10年を振り返る
遅くなってすみませんでした。
2月10日には完成していたのですが、最終話と連続させたかったのでここまでずれ込みました。
あの日、雑魚神を叩き潰したあと詫びを入れにきた邪神をもういいからとっとと帰れと追っ払い、そこから10年ほど時を早回しして、めぼしい出来事を抜粋する。
一日おきに出る東行きの駅馬車の出発日時に合わせて迷宮都市へ戻った。
だが、またしてもスンナリ予定どうりとはいかないようで、街にしばらく滞在することになる。
ギルドへ顔を出した途端ギルドマスターに奥の個室にへ引っ張り込まれ、入ってみるとこちらから聖王国へ向かうまでもなく聖女のほうから俺たちを訪ねてきていた。
何事かとよくよく聞いてみると、勇者君の行動に振り回されてトバッチリを喰らうくらいなら、陛下による密命として稀人絡みで迷宮都市へと訪れ、俺を懐柔するフリでもしていたほうがマシらしい。
「あ~、でも俺らは探索者として迷宮都市での活動はしてなくて、拠点も別の場所にあるから、ずっと一緒に行動をとるのは無理なんだけど」
「わしんとこで、しばらくは預かることになっておるから大丈夫じゃ」
「そうなんだ。そういえばマスターって一人暮らし? 子どもとか居るのか?」
「どっ、どアホがっーーー! わしをどう見れば子持ちに見えるんじゃっ、アアンッ」
「いや、そんなムキにならんでも、ちょっと聞いただけじゃん」
「なるわいっ! おいっ、ピクよ、こやつ、アールジのヤツは一度キッチリ教育し直さんと、そのうち絶対に背後から刺されよるぞ、いや、むしろワシが刺すかもしれんなっ、うん」
「キャハハッ、だよね~、ピクも薄々そんな気がしてたよ~」
プリプリしながら威嚇してくるマスターはほっといて聖女へ声をかける。
「じゃあ、せっかくだし多少は聖女さんに付き合うようにするよ」
「は、はいっ。よろしくおねがいします、アールジ様」
「これはこれはご丁寧に。こちらこそよろしく、聖女さん」
それからすぐにと言うわけではなかったが、聖女さんと何度か会っているうちに、クチは災いの元と言う言葉を理解していて、言っていいことクチにしてはいけないことを弁えている女性のようなので、俺たちの転移での移動に同行させてあげたりもしている。
それから半年ほど迷宮都市で過ごしてから聖女さんは聖王国へ帰っていったが、彼女にとってチョットした息抜きの休暇にでもなったのならなによりだ。
聖王国を訪れた際には聖典の原典をお見せできると思いますと言ってくれたりもしていたのだが、俺たちが貴族と一悶着おこしたりしてその機会は無くなってしまう。
聖王国自体ともどちらかと言えばあまり良い関係は築けなかったな。
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大陸南部の情勢はと言うと、小さな紛争はあちこちで起こっていたのだが、王女ちゃんを送り返してから7年後には完全な戦争状態に突入する。
俗に南部統一戦争と戦後は呼ばれ、約3年で大勢は決するのだが、なんと戦勝国側の旗頭はあの王女ちゃんで、おまけに横には13歳ちゃんと他の3人の姿も見ることができた。
開戦から4年で一応の決着を見るのだが、反抗勢力の散発的な抵抗はそれからも続き、完全な統一となるのには終戦から10年ほどかかる。
開戦前に王女ちゃんの父上である国王が突然訪ねてきて、俺とピクちゃんに協力を打診されたが、俺らが出張らないとどうにかできないなら最初から戦争なんか始めるなよと言うと、そりゃそうだと国王はあっさり要請を取り下げた。
現地人たちの戦争に俺とピクちゃんが参戦するということは、幼稚園の砂場で園児たちが陣地とりをしている横から、重機をつかって強制的に整地するようなもので、馬鹿らしくてやってられん。
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この世界で俺とピクちゃんのスタンスは、誰かが気づかずにヤバい方向へ進んでいて死が確実な場合、未然にその迂回ルートを作ってあげて生き残る可能性を作ってやる程度のことはしてやる。
なにか事が起こった場合、当事者たちが自力でなんとかできないのなら、わざわざ首突っ込んでその流れを変えることはしない。
だが、大きな犠牲を払ってでも自分たちで何とかしようとしていて、そしてそれを何とかできるという先が見えるのなら、犠牲を大きなから小さなに抑える程度には手を貸す。
まあ、なんでもかんでも首を突っ込んでいって、一々でしゃばったりはしないってこった。
アッ、ごめん、幼女は――いや、子どもは助けますです、ハイッ。
そんで、なぜ今さらこんな説明を改めてしたのかというと、俺とピクちゃんがこの世界へ訪れてからちょうど10年目だったろうか。
大陸北部側に位置する西の国は、ピクちゃんが消し飛ばした山頂の跡を南部への新たなルートにと大きな期待を寄せていたのだが、聖王国によって完全に抑ええられたうえに大陸南部での工作にも失敗してしまい、さらには南部統一戦争が終息へ向かいつつあることに対する焦りもあったのだろう。
八方塞を打開する手立てが無い状況に業を煮やした挙句、大陸西端から逆時計回りで大樹海へ進行、そしてモンスターや魔獣の大氾濫、スタンピードを引き起こし、南部王国滅亡の二の舞を演じるかのような事態におちいってしまう。
そして当然ギルドに入る支援救援要請、だけどな~……
「アールジ、そしてピクよ、手を貸してもらえんだろうか」
「駄目だな。俺らがしゃしゃり出ていって手を貸す理由がないし、マスターだって俺らが動かないって分ってるだろ」
「だよね~。南王国滅亡っていう前例があるのに、今回の事態でこの有様だもん。喉もと過ぎればってヤツだと思うよ、ピクも」
「マスターだって言ってたじゃないか、バカは害悪だってさ。一般の人たちが道連れで一蓮托生ってのは可哀想かもだけど、今まではそのバカ国の庇護下にいたわけだし、外から視れば国民性と取らざるを得ないな」
「マスターさん。周囲の国まで被害が波及しそうなら声をかけてよ。その時はピクも手伝うからさ。ねっ、あるじ」
「致しかたなしかの。西の国は裏でもなにやら悪さをしておって、最近の動向には少々どころか目に余ることもたびたびじゃったしの」
こうして西の国は滅亡かと思われたのだが、ここで一発ドでかい花火をぶち上げたのが、あの金ぴか勇者君だった。
やったよ、やりやがったよ、アイツ、西の国壊滅をギリギリのところで踏みとどまらせ、スタンピードを抑えて踏ん張って見せやがった。
もちろん聖女や周囲の協力なくしては成しえなかっただろうが、ただの馬鹿ではなく少し頑張る馬鹿だったようだ。
数年後、西の国は分裂解体となり、南部小国郡のように各地方の領主たちが国としての体裁を構えることになっていく。
だが、少なくとも彼等の中では真の英雄である勇者君が存命のうちは、一度たりとも目立った紛争が起こったことは無く、これについてはヤツの功績なのは間違いないだろう。
最終話もすぐにアップします。
よろしくおねがいします。




