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サモナー大戦記  作者: 晴ノ雲雨/八咫ハルト
第ニ章 第二次ザラント会戦
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第五話 召喚

 大陸歴一二五六年 五月一五日 正午――


 雲の隙間から陽光が差してきた頃、盛大にラッパが鳴らされた。

 それを合図にテレーゼが指示を出す。


「各自、割り当てられた兵科の召喚兵士サモンソルジャーを顕現せよ!」


 レオンも指示に従い、周囲の人間と距離を置く。


召喚サモンソルジャー――!」


 主の召喚命令に応え、目の前に直径一メートル程の魔法陣が現れる。

 召喚者以外には複雑奇怪な紋章にしか見えないそれは、脈動するかのように強い光を放つ。

 やがて魔法陣が収縮していき、それに同調するかの如く人の形を構築する。

 光が収まるとそこには――青色の兵士がその場に召喚されていた。


 背丈はレオンとほぼ変わらない一七五センチ。

 皇国で採用されている青紫色の軍服を身に纏い、その手には七メートル近い長槍パイクが握られている。

 額には小さな紋章が描かれていた。


「……今の俺では槍兵パイク一体が限界だな」


 召喚兵士は顕現している間、その兵科に応じた魔力が差し引かれる。帰還させるとその召喚兵士分の魔力は回復される仕組みだ。


(歩兵でいいなら、あと二体追加で召喚可能だが)


 しかし、一度召喚した召喚兵士の兵科は二十四時間経過するまで変更不可という制約がある。

 それはつまり、この槍兵を帰還させて、回復した分の魔力で別兵科を召喚させることは二十四時間の間、不可能ということだ。

 このことから、召喚兵士の兵科選択は慎重さを求められる。


「それに顕現する召喚兵士が多ければ多いほど精神的に疲労する。歩兵しか召喚不可能とはいえ、意味もなく召喚する理由は無い」


 魔力は召喚時の一度きりしか消費されないが、その代わり召喚中は精神摩耗が激しい。

 布陣した際に、召喚兵士を顕現させておけば、攻撃に防御とすぐに対応できるが、長時間の顕現は召喚士官サモナーの負担が大きすぎる。

 召喚士官が、攻撃直前のタイミングで召喚するのはこの精神摩耗が理由だった。


 視線を巡らせるとテレーゼの姿が目に付く。


 彼女は複数の魔法陣から召喚兵士を連続して召喚していたが、特筆すべきはその召喚時間だろう。


「――流石に召喚士階級サモナーランクが尉官級ともなると召喚時間が短いですね」


 カリーナが自身の召喚兵士を引き連れて近寄ってくる。


「尉官級は召喚兵士一体につき、確か――」

「――約五秒だ、我々下士官級が十秒なのでその半分だな」


 召喚兵士一体にかかる召喚時間は、階級が高位になるほど短縮される。佐官級は三秒、その上の将官級は一秒という風に。


「その階級の高さと相まって二重ダブル適性者なのですから、エルネスト大尉殿はつくづく反則ですね」


 二重ダブル適性とは、文字通り二つの種族適性を持つ者――ハーフに限り低確率で反応が見られることがある。


「そういえば、クライス少尉もハーフ――二重適性者でしたよね?」


 容姿では判断付きませんが、とカリーナが呟いた。


「ああ、母がドワーフ族だった」


 ドワーフとは、黒の髪と瞳に黄色のかかった肌をしている種族。伝承にあるように特別毛深いわけでは無い。

 レオンは金髪にブラウンの瞳、と容姿にドワーフの特徴は見受けられない。外見からレオンをハーフと判断するのは困難だろう。


 すると、彼女が視線をレオンの召喚兵士に移した。


「……クライス少尉の召喚兵士を改めて識別――確認しても構いませんか?」

「一々確認せずとも構わない」


 味方の戦力を正しく把握するのは軍人として当然の事――

 レオンが了承したのを確認して、カリーナが召喚兵士の額にある紋章を見据えた。

 レオンも同じく紋章を見据えて〝識別〟と無言で唱える。

 そうすると、召喚兵士のステータスが頭の中に入ってきた。




 所属:第一〇五召喚中隊

 召喚者サモナー:レオン・フォン・クライス少尉

 兵科:槍兵パイク

 練度:B-(各能力値ステータスから5%マイナス補正)

 各能力値ステータス

 STR(筋力):80→76 B

 DEF(耐久力):74→70 B

 DEX(器用):86→81 A

 AGI(速度):78→74 B

 INT(知力):92→87 A




「……相変わらずハイレベルな能力値ですね」


 カリーナが嘆息する。


 人族が主である召喚兵士の能力平均値は五十前後。なので、レオンの能力値は相当高水準といってよかった。


「これも少尉殿の身体能力が高いからでしょう」


 召喚兵士は召喚者の身体能力を模倣する傾向にある。

 従って主である召喚士官が成長すれば、それに伴って召喚兵士の各能力値ステータスも高くなる。

 その理屈だと、身体能力が下り坂に差し掛かるころからは歳を重ねる程、弱くなる一方だ――とは一概に言い切れない。


 その理由が――


「しかも、以前確認した時より練度が高くなっているので能力値の低下も最低限に抑えられています」


 ――兵科の練度に応じて、初期能力値に補正が掛かるためだ。


 この練度は、召喚兵士の訓練や実戦経験に応じて上昇する。

 従って主である召喚士官の軍歴が長く、その兵科を使用する時間が長ければ長いほど、召喚兵士の練度も高い傾向にあった。


「……練度B-は、一人前と呼ばれるBの一つ下ですね」


 練度Bでマイナス補正が掛からなくなる。

 そのことから、練度がBになると召喚兵士、召喚士官共に一人前と称されていた。


 周囲を見渡すと、下士官と尉官の殆どは召喚を終えた様子だ。


「そろそろ、隊列を組む時間だ。割り当てられた持場に急ごう」

「はい」


 レオンが促すとカリーナが背後から付き従ってくる。

 帝国側に視線を向けると彼方も慌ただしくなっているようだ。




 遂に、戦端が開かれる時がきた――

練度             能力評価値


D(25%マイナス補正)   1~19 E

C-(20%マイナス補正) 20~39 D

C(15%マイナス補正)  40~59 C

C+(10%マイナス補正) 60~79 B

B-(5%マイナス補正)  80~99 A

B(デフォルト・補正無し) 100以上 S

B+(5%プラス補正) 

A-(10%プラス補正)

A(15%プラス補正)

A+(20%プラス補正)

S(25%プラス補正)

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