2度目は……
よろしくおねがいします。
「うわっ、は、はなせっ、はなせぇぇっーー!」
「あ~、ちょっと落ち着こうか」
「なんだよ~、取ってないんだからいいだろっ」
「うん、スリの件はどうでもいいんだよ」
「じゃあ、なんで捕まえるのさ」
「いや、仲間とかが居るんなら、そいつらのところに案内してもらいたいんだ」
「なっ、お、おれはっ、仲間は売らねーぞっ!」
「おっ!? カッコイイこというじゃん。坊主、気に入った。俺からの仕事、依頼をうける気ないか?」
「えっ!」
「ちょっとは落ち着いたか? 手、離すぞ。逃げないで話きいてくれよ」
「う、うん」
「じゃあ、あらためて説明すると、俺とピクちゃんは昨日この迷宮都市に着いたばっかりなんだ。そこで考えたのが、この都市のすみずみまで知ってそうな坊主やその仲間にアドバイザーと情報収集の任務を依頼するということだ」
「あるじあるじ、この子、女の子だよ」
「おっと、失礼。嬢ちゃんか」
「あ~、いや、坊主でいいよ、おっさん。女ってなるとメンドウ増えそうだし」
「さ、さいですか……お、おっさんね」
「きゃはははっ、あるじ、ププッ」
そこ、ピクさん、うるさいです。
「なんだよ、こまけぇーこと気にすんなよ、おっさん」
「うん、まあそうだね。それでどうかな?」
「みんなに相談してみねーと、分かんねーけど、たぶん依頼をうけるよ」
「そっか、ありがと。報酬とかはどうとでもなるけど、恵んでもらいたいわけじゃないだろ?」
「ったりめーじゃん。きっちり仕事分の対価でもらうさ」
「よしよーし。とりあえず付け届けとして串焼き人数分を渡そう。何人だ?」
屋台へむかいながら人数を聞く。
「えっ、いいのか? 8人だけど」
「おう。んじゃ、おやじさん、16本頼むよ」
「まいどー」
串焼きを坊主改め、ちびっ子にわたす。
「ほい、じゃあ冷めないうちにコレを持っていって、お前らのリーダー? ぽいのに交渉してきてくれ。これはその手間賃込みだ。結果を知らせてもらう場所と時間は――」
場所と時間は――ちびっ子たちが安全を確保できるだろう場所の、自分たちの住む区画の入り口付近にして、時間は明日の午前9時に決めて別れた。
依頼を請けない場合は姿を現さず、請ける場合はリーダーとちびっ子の2人が顔を見せる手はずになっている。
今は17時ごろだろうか、迷宮ギルド内に居た時間はそれなりの長さだったので、今日の宿を先に決めてからこのあとのことはピクちゃんと相談だ。
「あるじあるじ、今日はどこ泊まるの?」
「そうだなー、どこか適当に外観でピンッときた場所で「居たっ、ヤツラだっ!」お?」
顔だけ向けて肩越しに後ろを見てみると、なんか3人の男が現れて、ん~、その中の1人には見覚えがあり、昨日ふところをさぐりにきて広告塔になってくれたヤツだな。
「オイッ、止まれっ、お、お前っ、キサマだキサマッ!」
その連れで兵士ぽい初見である2人のうち1人が、肩をつかんで俺を振り向かせようとしたのだろうか、いきなり手を伸ばしてくる。
「まっ、待てっ、不用意に――」
「止まれといっグギャアァッーーー!」
ギルドに居たときや、ちびっ子が接触してきたときは解除していたが、今はふたたびまとっている結界のショックをまともに喰らい悲鳴をあげるアホ1匹と、その悲鳴にビックリして飛びあがり、急いで5メートルほど距離をとってからもう1人の連れが俺らにがなり散らしてくる。
「きっ、キサマッ、抵抗するかっ、俺た、カヒッ、ヒッ、ヒィッーーー」
だがその男もピクちゃんからまともに威圧されて、息を詰まらせながら腰を抜かしてへたりこんでしまった。
