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再びログハウス

 旧版の4・5・6話が殆んどカットされており、実質7話の内容になっております。


 帰ってきた翌日からは、シンジュちゃんが実体化した身体への影響をピクちゃんをサポートに付けて検証させてみたが、1日4時間ほど実体化していられて、なにも問題ないようだ。

 なのだが、本体である真樹――真なる大樹とVRMMO時代の眷属が呼んでいた――の在るこのフィールドからは、まだ離れることが出来ないらしい。

 食事に関しては必須ではないらしいが、俺とピクちゃんが居る間は一緒に付き合って食べてくれている。

 あとはシンジュちゃん本人に無理をしない程度で色々と検証していってもらおう。


 今回は帰宅して真樹フィールドに4日間いたが、この昼めし後に向こうの世界へ出発する予定だ。

 今は2人共シンジュ部屋で遊んでいてもらってるんだが、そろそろ昼食の準備が終わるの呼ぶとしよう。


「おーい、ピクちゃんシンジュちゃん準備終わるよー」


「きゃほ~、待ってましたー」


『わ~い』


「お昼ごはんにはこれを使います」


 そう言って二人の前にアイテムボックスから出したのは、表面金属板部分はヒヒイロカネ、中間に雷属性を内包付与したミスリル、強度強化に下面アダマンタイトの三層構造で、ミスリルの上表面には魔術紋様を刻み込み擬似電磁誘導を再現した魔力式IHクッキングプレートだ。


「うひゃ~、鉄板焼きだー。でもこれは2日目に食べたドラゴンステーキとかハンバーグを焼いた鉄板と少し違う」


『わくわく』


「おーっと、よくぞ気が付いたね。そう、今回はお好み焼き&もんじゃ焼きがメインの鉄板焼きだよ」


「やったーー! ピクいっぱい食べちゃうぞお~」


『たのしみだよー』


「じゃ、早速いってみようか」


「はいはーい」


『きゃはっ』


 そう言ってから早速一発目のお好み焼きを焼いていく。

 鉄板焼き用のヘラは大小ともオリハルコン製で使い心地は最高だ。


「おまたせ、一番手はドラゴンミンチ入り肉ベースお好み焼きだよ。ソースが鉄板にこぼれてもコビリ付かないから豪快にやっちゃっていいよ」


「ピク行っきまーーす」


『わーい、いただきまーす』


 楽しげに食べる2人を見ながら、お好み焼き・たこ焼き・数種類のもんじゃ焼き・デザートなどの料理を次々に追加していく。

 合間の雑談も盛りあがり、気がつけば午後3時を過ぎているが、もうしばらくそのまま2人にはゆっくりまったりしていてもらおう。


 あっちこっち手を付けながら1時間弱で片づけと出発準備を終えて2人に声をかけた。


「そろそろ出かけるよー」


「はーい」


『――、――』


「おっと、さすがに実体化は解けちゃったかシンジュちゃん」


「うん。ピクがまた通訳するよ~」


『おねが~い』


「俺のホーム内の物は自由にしていいからねシンジュちゃん」


『ありがと』


「じゃあピクちゃん、向こうの世界でもまたよろしくねー」


「まっかせっなさい! 高性能高機能さぽーとAIピクえっくすが、あるじの旅をらくらくサポートだよ!」


「いやいや、AIってピクやん、アンタ卵だったじゃん。化石化してたじゃん」


『あははっ、ピクちゃんが付いていれば安心だね、あるじ』


「モチロンダヨ~。ピクちゃんが()いていれば安心さ」


「ムムッ、そこ! あるじっ。ニュアンスがちが~う!」


『キャハハッ』


「フフッ、じゃあ行ってくるよシンジュちゃん」


「シンジュちゃんいってきま~す」


『――、――』


 手を振るシンジュちゃんに見送られながら、異界門を閉じて戸締りを完了した。


「ピクちゃん、先ずはパトロールを兼ねて周囲を散策しに行こっか。16時過ぎてるから近場のみだけどね」


「ほ~い、りょうか~い。飛んでいく?」


「うん、今日はざっと見て回って19時頃には晩御飯にしたいから18時には戻る感じで行こっか」


 ピクちゃんを肩車してログハウスの外に出ると、まだまだ日の高さは十分でたとえるなら夏至のような日の長さだ。

 玄関先でふわりと浮き上がり飛行魔法でゆっくり上昇しながら、周囲を改めてぐるっと見回してみてから出発する。


「では遊覧飛行と参りましょうかね、姫」


「ムッフゥ~、あいあい」


 ピクちゃんと雑談しながらログハウスを中心に半径1キロほどの範囲で、地上25メートル付近をただよいつつ散策していく。

 その間ピクちゃんは何かが目につくたびに、俺の肩から飛びたち採取しては戻ってきて、ふたたび肩車状態におさまるのを繰りかえしている。

 さながら俺が空母でピクちゃんが発艦着艦を繰りかえす偵察機のようだ。

 ピクちゃんも軽い散歩のつもりなので探査系魔法で広範囲を精査したりはせず俺達の周囲500メートルていどを目視と気配察知のみでフォレストコーミングを楽しんでいる。


「あるじあるじっ! 凄いよっ、お宝ザクザクだよ! 宝庫だよ!」


 俺にとってもそうだが全てが初見で目あたらしく、ピクちゃんのテンションもうなぎのぼりの天井知らずだ。


 西方面からスタートしてログハウスを中心に時計回りで見て回った今日の散策もそろそろ佳境にはいり、南に位置する巨大湖に差しかかる頃には17時半のちょうどいい時間になっていた。


