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先立つ物は


 昨日かんがえた今日の大雑把なルートプランは、ログハウスから北の山脈方面へ左右に蛇行しながらなるべく広範囲を探索しつつマップ上で目星をつけた山のふもとまで進み、その場所からドラゴンホルモンBBQをしたポイントに転移。

 そこからピクちゃんがマップで道らしき物を見付けた方向へって感じで考えている。

 あと留守中にログハウスの半径100メートルの範囲を監視しする、記録水晶――監視カメラ――オカルト仕様を設置した。


 ログハウスを出発後、進行方向に風魔法エアプレスで押しわけて視界を確保しつつ木々のあいだを縫うように高速ではしり抜けて進む。

 ピクちゃんは俺の左斜め前方に位置しながら肩ほどの高さを飛行していて、なにか見つけるたびヒュンっと加速し採取・狩猟して戻ってくる相変らずなハンター振りを発揮していて、楽しげに飛びまわっている。

 広域簡易マップを意識内で表示しつつ、方向を見失わないように現在位置を把握しながら周囲20キロの範囲を詳細マッピングもおこなっているのだが、ピクちゃんのハントもそのマップ精度をあげるのに一役かっていて、周囲の動植物たちの生態系が追加でどんどん書きこまれていく。


 だが、ログハウスと最初の目標地点に考えていた場所との丁度中間あたりへさしかかったころ、俺とピクちゃんの気配の大きさに驚き天災のすぎ去るのをただじっと息をひそめ隠れている獣や魔獣たちの中にあって、葱を背負ったお馬鹿サンが今まさに鴨となりにやって来た。


「さぁ~~~ちっ!」


 俺が少し大きめの存在力を感知し、おっ? って思ったと同時に、ポャァンとした声をだしながらピクちゃんがフワッと舞いあがり体操選手が宙返りするときのように膝を抱えこんで縮こまる。


「あ~ん、ですっとろぉ~~――」


 そして、ギュッと縮んだスプリングが溜めこんだ力を一気に解き放つがごとく爆発的なエネルギーを発っし、ピクちゃんが一条の光の帯となり先ほど反応のあった個体へと伸びて行き――


 ヒュンッ――――ズッドォオオォァン!!!


 その(あと)すぐにすざまじい衝撃と破壊音が周囲に響きわたった。

 しかし俺は視たぞ! ピクちゃんがバドミントンシャトルの重り部分に足が生えたみたいな状態になって、すっ飛んでいくところを。


「肉~、にく獲ってきた。くま~」


 それは頭部の消失した白い獣の亡骸で、ニコニコしながら尻尾らしき部分を持って地上5メートル程の高さをふわふわと浮きながら戻ってくるピクちゃん。

 もう満面の笑みでこちらを見ながら誉めて誉めてオーラをだしまくってるよ。


「熊? なんか白いね、ピクちゃん」


「白熊じゃない?」


 こんな場所に白熊は居ません。

 解析で見てみると……


 西方聖獣白虎のなれの果て(首チーン)――熊違うし! 

 俺はスッっと目を逸らし見なかった事にしてサッっとウィンドを閉じた。


「やったね! ピクちゃん。こっ……今夜は熊鍋? かな?」


「ムッフゥ~、いっぱい食べちゃうもん」


 この虎がこの世界でどのような存在かなんて、俺たちの知ったことじゃないし興味もないが、こんな未開の大自然の中でピクちゃんや俺に敵意を向けた時点で殺られる理由には十分たるし、その相手への対応をどうするかはこちらの気分次第だ。

 だが、一言だけピクちゃんには言っておかねばなるまい。


「それとピクちゃん」


「ん、なに~?」


「スカートでドロップキックはやめなさい」


「エヘへ~、は~い」


 ぶつを受け取りボックス内で解体処理する。


「う~ん、前のドラゴンが体内に持っていた核みたいのは無いね」


「やっぱり? だって、あのトカゲは頭が変形しただけだったのに、この熊はピクが顔の横を少しかすめただけで頭が霧散しちゃうんだよ~。雑魚だったね」


 はははっ、ピクちゃんにっとっての雑魚であって、低レベルの者は目にしただけで失神ものだろう。


 そしてふたたび目標地点を目指し進みはじめたのだが、俺は気になったことがあり斜め後方からピクちゃんの様子をうかがっていると、突然ガバッっとピクちゃんがコチラを振り向いた。


