雑魚でした
「もう何でもありじゃのう、だから稀人ってヤツは」
「いまさらだな。それに偶然にもこの迷宮都市に2組の稀人が同時に訪れて、偶発的に戦闘が発生したなんていう奇跡を信じる間抜けでもないだろ?」
「まあの。どこから情報を得たのかキッチリ吐かせんとな」
「ああ、それだけは俺らにも教えてくれ。あとはマスターが上手いこと利用できそうなら、このまま所有権をそっちに預けちまうけど、ギルド的に面倒なことになりそうなら、元々の殺生与奪権は獲物を狩った者にあるわけだし処分は任せろ」
「拷問でもするんか?」
「いいや、俺は死霊術も使えるからキュッっと絞めて使役して喋らせたあとに廃棄する。あんなクズを生かしておく意味はないだろうから、世のため人のために泣く泣く手を下さなくてはならないな」
「辛らつじゃな。じゃあ、わしも頑張って有効活用を試みるかの。掛け金が自身の命と知れば多少は生きることへ真摯に取り組むようになるじゃろ」
おっと、俺とピクちゃんが転移で突然別の場所へ飛ぶ可能性があることを、マスターに断りを入れとかないとな。
「マスター、俺らの姿が突然消えても、まあ、慌てずに待っててくれ」
「なんじゃ藪から棒に。意味がわからんぞ、どういうことじゃ」
「ピクたち黒幕を潰しに行くために転移で飛ぶ可能性があるんだよ~」
そうこう言ってる間にリンクされたのを感知した。
強奪もちの稀人が見たものをそのまま遠距離に居る何者かが見ることができる、遠見系魔法の眼飛ばしが付与されていた目に接続があったので、マスターに手を振りながらピクちゃんと2人でリンクを辿り転移して強襲する。
「呼ばれず無理やりジャジャジャジャーンッ!」
「キキキッ、貴様ッ、神である我が寝所へ許しなき侵入、無礼なる蛮行、死をもってしてあがなえいっ!!」
「いや、とつぜん自分の手の者をけしかけて喧嘩売った相手に、無礼もクソもね~だろ、死ねっ」
「ツッ! ――、……」
自称神をぺチッって感じで潰して消滅させてから目的の魔石、もとい魔力石に対しての神力石だな、それと核を手に入れた。
周囲を探知精査してみると、ここは同じ世界だが通常空間とチョット違う高位の次元で、ゲームで言えばクリア後に進入可能となるエクストラマップかエクストラダンジョンって感じか。
懐かしい雰囲気だなあ~この場所と、VRMMO時代の大型アップデート前に入り浸ったEXマップを思い出す。
「あるじあるじ、居るね~、他にも威石の素材にできそうな存在力を持った連中が」
俺たちが生ゴミの元締めを駆除したとたんに、気配を極力抑えて息をひそめたが、転移してきた瞬間にすべて感知済みだから、無駄な努力だと言っておこう。
「ピクちゃん、今ここで威石を創って見せてやろうよ」
「ムフッ、いいねいいね、さっそく創って見せ付けよう」
周囲の隠れたつもりになっているヤツラへ、威石を創る際にどれほどの膨大なエネルギーがつぎ込まれるかを感じ取らせる、警告の意味を込めてのデモンストレーションだ。
そして出来上がったものはこれになる。
純威石(小):膨大な力を内包する純石
力のある~……以下同文
確かに黒龍から創ったものよりは、存在力の大きさと密度だけなら上だ。
上なんだが何だろうね、このガッカリ感は……仮にも神って名乗ってたんならもっとなんかこう、バァッーーーン! っと凄いものを期待したんだけど。
「う~ん、どうしようピクちゃん。とりあえず1個あればいいか」
「……この程度でピクたちに直接喧嘩売ってくるって、もう処置なしってかんじだよ。馬鹿は死ななきゃ、あ、滅んだね」
実際、勇者君レベルの者が3人居れば、どうにかできてしまいそうな雑魚神だった。
「シンジュちゃんの所みたいに別の世界ってわけじゃないし、もうこの空間にはいつでも転移して来れるから、ギルドマスターが騒ぎ始めないうちに帰ろっか、ピクちゃん」
このフィールドは神階(仮)とでもマップ上にて名付けておいて、用も済んだし再びギルドの個室へ転移する。
「「たっだいま~」」
「ぬしら……もう、わしも細かなことは気にせんことにしたわ」
◆
◆
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邪神の俺が、この世界に一緒に逃れてきていた1柱への手がかりを辿っている途中でそれは起こった。
すざまじい力の奔流が一箇所へ集約されていき、それにつれて膨大なエネルギーの螺旋が爆縮を繰り返しながら密度を上げていく。
そしてその中に一瞬、そう、一瞬だけだが俺は気配を感じ取ってしまう。
今はまだ、この次元位階では会うことのあるはずがない、かつて目にした恐怖の存在を。
「……嗚呼、終わった……終わっちまったよ、クソッ」
どっかの馬鹿がチョッカイをかけて逆探知でもされたのか、ピクえっくすをこの次元へ呼び込みやがった。
別世界へ転移で退避なんてのは、神と言えども容易くおこなえない。
そしてこれだけ場の力場を乱されてしまえばまず不可能だ。
もう、こうなってはジタバタしても始まらないので、ボケどもが会合をひらく場所へ向かい、現状の把握だけしておくべきだろうな。
俺が会場へ顔を出すと、中位以下のヤツラは失神卒倒して倒れ付しており、いや、意識を保っていられたのは俺と同格の2柱と最高位の2柱、あわせて4柱だけで、他の連中は役に立ちそうに無い酷い有様だ。
「よう……取りあえず無に帰してはいないようじゃね~かよ、ううん。んで、感想は?」
今感じ取った自分たちの理解が及ぶ範疇には収まらない恐るべき現象を思い返した4柱はブルッと全身を震わせて、ぶり返す恐怖を振り払うように言葉無く首を左右に振ることしかできずにいる。
落ちつくまで待っていると最高位の1柱が自戒の念のこもった雰囲気で俺に語りかけてきた。
「あなたからの警告を蔑ろにして甘い認識しか持たずに、まったく危機感の無かった私たちを……哂ってください」
「ふんっ、俺だってなあ、お前らにホレ見たことか、言ったとおりじゃねえかって言って、小バカにしながら笑い飛ばしてやりてえよっ。しかしなあ、全っ然っ笑えねーわ、これ、この惨状、ほとんど失神全滅って感じで死屍累々じゃねえかよ」
「「「「…………」」」」
こりゃあ、いよいよ俺も覚悟をきめにゃあならねえだろうし、腹くくるか。
「チッ、しゃあねえな、ピクえっくすがどんな腹積もりなのかを聞きに、俺がじかに会いに行って、飛んで火に入る夏の虫になってきてやんよっ」
「いや邪神殿、そこはせめて虎口へ向かうと言ってくだされ」
「くう~、ボケてみたあとに、スルーされたらどうしようかと思ったぜ。今のツッコミができるなら頭は回転してるんだろうし、そこらに伸びてる奴等をキッチリまとめあげて、くれぐれも余計なことはさせるなよな」
そう言ってピクえっくすの元へ向かいながら思うのは、俺って邪神だよ、悪神、悪い神様って立ち位置、それがなんで後は任せろみたいな流れになってるのかだった。
おかしいよね、絶対に。