自分の連れてきた男2人が一瞬で無力化されるのを見たスリ男は、すぐさま逃げようと背をむけるが、電子レンジで生卵を加熱して爆発させるのと同じ要領で、ひだり足の膝から下を爆破して吹っ飛ばす。
「ギャァァァァッーーー!!!」
「うるせえよ」
絶叫を無視して今度はみぎの肘から先を爆破した。
まだ、もう少しだけ生かしておくために魔法で止血治療だけして、静かになるように鎮静効果のある精神干渉もちょっとだけして放置。
そして、なんだなんだと周りに集まってき始めた野次馬にも聞こえるような声の大きさで、兵士みたいな2人に質問する。
「なあ、スリ男に鼻薬を嗅がされてしゃしゃり出てきた兵士っぽいお前たちに一つ聞きたいんだが、その腰にぶら下がっている物って何だ? 俺には剣にしか見えないんだが」
俺はショックを喰らって朦朧としている片方の男のケツを蹴っ飛ばして、シャキッとしろっと意識を覚醒させてから、ピクちゃんに威圧されたが、かろうじて意識を保っている兵士の片割れに答えるように促がした。
「……お、俺たち、は、たのまれ、剣……つかう、なんて……」
「お前ら、悪意全開で絡んできてそんなつもりは無かった、だあっ!」
「ヒッ」
「あのさ、俺らは昨日この街に初めて入ったからルールとかに詳しくはないんだが、この迷宮都市では背後から切りつけられないと武器を抜いてはいけないのか? 攻撃を受けてからじゃないと反撃してはいけないのか?」
野次馬にまぎれている探索者や冒険者らしき数人に視線を流し問いかける。
当然だが全員、そんなわけねぇ~って感じでアホこと聞くなと半笑いだ。
そして、警告として周囲の人間にもはっきり聞こえるように、手足をふっ飛ばしてやったスリのおっさんに語りかける。
「アンタさあ、最初のショックで懲りておけばよかったものを、わざわざ寿命縮めにくるなんて頭悪すぎだろ。昨夜の時点でおっさんを捕まえるのなんてワケなかったんだと、なんで考えが至らないんだか。俺も奇麗事ばかり言うつもりないし多少のおイタに目くじらを立てたりはしないが、武器もちの仲間を呼び込んじまったら笑って済ますわけにはいかねえわな。あんたが連れてきた2人は道連れでトバッチリもいいとこだろ」
俺はピクちゃんに耳打ちして残りの2人をまかす。
ピクちゃんはニタァ~っと人の悪い笑顔で2人に近づいて1人づつひたいを触りながらコソコソっと兵士に話しかけた。
その途端、2人兵士は傍から見ても分かるぐらい全身をガタガタと震わせはじめる。
「じゃ、スリのおっさん、この兵士2人に釘を刺すのにお前の死体を使うから、そろそろ良いぞ、死んで」
そう言い放ち、首をガッっと片手でつかんで吊り上げる。
「たっ、たすけ、もぅ、あんた、ら……見逃し、グゥッ」
「なに言ってんだ? もう、一回目は見逃してやっただろ。じゃあな」
首をボッキリ折ってむくろとなったスリ男を兵士2人の前に投げ捨てて質問する。
「ではお二人さん。お前たちにはこの先の選択肢が2つある。1つ目、逆恨みで復讐しようとして返り討ちにあったバカな犯罪者の亡骸を回収して処分する。2つ目、そのゴミと一緒に仲良く3体の死体となり並ぶ。好きなほうを選んでいいぞ」
「ひっ、ひとっ、ひとちゅ……」
「おお~っと、これは意外だゾッ、2つ目を選ぶとわ!」
ちょっと、喝っ! ってみた。
「「ヒッ、ひとつめでおねがいしましゅっーーー!!」」
「あいよ~。いちおう言っとくけど、あんたらにとっての、このスリ男を見逃してやった1回目ってのが今回だ。拾った命を無駄にするなよ、ん?」