「……な、何かなぁ~? あるじ~」


「えっ、何とは?」


「あるじ、なんか視線エッチくない?」


「いえいえ、ピクさん。そんなそんな」


 ムムムッっと納得し難いと言わんばかりの疑わしげな視線をこちらに送りながらも飛行を開始するピクちゃんの背後に俺がもう一度ポジション取りしようとすると、すぐさまガバッと振りかえったピクちゃんはスカートの前を右手で後ろを左手で押さえて今度は確信をもった口ぶりで言ってきた。


「ほらぁっ! やっぱりピクのスカートの中を覗こーとしてる!」


「あ~、違うんだよピクちゃん」


「何が違うのか言ってみ? あるじ」


「確かさっき見えたピクちゃんのパンツは、前面にレース編み部分とサイドにブルーの可愛い小さなリボンが飾「わぁっーーー!」」


「だから詳細な描写はいいからっ! それで何よ、あるじっ!」


「いや、いま改めて後方から見てみると全然見えないなっと」


「あっ、当たり前でしょっ! あのねぇ、女の子は小さい頃からスカートを履きはじめて、その後ずっと履いているんだから、その過程で中が見えてしまう動きと見えないようにする動きを完全に把握していて身につけているの。そおしてソレを自然に使い分けることが出来るんです!」


「おおっ! 凄えー。(いま)だ俺にも認識できていない特殊なスキルが存在しているってことなんだね」


「はぁ?」


「じゃあじゃあピクちゃん、風とかで女性のスカートが(めく)れてパンツ丸見えになったりした時のあれって、偶然見えたわけではなく、視えたんじゃなくて見せたのよっ! 的な? オッパイ当たってるんじゃなく当ててるのよってのと同じことだったんだね」


「ま、まあね……」


「なるほどね~。あれ? じゃあ、さっきピクちゃんのスカートが(めく)り上がったのって俺にパンツを「違うっ!」――え?」


「ち……違くないけど、さっきのは、また別っ!」


「え~っと、どゆこと? ピクちゃん」


「だ・か・ら! 話を混ぜっ返さないでよ、あるじ。そういう事ではなく、今は何故ピクのスカートの中を覗き込もうとしてるのって話でしょっ!」


「あっ、ああ~、うん。スカートで上手くガードされて見えないなら、それはそれで納得なんだけど。さっきから見てると「エッチ!」んんまぁ、見てるとスカートの中が、こう、真っ暗でどこまでも深く見れば見るほど引きこまれるような吸い込まれるような、そして物凄く濃密な何か。このかんじを表現するのに妥当な言葉を当て()めるならば、ん~ブラックホール? いや、ダークマターか」


