125
***
あれから、キジュからのメッセージは来なくなった。最後にやり取りしてから、一ヶ月が経った。
毎日のように、日常の出来事を知らせるようなメッセージが彼から来ていた。どうでも良いような事柄ばかりだ。
雅子はそれにいちいち返信することを少し面倒に感じていた。返信も雑になってしまっていた。
だが、突然キジュの毎日の便りがパタりと止まってしまうと、どこか寂しく感じることもあった。
無意識に雅子の心の何処かにはキジュのスペースを作っていたようだ。こういうもはのは大体が無意識なのである。
それにしても、キジュは元アイドルのジョンミンだったのか。謎は残る。
***
「吉高さん聞いてください。木下さんにさっき、めっちゃイラつきました」
「へっ?」
モーダ8の新作商品が掲載されているカタログを二人で見ている時に山下は言った。
山下は当然のことながら店長のことは最初から「すっごく嫌です」と言っていたが、今日は初めて木下の話になった。
「なんか木下さんっておかしくないですか? なんか変ですよ」
「そっそうかな」
雅子も思っていたが、ここで同意してしまっては悪口大会になってしまう。高校生ではないのだから、仕事場はそんな場所にしたくはない。だから雅子は聞き流そうと思った。
よっぽどのことがない限り。
「あの人絶対おかしい。だって働いてる年数すごく長いのに、店長じゃなくて副店長ですもん。店長になれないのは訳ありですよ。絶対」
山下は結構はっきりモノを言うタイプである。人形のような可愛い顔で毒を吐くので雅子は時折、面白くて笑ってしまう。
また、山下さんは多分、店長や木下よりも、仕事ができる。
「あれ、すっごくイラっときましたよ。吉高さんも店長にガツンと言った方がいいですよ」
強気でいく山下さん。
本当に頼もしい。彼女はある意味ここにあっているのかもしれない。そのように感じる。私はどうだろう。
ふと自問自答するときがある。
店長の説教を聞きに来ているような時がある。
その説教は理にかなっていることなら、納得の上感謝をするかもしれない。
しかし、彼女はいつも難癖つけて何かに誰かに当たりたいのだろう。
木下さんはビクビクしていて、だからひねくれてるんじゃないかと思う。
しかし山下さんはきっと彼女達と戦うだろう。




