑みかけた。
その瞬間、雅子の視線がある部分に集中してしまった。
二つの穴から銅線のように、左右から数本でている秀郎の鼻毛である。