「んなっ!」


「ピクちゃんのスカートの中には宇宙創世に迫る神秘の物質ダークマターが、ブフッ――ピクちゃんのダークなお股は宇宙創世に匹敵するほどの神秘だということか!」


「イイタイコトハソレダケカ! んっ?」


 それからは大した変化もなく順調に山のふもとで目標地点に設定してあった場所へ到着した。

 ただ、ピクちゃんの決め技が一つ増えたことを除けばだが――痛い……


「はい、紆余曲折ありましたが、無事到着しました」


「わーい、紆余紆余したのはあるじだけだけどね~」


「ふふっ、まあそれはいいとして、チョット見回して良さげな場所でお弁当を食べよっか、ピクちゃん」


「キャッホー、さんせ~い」


 2人で上空150メートル程度まで高度を取り場所を決め移動してランチマットを敷いた。


「じゃ~ん。ここはオーソドックスにオニギリ・サンドイッチ・チキン唐揚・玉子焼き・ミニハンバーグ・生野菜、そしてタコさんウィンナー!」


「キタッーーー!!」


「玉子焼きとタマゴサンドは味付けが違うから許してね」


「全然オッケーだよ! あるじ~」


「飲み物は紅茶・緑茶・コーヒー・炭酸・ハーブティー。今回は軽くこんなもんで、さあどうぞ召し上がれ」


「いただきまーす」


 まず俺は梅おにぎりと緑茶、ピクちゃんはサンドイッチとコーヒーを手に取り食べ始める。


「ムッハァ~、あるじあるじ~、タマゴサンドとブラックコーヒーは黄金率だね!」


「いや、意味分からんけど、何となく分かるよピクちゃん。こっちのインスタントコーヒーを思いっきり濃くして苦く作ったのと一緒にタマゴサンド食べてみ」


 早速実践するピクちゃん。


「くっはぁーー! たまんないよ、あるじ~」


 コーラと明太子オニギリ、アンパン・牛乳とか、一緒に食べると何故か美味しい不思議な組み合わせってのが、世の中にはまだまだ存在しているはずだ。


 こうして1時間ほどでお弁当を食べ終わったのだが、今日はとても天気が良くピクニック日和なせいか、満腹ピクちゃんがウトウトしだしたので、肩車の体勢になり転移してそのまま一休みさせてあげよう。


「それじゃあピクちゃん、BBQポイントへ転移するから肩車の体勢になっちゃって下さーい」


「ケフッ、あいあーい、むにゃむにゃ」


「じゃあ、飛ぶよー。テレポート!!」


 BBQポイントに転移してからしばらくはピクちゃんが休めるほどの速さで、左手に北側山脈を見つつ周囲を探索と詳細マッピングしながら、東へゆっくり進んでいく。

 ピクちゃんはそれから30分しない内に目を覚ましたようで、そこからは再びハンターとなって飛び回りはじめ、その姿はいつ見ても楽しげだ。


 南東の道から森の外縁部から中へ20キロってところだろうか、先程から魔力感知に反応していた場所へ到着する。

 当然ピクちゃんも気がついていたのだが、生物ではない何やら魔力だまりっぽい物だったのでそのまま近づいてみると、自然な地形変化ではおこり得ないような入り口を持った洞窟がポッカリとくちを開けていた。


