愛妻の日には愛を(まごころも)こめて花束を贈ります
本日1月31日は、愛妻の日なんだそうです。
短い文章ですが、楽しんで頂けると嬉しいです。
ピンポーーン
来客を告げるインターホンの音が鳴り響いたのは、何かと慌しい18時のことだった。
調理の手を止め、モニターを確認してみると、そこには花束を抱えた女の人。
「こんばんはー、アサイ生花店です。花束をお届けにあがりましたー」
え???
はい、すぐに開けます、と答え玄関に向かう間も、私の頭の中は?マークで埋め尽くされていた。
え?
何で?
誰から?
今日は…1月31日、誰の誕生日でもない。
何かの記念日でもない。
もしかしたら、花屋さんの間違いかな?
頭の中で色々と考えながら玄関のドアを開けると女の人に名前を確認し花束を渡される。
「佐藤 弘美さんですね?佐藤 裕太さんからのご依頼で花束をお届けにあがりました」
「……はぁ??」
夫から私宛てに花束!?
間抜けな声をあげてしまった私をよそに、女の人は言葉を続ける。
「こちらに受け取りのハンコかサインを頂けますか?………はい、ありがとうございます。メッセージカードがついてますので、落とさないように気をつけてくださいね。それでは、失礼します。ありがとうございましたー!」
『何で?』と『どうして?』がグルグルと頭の中を駆け巡る中、受け取りのサインをし受け取ってしまった私は呆然と玄関に立ち尽くす。
と、とりあえず落ち着こう。それから考えよう。
自分を落ち着かせようと深呼吸すると、花束から立ち上る香りに気がついた。
「…いい香り」
豊かで、甘く華やかな香りに思わず笑みが零れる。
赤いバラと淡いピンクのかすみ草の花束からは、優雅で、どことなく優しい香りがする。
私は深呼吸を繰り返し、胸いっぱいにバラの香りを吸い込んだ。
芳しい香りを堪能し、気分が落ち着いてきたところで、メッセージカードの存在を思い出した。
きっと、カードに何か書いてあるはずだ、とカードに手を伸ばす。
『弘美へ』と表書きされた小さな封筒を開けると、そこには夫の手書きの文字。
弘美へ
いつもありがとう
恥ずかしくて、面と向かって
言えないけれど、愛してるよ
君に、心からの愛を…
裕太
顔が熱い。
じわじわと顔が赤くなっていくのがわかる。
「………バカじゃないの」
どんな表情をして、こんなメッセージを書いたのよ、と呟いたのは照れ隠し。
弛んでしまった口元を隠すように顔の下半分を埋め、そっと口を開いた。
「…私も、愛してるよ」
綺麗に花瓶に生けて、ダイニングに飾ろう。
そして、帰ってきたら『おかえり』を言おう。
夫が好きだと言ってくれた、笑顔で。
21本のバラに負けないように。
さて、自分に花束を買ってこよう。
お読み下さり、ありがとうございました。




