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秀郎:今からでるよ。
雅子はギョッとした。約束の時間から一時間も遅くなり、今からでるとは……。
しかも弁解や謝罪もなく一言である。雅子腹立たしさを覚えたが、冷静を保つ。
そしてようやくラインが来た。
秀郎:着いたよ。どこ?
秀郎の家からは多く見積もっても車で三十分程である。
最初に秀郎からラインが来てからまた一時間ほど時間が過ぎていた。
ホテルの予約には完全に間に合わず雅子は腹が立った。
一体、どういうつもりなのだろう? そんなことを考えながら秀郎の車に乗り込む。
秀郎に運転してもらうのは初めてだった。もっぱら東京では電車を使い、車は必要なかったので免許はあるものの、ペーパードライバーだと秀郎は言っていた。
雅子はシートに着くなり時間に二時間も遅れて軽く「ごめん」と言っただけの秀郎に無性に腹が立ってきた。
「なんでこんなに遅れたの? 何をしてたの?」トゲトゲしい声で雅子は尋ねた。
「ごめん。用意をしていて……」秀郎はボソボソと答えた。
用意が二時間もかかるわけね? 女子かよ! 髪でも巻いてきたの?
そう口から出かかったが、寸出のところで止めた。
そう心で呟きながら、この人は時間にだらしないのかも。と考えた。
「あのね、時間を約束してるときはきちんと守ってください。遅れる時は前もって伝えてください!」
雅子は車内に響き渡る声で秀郎に発していた。
秀郎は「ごめん……」と答えただけだった。
この人、大丈夫なのか? 心の中で雅子は叫んでいた。




