17:
***
ついに迎えた結婚式当日。
雅子は未だにマリッジブルーを引きずっていた。
幾度となく、自身に言い聞かせる。
「大丈夫。結婚式が終わり、一緒に住み始めたらこんな不安は無くなるはず」
不安は捨て、気持ちを切り替える。
今日は幸せな花嫁を演じることを決心する。
もう後戻りはできない。今日は式当日なのである。
スタイリストが雅子のメイクを直している間、雅子は想像する。
映画やドラマでよくある「花嫁が逃げたぞ!」
「やっぱり、私には無理! 御免なさい!」といった、 バージンロードから逃げ出す花嫁を。
実際のところ、現実世界ではそんなことはできない。
そんなことを本当にすれば、両家の面目はまる潰れである上に、招待客にも時間と手間とお祝儀を持参してくれてるのに失礼ではあるし、何よりウエディングドレスというものは本当に重い。
こんな重く、動きにくいものをまとって全力で走れたものじゃない。
もし走って逃げても、すぐさまスタッフに手を掴まれ、戻されるというなんともお粗末な結末になるだろう。
ハンサムな王子様が白馬に乗ってお姫様抱っこで雅子を連れ出しに来てくれたら話しは別だろうが。
白馬じゃなく、フェラーリでも良いのだけれど。
ビューン。




