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サモナー大戦記  作者: 晴ノ雲雨/八咫ハルト
第ニ章 第二次ザラント会戦
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第六話 召喚魔導軍、始動

 

 最初に前進を開始したのは、皇国の正規軍約四万。

 それに応戦して、帝国も正規軍三万を前進させる。


 進軍している主力とは別の残存部隊後方――やや離れた位置に皇国の召喚魔導軍は布陣していた。


「定石通り、主力部隊約半数を先鋒としてきましたね」


 割り当てられた場所で隊列を組んでいると、隣のカリーナが話しかけてくる。


「我々、召喚士官の護衛として予備兵力を残しておく必要があるからな」


 召喚兵士サモンソルジャーを召喚している最中の召喚士官サモナーは無防備な存在だ。そこを奇襲されれば一溜りもない。

 それゆえこの緒戦には、味方が召喚兵士を顕現して陣形を組むまでの時間稼ぎと敵の召喚士官に対する牽制という役割があった。

 現代の戦は、召喚士官を主軸としての戦術が基本。


 思案を進めていると、一段と悲鳴と怒号が強くなる。


「遂に戦闘が始まったか」


 戦端が開かれた戦場へと視線を向ける。


「両軍エルネスト方陣で横一列に並んでいるな」


 第一次ザラント会戦の敗戦から学んだのか、帝国側もエルネスト方陣を模倣していた。


「それなら戦力で優勢の皇国が優位ですね」

「確かにそうだが――」


 しかし、とレオンは後を引き継ぐ。


「それは帝国も理解しているらしく、無理には攻勢に出ていない」

「でも防戦一方では、我々皇国には勝てませんよ」

「――それは皇国も同じだ」


 確かに兵力は優勢だが、魔族は人族より身体能力が高い傾向にある。

 防戦に専念すれば負ける事は無いだろう。戦況は両軍共に決定打を欠いているのが実情だ。

 カリーナが首をかしげる。


「会戦は長期戦になるでしょうか?」

「……それは我々、召喚士官次第だな」


 緒戦の目的は、主力――召喚兵士サモンソルジャーが到着するまでの時間稼ぎ。戦況が膠着している以上、会戦の行く末は召喚士官に委ねられている。


 レオンは心臓の鼓動が速くなるのを感じた。







 戦闘が始まって三十分後――


 皇国召喚魔導軍の六個旅団がそれぞれ隊列を組んで前進の命令を待っている。

 隊列は中央に槍兵パイクが並んでおり、前後左右を銃兵が固めていた。

 そして旅団単位では横一線に整然と並び、その中央、第三召喚旅団の後方に――エルヴェル皇国、第一召喚師団の本陣があった。


 本陣には青紫の軍服を身に纏った男が一人。

 背が高く、凛々しい印象を与えるような容姿。


 彼こそが皇国の召喚魔導軍副将で第二召喚士団長でもある、ラファエル・フォン・エルネスト中将。

 部下の報告を聞くと、一度頷いて。


「旅団全てのエルネスト方陣が完成したか」

「はい。各旅団長はいつでも進軍可能だと」

「では、改めて射程外から撃ち始めないように言い含めよ。召喚兵士に目に見える形での弾切れはないが、無駄弾が多いほど主である召喚士官の精神摩耗は酷くなるのだからな」

「はっ!」


 伝令兵が敬礼し、駆け足で部隊の前方へと向かう。


 戦況は可も不可もなく推移している。

 変化があるとすれば、両軍の召喚士官サモナーが動いた時――

 勝負を分ける瞬間が、刻一刻と間近に迫っていた。


 すると、背後から名前を呼ばれる。


「エルネスト中将――」


 威厳のある声。

 振り返ると老齢だが堂々たる体躯をしている一人の男の姿が。

 この男が皇国召喚魔導軍の司令官である、マヌエル・フォン・ギースベルト大将であった。