「来たよ、きたよっ! あるじっ、すごく……おおきい「まてぇいっ!」ん?」


「ナゼここでネタに走るっ! ま、まさか気付かぬうち既に腐女って……」


「チッチッチッ、あるじ~、ジャンルがちがうのだよジャンルがぁっ!」


 もうノリノリで、拾ったツルを鞭のように振り回して、どこぞの青いスーツに乗ったオッサンさながらの言い回しだ。


「うわっ! 知りたくないし分かりたくないから」


「もお~、あるじったら“てきを知り己を知れば百戦殆からず”って故事もあるでしょ! 食わず嫌いはダメだよ~。あ、でもこの言葉は誤用されている事がほとんどどだと思うな、ピクは」


「え? どんな風にさ、ピクちゃん」


「ムフッ、正しくはこうなんだよ~」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ×【(てき)を知り己を知れば百戦殆からず】


 ①(かれ)を知り己を知れば百(イクさ)(ほとん)(ど)からず


 ②かれをしりおのれをしればひゃくイクさほとん(ど)からず


 ③かれをしりお・のれをしれば・ひゃくイクさ・ほとん(ど)からず


 ④かれ()しり()()れをしれば・ひゃくイクさ・ほとん(ど)から()


 ⑤かれおしりを・ほれをしれば・ひゃくイクさ・ほとん(ど)からさ


 ⑥彼お尻を・掘れを知れば・百イクさ・殆ど空さ


 ◎【彼お尻を掘れを知れば百イクさ殆ど空さ】


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「あるじっ、これが正解だよっ!!!」


「いやいや、いいから。俺にとってはどっちもガチで同じだから!」


「あっ~、そんな事いってると薄い本持った腐に攻め込まれるよー」


「どっからだ!」


「ピクが召喚します」


「マジやめてっ!」


「男尻輪姦す~」   [正]

(おとこしりまわす~)[正]

(おことわりします~)[誤]

(お断りします~)  [誤]


 ヤバイッ!! ピクちゃんの瞳から何時の間にかハイライトが消えている。

 これに関しては海より深く山より高い隔たりが俺とピクちゃんの間に存在するな。


 触らぬ神に祟り無し。

 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらを、だ。

 三猿なども類似した意味として取れるのではないだろうか。

 そして、ここを目にした幾人かはカリギュラ効果により蠢く闇に囚われ呑まれてしまうのだろう。

 くわばらくわばら……


 ――おっと、そっ、そんなことより、これはもう食い物で釣って話を逸らし、ピクちゃんを正気に戻してガラをかわすしか手は無さそうだな!


「ピ、ピ、ピクちゃんサマ。そ、それよりも、それよりもですね! 少しだけ湖の様子をうかがってからログハウスへ戻って晩御飯にするなんて事を提案したいのですけど。ど、どうでしょう」


「ハッ!? 晩御飯! あっ、あれ? あるじ。ん~……今ピクに何か降りてきて「いやいや、大丈夫。キノセイダヨ」」


「ん? そなの」


 少し感じている違和感に首をコテっと傾げながらもニコニコと俺を見つめてくるピクちゃん。

 こ、コレは……無限図書館内蔵書の禁書目録が必要だな。危険すぎるゾ薄い本。


 正気に戻ったピクちゃんは湖面上の空中で再び大ハシャギだ。

 飛行高度を2メートル程度にまで下げ、岸から約500メートル位の範囲で見て回る。


「凄い凄い、すっご~い! 語彙(ごい)が単純になっちゃうよっ。すっごい綺麗だよ~。こんなに岸から離れているのに湖底が薄っすら見えるぐらいに水が澄んでるよっ。広くて対岸がただの目視では見えないよ」


「うん、これは凄いな。俺は綺麗な景色とか見ても感動した記憶はほとんど無いんだが、この巨大湖の美しさ雄大さには背筋がゾワゾワして鳥肌たったかも」


 周囲に鬱蒼(うっそう)と茂る森林の深緑、透明度の高い湖の若草色(わかくさいろ)、そして徐々にだが日が暮れ始めて夕焼けの赤みがさし変化していく色彩・光彩・グラデーションには、えも言われぬものがある。