ガクガクと首がもげるかと思えるほど上下にふりながら頷いている2人にピクちゃんも話しかける。
「街の中でよかったね、おじさんたち。ピクやあるじに街の外で同じことしてたら、声をかける前に死んでるよ~」
「そうそう、疑わしきは全殺しってことだ。敵意や害意の持った相手の言い訳なんぞ聞く意味ないしな」
兵士の2人、あ、いちおう本物の街の衛士らしかった、ヤツラにゴミ処分をまかせて、宿を探しに歩き出そうとすると、一人の男が俺に話しかけてきた。
「な、なあ、あんた、ちょっと聞いていいかな」
「ん、ああ、構わないよ、何? だけどあんた、度胸があるのか無謀なのか、もし俺が手当たりしだい殺しまくりの快楽殺人者だったら、あんた死んでんじゃない?」
「あははは、まあね。それでも、さっきの不良衛士どもにアンタの相棒の妖精がコソコソって声をかけた時の、あの2人の怯えようが尋常じゃなかったから何て言ったのか、どうしても聞いてみたくってさ」
「ああ、ピクちゃんのアレね。どれどれ――うん、あんたは魔法の心得がありそうだから、心配ないな」
「ああ、多少だけど。でも、どういうことだい?」
「さっきの衛士はさ、魔法に対する抵抗とか耐性がほとんど無いんだよ。そういう無防備なヤツの考えとか記憶とかは、ひたいにポンっと触ればリーディングで読み放題なんだよな。んで、やつらの家族・恋人・知人の名前、住んでいる場所なんかをズラズラっと言いならべて、とどめに全員みちづれか~って言うだけだな」
「うわっ、えげつなっ! そりゃ、なっとくだわ~」
男に無防備なヤツには、っとミスリードを入れながらタネあかしをしてやり別れる。
もうなんか今日はスリ男のせいでケチが付いたので、適当な宿を取り部屋へ引っ込んだ。
明日になればさっきの1回目はショックで2回目はって話が広まって、俺たちの周囲も多少は静かになるだろう……なるよな?
ピクちゃんにサテラちゃんを召還してもらい、寝る前に迷宮都市を中心にした広域マップ用のデーターをおねがいしておいた。
翌日、約束の場所へ時間のすこし前に行くと、すでにちびっ子とその横に男の子が1人、たぶんあれがリーダーなのだろう、が、待っていた。
チートな聴力で聴き取れた会話では“おいおい、あのおっさんと妖精に手え出したのかよっ、お前、よく無事だったな……うん、そうだよ、手をつかまれて捕まっちゃったけどね~、あとは怖くなかったよ……おめでてぇ~な、ある意味最強だな、お前は……なによっー! プンプン”っと、こんな感じで聞こえてきた。
「おはよう、お前さんがリーダーかな。俺がちびっ子に仲介を頼んだアールジってことになっていて、そっちの妖精はパートナーのピクちゃんだ」
「よろしくね~、リーダーさん」
「んんっ、ちびっ子? なんだそれ」
俺が嬢ちゃんのことをちびっ子って呼ぶのが気になったらしい。
「いや、嬢ちゃんが自分のことは坊主って呼んどけ、女だとバレると何かとメンドーだって言うからな、坊主ってのもなんだしちびっ子ってことにした」
「へ~、わざとススけたかんじにして、髪の毛も短くさせてたんだけど、よく女って見分けられたな。ただでさえこのくらいの年齢だと、どっちか分かんないだろうに」
おお~、こいつの指示だったとは、やるな! リーダー。
「ああ。俺はわかんなかったな。見分けたのはピクちゃんだよ」
かるく挨拶を交わして、しばらくは自己紹介を兼ねたおしゃべりをしながら、昨日ちびっ子に説明した俺たちの事情も改めて話す。
迷宮ギルド内での話しになると――