「今回の会戦、敵召喚魔導軍には将官級ジェネラルクラスが何人存在する?」

「事前に調査した情報では、召喚士階級サモナーランク中将が一人、少将が二人との事です」


 現在、帝国には将官級の召喚士官サモナーが七人存在している。内訳は召喚士階級、中将が二人に少将五人。


「残りは、北部方面に中将と少将が一名ずつ、西部方面であるアカツキ連邦には少将が二人」

「信憑性は?」

「帝国の召喚士官サモナーを尋問した者達からも同様の報告が届いており、まず間違いないと思われます」


 前哨戦に勝利していた皇国は、帝国の召喚士官を数名捕虜としていた。


「……未だ交戦状態にないアカツキ連邦相手に戦力を割きすぎだと思うが」

「恐らく王国の前例を踏まえての戦力配置でしょう」


 数年前に王国がとった帝国領内への侵攻作戦。

 結果的に勝てたとはいえ、帝国上層部からすれば失態であることに変わりはない。


「そして、現状の戦力だけでも帝国は勝利する自信があるということか」


 ギースベルトが怪訝な顔をする。


「奴らは前回の決戦で我らに大敗を決したのを忘れているのか?」

「……何か秘策があるのかも知れません」


 ラファエルの呟きにギースベルトが反応した。


「秘策?」

「はい。帝国にはエルネスト方陣を打ち破る策が」

「では、エルネスト方陣に有効的な戦術は何だ?考案者である貴様には何か思いつかないのか?」


 僅かの思案。


「……一つ思い付くのは、大量の大砲による遠距離からの砲撃ですが」

「この戦力差でそれは無いだろう」


 上官は即座に否定する。


「召喚旅団を無力化するだけの纏まった砲兵を揃えれば、今度は召喚兵士サモンソルジャーの数が足りなくなる」


 召喚砲兵の魔力消費量は歩兵の百倍。文字通り桁違いだ。


「そうなれば寧ろ好都合だ。散開して乱戦に持ち込むだけで十分に勝てる」


 近代では召喚士官の誕生が口火となり軍制改革が起こっていた。

 それにより部隊が細分化され、現代では散開しての戦闘行為といった柔軟性のある軍事行動も難しくない。


 他にも問題はあるぞ、とギースベルトが後を紡ぐ。


「――大量の砲兵を召喚してしまえば、多くの高位召喚士官サモナーは丸一日、砲兵以外の兵科を召喚できなくなる」


 従って帝国は皇国の召喚魔導軍を壊滅しきれず、追撃戦にでも持ち込まれれば、まともな撤退支援部隊を編成する事すら不可能になるだろう。

 そうなれば帝国召喚魔導軍の壊滅は必至だ――


「奴らがそれ程のリスクを犯すとは思えない」

「同意します」


 ラファエルが頷き返す。


「ですので考えられる可能性は、密かに増援を得ているのか、もしくは新たな秘密兵器でも開発したのか」

「……偵察の報告では、援軍も新兵器らしき物も確認されていないようだが……」


 そこで大きくため息を吐いた。


「これでは堂々巡りだな」


 まぶたを閉じて考え込む。


「……既に賽は投げられたのだ」


 ギースベルトはぐっと拳を握りしめる。


「全軍に進撃の合図を出せ」


 そして、獣が牙を剥くが如く命令を発した。



「帝国を蹂躙せよッ!」

種族について


魔族

外見:種族を通して紅い瞳が共通している。

身体的特徴:身体能力が高い傾向にある。

備考:角や羽は生えていない。


エルフ

外見:美形が多く耳が長い

身体的特徴:他種族より視力が優れている。

備考:寿命が極端に長いという事は無い。多少長寿な程度。


ドワーフ

外見:黒の髪と瞳に黄色のかかった肌をしている。

身体的特徴:他種族より手先が器用な傾向にある。

備考:特別毛深かったりはしない。

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