ラスト
「Ciao!(チャオ) 雅子!」
雅子の席に彼はやって来た。
格子柄のコートを羽織り、首にはストールを巻いている。
「Ciao!(チャオ) ルカ!」雅子は笑顔で手を振る。
「待たせたよね。ごめんね」
「ううん。お疲れ様」
「雅子もお疲れ様」
彼は今雅子が交際しているイタリア人の男性、ルカ。雅子の五歳上の年齢だ。
ルカはイタリアのフィレンツェ出身で、現在は日本でイタリア料理店を経営している。
ルカとの出会いはフィレンツェ行きの電車ユーロスターの中だった。
席が隣になり、ルカが雅子に「日本人ですか?」と話しかけたのがきっかけで、偶然、帰りの飛行機の便も同じということが発覚し、話しが盛り上がった。
今から思うとこれが、運命というものなのだろうか。
秀郎と出会うこともやはり、運命だったのだろう。
ルカはフィレンツェに行く予定だったのだが、偶然雅子の出張ともかぶり、ミラノで雅子と会うことになっていたのだ。
今ルカと雅子は日本で同棲をしている。
彼は雅子を本当に大事にしてくれる。
それは言葉だけじゃなく、行動とともに、目に見えない、愛なるものを感じる。
そして雅子もそんな純真なルカの愛を受け、ルカを愛している。
ルカとは現在事実婚の状態だ。 形にはこだわらない。
この先、ルカと結婚をするかもしれない。しかしそれはまだ決めていない。
彼といると心地良く、ふとした時に幸せを感じるようになった。
今はゆっくりと愛を育み、大切に想い合う。
幸せの条件を探し、出会いの度に何かをふるいにかけていた。
雅子にとっての幸せとは内なるものから感じることだった。
ルカにはそんな大切なことを教えられた。
愛とは。
ドゥーモを背景に二人は幸せそうな笑顔を浮かべ、コーヒーを飲んでいる。
美しい空とドゥーモと二人の男女。
グラッチェ。(ありがとう)
=END=お読みいただきありがとうございました。