「うわっ、ギルドのナンバーワン受付嬢に、胸ことを指摘したのかよ、おっさん。よく死ななかったな、おいっ」
「いや、死ぬかと思ったぞ。先にちびっ子やリーダーに会えていて、その情報をもらってたら、もっと上手くギルドで立ち回れたかもしれねーな」
「あははっ、あのお姉さんに、あるじは完全に目をつけられちゃったからね~」
「それにしても、ギルドマスターがエルフで女だったとはな。だけど、ギルド内でそれだけ好き勝手やっといて、迷宮に潜るより前にギルドから生還できたことを先に喜ぶべきだと思うぜ、おっさんは」
「ほら、あるじ、言われちゃってるよ~、ムフフッ」
リーダーは13歳だそうで、南に向かった13歳ちゃんに比べると、随分とはしっこそうだ。
雇う期間は仮入街滞在許可が切れるまでの7日とし、今回は実質4日と半日で、報酬は8人全員ひっくるめてで銀貨1枚(10万)で、前金で小銀貨3枚と銅貨20枚の5万をリーダーに渡す。
どこかに忍び込んで情報を取ってくるような危険な真似はしないように言い含めて、街で噂されているようなことを集めておいてくれと頼んだ。
必要な情報があればそのつど頼むと言って、今欲しい情報はこの街の中では比較的安く手に入りそうな一軒家、いわゆる曰く付き物件ってやつ。
そこまで話が進んだろになると、グループのメンバー全員顔を出していて、今はピクちゃんからアメ玉をもらったりしながら、お喋りにこうじている。
一通り情報をもらって、明日またこの時間に顔出すから噂集めよろしくと言って別れた。
その後のピクちゃんと俺は、リーダーたちから情報をもらいつつ、滞在期限まで商人ギルド、と言うより商人や職人の商売を取りまとめる商業ギルドで、不動産屋やほかの商店とか工房なども紹介してもらいながら街の中で動き回ってすごした。
そして7日目の、ちょうど期日の最終日に、偶然にだが俺たちが積極的に狩りたいと思って待ちに待っていた、シンジュちゃんへのお土産にする威石の素材になりそうな、大きめの存在力を保有する個体の反応がマップ上へ映し出される。
◆
◆
◆
突如として飛来したソレは、宿敵の存在を感じ取れないことに戸惑いを覚えつつも、ヤツの棲家の上空で雄叫びを上げながら挑発を繰り返す。
「アカノケハイガカンジラレヌ。ドウシテ。ナゼナノダ。」
かつてその者は、中央で覇を唱えし神紅へと雌雄を決さんと挑むこと天を切り裂き海を割り山を砕き地を抉りし力を揮う。
だが地の利を得られず守りに徹せられて崩しきること叶わず、時が経つにつれ攻守逆転となり、あえなく敗逃せしめられる。
辛酸の時を過ごしながら傷ついた身体を癒し以前の力を回復、いや、凌駕する力を身体に宿し、ふたたび相まみえんと牙を研ぎながら、虎視眈々と時をうかがっていた中での配下からの報。
中央大地、赤き神竜、神紅の気配消失。
それを聞き、時をおかず飛び立ち、中央大陸の大樹海へと向かう、邪龍と呼ばれる神闇、黒をつかさどりし者。
「ホロビタトデモイウノカ。ソレトモナニモノカニ……」
据わりのよさげな場所へ着地して、しばらく様子を見るために仮の居として腰を落ち着ける。
だが、その場所は主人公たちがBBQポイントと呼んでいて、すでに詳細マッピングが成されており、どれほど遠距離にいようとも瞬時に状況を把握することが可能な位置であったのだ。
補足で一応、貨幣の種類と単位を載せときます。
「閃貨・1億」
「白金貨・1000万」
「金貨・100万」
「銀貨・10万」
「小銀貨・1万」
「銅貨・1000」
「小銅貨・100」
「陶貨・10」
「小陶貨・1」