「あるじあるじ~、コレってアレだよね」


「うん、ダンジョンだと思う」


「あるじ、行っちゃう行っちゃう? もぐっちゃう?」


「くぅ~、後ろがみを引かれるけど今は先に人が住んでいる場所を見てみたいかなー。もういつでも転移で来られるからダンジョンは帰りのお楽しみにしておこう」


「そだね~。それにしてもこのダンジョン、人が来ている気配が全然ないよ、あるじ。こんなんでダンジョン運営できてるのかね」


「どうだろ、準備中か休眠中なのかもね。今、パッと探査かけてみたら一応100層以上はありそうだけど、目ぼしい敵らしき反応は今のところ全部白虎より弱そうだね」


「な~んだ、初心者用おためしダンジョンか~」


「まあ、ダンジョン内は帰りに少し見てまわって完全攻略はせずに今後に期待ってことにしておこう。もしかしたらいい物を発掘できるかもしれないしね」


「ぬふぅ~、ピク掘ちゃうぞ~」


 今はダンジョンを後にして再び飛行魔法で東へ進みはじめる。

 この辺りからは迷彩・偽装・隠蔽・阻害・誤認・幻惑などの魔法隠密セットをまとっておく。


 森の外縁から2キロ程の位置に来たとき俺はピクちゃんにチョットした質問をしてみる。


「もし、ピクやん」


「はいな、あるじどん」


「俺達は今、街道とその東方面にあるであろう街を目指しているんだけど、さし当たって一つ問題を抱えているんだ。それがなにか分るかな?」


「う~ん、なんだろ、分んな~い」


「現金の持ち合わせがまるで無い、正真正銘スカンピン(素寒貧)ってやつだな」


「むむ? でも、ピク達は色々な素材を大量に持ってるよね」


「そうなんだけど、たぶん街の中に入らないと換金できない。だけど高い確率で街に入るとき保証金みたいな小金(こがね)を預けることになると思う」


「なるほどあり()るね、あるじ」


 ただ、いま俺たちの持っている多種多様な素材はレアすぎて、街での換金はのちのち面倒なことになる可能性が高いと俺は思っている。

 そこで俺は前々から考えていたもう一つの方法を実行しようと思う。


「はい、では正面左手100メートル先の山肌にある洞穴(ほらあな)を御覧下さーい。あちらに見えますは山賊君たちとそのアジトで~す」


「わーい、パチパチ」


 いちおう、探査と鑑定をしてみた限りでは、入り口に見はり2人と洞窟内に22名の計24名全員が犯罪者なのは確認しているけど、間違ったらゴメンネって感じだ。

 あ、それと、人質もしくは奴隷が3名+1で、+1の1名は衰弱死寸前のようだ。


「今からおうかがいして稼業でせっせと貯めこんだお宝を無償で気持ちよ~く提供・譲渡していただきます」


「あるじ、山賊君たちはその後どのようになりますか~?」


「彼等は俺達の今後の生活にうれいを感じさせないために率先して犠牲となり、黄泉へと旅立っていく尊い方々なんだよ」


「ジェノッサーイトッ、だねっ!」


「さあ、水先案内に参りましょうかね、姫」


「ムッフゥ~、あいあ~い」


 入り口で見張りをしているにしては、ぶったるんだ様子でヘラヘラ・エヘエヘ薄ら笑いでくっちゃべっている下っ端(したっぱ)山賊君2名。

 隠密セットにより俺たちの存在に全く気づかない見張りのふたりの首がピクちゃんの風氷系複合真空斬氷によりスポポぉーんと飛び、切断面は一瞬で氷結して血液の漏れなし夜も安心だ。

 生ゴミは俺が時空魔法で生物分解を促進加速させ土に返す。


「じゃあ、ピクちゃん、元気よくあいさつよろしく」


「ごめんくださーい! おっじゃまっしま~す!」


 ◆

 ◆

 ◆


 登城し一日待機しての本日、消失した山脈の調査第一報への対応と今後を協議するため会議場へむかう。

 会場入りぐち左右の歩哨衛士の方々へ会釈してからなかに入ると、国の重鎮である御一人が既に席へ着き寛いでおられた。


「よぉ、嬢ちゃん、お(ひさ)


「ご無沙汰しております、閣下」


「今日は護衛騎士(ナイト)君(勇者)とは一緒じゃないのかな」


「ちょっ、やめて下さい! 人聞(ひとぎ)きのわるい。彼は冗談通じないんですから、真にうけたらどうしてくれるんです」


「ガハハハッ、嫌われたもんだな彼も」


「彼って身体への視線が露骨なんですもん。とくに胸元とかお尻とか……」


「んん~? 確かに嬢ちゃんは美人さんでスタイルも良いから、野郎どもにジロジロ見るなってのも酷な話しなんだが、胸はさほど「コホンッ!」――」


「――今度、御自宅へうかがわせて頂いたとき、奥様に閣下はお城でエッチなんですって言いつけます」


「おっと、こりゃイカン。聖女殿のご機嫌は甘味などでなおりますかな?」


「もうっ!」


「クカカッ」


 公爵という立場でありながら、プライベートにおいてはとても気さくな方で知られている。あくまでプライベートではだが。


 それから程なくして会議参加者全員集まったのだが、私が出席していることへ誰もツッコミを入れてくれないのが逆に悲しい。

 私の会議への出欠はこの国にとって重要では無い筈なのだが、どの道呼び出されるので参加している。

 しかし、紅一点といえば聞こえはいいが、分不相応で場にそぐわないこと(はなは)だしいし、皆さん絶対面白がってますよね。


 姫様、うらみますよ~。まんまと聖女なんてのに祭り上げてくれちゃって……。


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