「あっ、そうだ、あるじ~、後でサテラちゃんにコンタクトした時、湖の大きさと形も調べようよ」


「そうだね、この異世界に来てから視力がチートで物凄いことになっているはずなのに、対岸が影も形も見えなほどの広さだしね」


 鷹の目や千里眼などの遠見系スキルでむこう岸を見ることは可能だけど、湖の全体像も知りたいしな。


「あははっ、見て見てあるじ~、この湖の水棲動物達ってなかなか優秀かも。色んなスキル駆使してピクを狙ってくるよ~」


 傍目(はため)にはピクちゃんが、とてもおだやかな湖の水面でチョンチョンと波紋をおこしステップを踏みながら舞っているようにしか見えないが、実際はピリピリとした緊迫感でわずかな切っかけにより暴発しそうな空気で周囲が張りつめていてる


「うん、透過・屈折・隠蔽・偽装・迷彩・潜伏・遮断・加速とか、お前ら忍者かってくらいに隠密系スキルの見本市だね」


 しかし、ピクちゃんは微妙に間合いをずらしたりはずしたりと、狩人たちに動く機をあたえない。

 また、水棲動物達はお互いにお見合いをして動けないような()をとられ完全封殺され沈黙する。


 こうして湖面上を飛行し終えてログハウスに戻り今日の散策は終了した。


「はい、とうちゃーく。お疲れ様でしたピクちゃん」


「たっだいま~、あ~楽しかった」


「ピクちゃんは晩御飯のリクエスト何かある?」


「う~ん、今日は和食な気分かな。何がいいかな~」


「じゃあ、ピクちゃんがさっき森の中で飛び回って採取してた山菜や他に食べられそうな素材を使って天ぷらメインで、食材ストックからは天ぷら用魚介類・刺身・焼き魚・煮物。おっと、茶碗蒸しは外せないな。こんなんでどう?」


「ウッハ! あるじ、それ凄くいい考えだよ! 板前さん、それでお願いしますっ」


「りょうかーい。じゃあ、準備始めるからその合間にサテラちゃんとコンタクトして広域簡易マップよろしく」


「は~い。サモン! サテラちゃん!」


 早速ピクちゃんは衛星海月(えいせいクラゲ)のサテラちゃんを召喚して、マップを作ったり念話っぽいので雑談をしたりしている。


 俺の方はディメンションルーム内のプライベートキッチンで複数調理を同時進行させていき、予定どおり19時を少し過ぎたころにはほぼ準備が完了した。

 最後に天ぷらはピクちゃんの目の前で揚げてハフハフ言いながら食べてもらうために、ログハウスのキッチンにカウンター風で最終セッティングをする。

 こういう給仕と調理を同時に行う場合に、アイテムボックスの時間停止保存領域がマジ便利。


 では、そろそろ揚げ油を火に掛けピクちゃんを呼ぶとしよう。


 ◆

 ◆

 ◆


「おいおい、お前んとこのあの2人なんとかしろよ」


 そこは高位多次元世界の神と呼ばれる者達の中でも位階上位者達数名が緊急招集に応じて集会を開くとある一室。


「むっ、無理っ! ムリムリ無理っすー、ムリッ。カンベンしくさい~」


 上位者の中でも中堅の存在である一柱の神が、今まさに吊るし上げを食らっているところなのだが、この者にとっても傍迷惑なうえに、いいとばっちりであった。


「多次元宇宙すべてにおいて各々の世界樹がえろ~事になっと~は、あやつら原因で間違いな~し。今回は悪影響ではなかったちゅうのは結果論じゃしのお」


 んなこと言われたって、そもそもどこぞの世界から突然転移して来たと思えば神級ドラゴンを瞬殺するわ、すざまじい存在力を内包する秘赤石を創造するわで訳分からん状況で、やつらが元居た世界の担当神は名乗りでろやゴラァッーー、今ココって感じなのだ。


「かろうじて警告は発してみましたが、あんなのどうしようもありませんよ。正直わたしの手に余ります」


 威石解析最後に表示されていた“※おまいらっ!! 何してくれちゃ&%$#――”のことである。


「はっ! ビビリよってからに。直接ガツンと行ったれやっ、ガツンと」


 威石の膨大な力は認識していても、当事者でなくじかに関与しない周囲の無責任な神々が、行け逝け・殺れ遣れ・かませ噛ませなどと面白おかしく(はや)し立ててくる。


「無茶言わんで下さい。単独で直接接触なんてそんな危険は冒せませんよ。もしコンタクトしろと言うならば今この場でアプローチしますが、確実にこの場所を逆探知して、間違いなく乗り込んで来ますね。そのとき皆様が責任を持って対処して頂けるのなら(やぶさ)かではありませんが、どうしますか?」


 中間管理職がごとく、上から叩かれ下から突き上げられまくったその一柱が、ついに責任丸投げで全員を巻き添えにする方向へ話を進めようとした瞬間、マズい気配を察した最上位の三柱の内の一柱が場を取り成すようにボヤく。


「あ~、え~っと、まぁなんだ、ほれ」


 その途端に今まで散々好き勝手(かって)言っていた連中が行儀良く声を揃えた。


「「「「「「「様子見で!」」」」」」」


「おいっ!!」


 神といえども我が身可愛い。


 傍観・日和見・経過観察で、あっと言う間に満場一致だ。


 既得権・利権は大好物だが無用な責任は食中り(しょくあたり)の元である。


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