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ギルドマスター

「これこれ、またやっているのかお前さんは……しょうがないのお~」


「あっ、マスター、あらやだごめんなさい、つい夢中にまってしまいましたわ」


 オホホホッってな感じで笑って誤魔化す受付嬢。

 奥から貫禄を見せ付け、したり顔でゆったりと姿を現す、いぶし銀じじい。

 しかしそれは変装魔道具を使用している仮の姿で、俺やピクちゃんの目をあざむくことかなわず、真の姿はロリフ――ロリエルフ・女――なのがバレバレだっ!


 そのロリフが手招きして、俺・ピクちゃん・ロリフの3人で端っこに移動してから顔を突き合わせ、受付嬢に聞えないようにコソコソと話をする。


「(オイッ、ギルドマスター! おまえ(かげ)にかくれて出てくる頃合を見計らっていたよなっ)」

「(スマンッ、お前達の尊い犠牲は無駄にはせんっ、あとはこのワシにまかせろ!)」

「(てめえ~、なぁ~にが“このワシにまかせろ”だっ! 全っ然っカッコよくねぇ~からな、RBB)」

「(あるじ、RBBってなに~? どこかの三文字表示に(りゃく)された特殊機関かな。CIAとかMI6とかの同類?)」

「(ろりババァってことだよピクちゃん)」

「(ろっ!)」

「(ろ?)」

「(このわたしをロリババアと呼ぶなっーーー、あ? きっ、キサマッ、なぜ……ろ、いや、ワシの変装を)」

「(あるじぃ~、今この人自分でロ「とっ! ところで!!」リ――)」


「ところで、おぬしたち2人は探索者でもないのに迷宮に入ってみたいと言っておったようじゃが、そうなのか? なんだったら奥の部屋で相談に乗らんでもないがのぉ~、どうじゃ?」


「あ、いいです。帰ろっかピクちゃん」


「うん、そだね。探索者の皆さんバイバ~イ」


 あっさり断り(きびす)を返しさっさと帰ろうとすると背後からガッって感じで肩をつかんで引き止めてくるジジイ改めロリフ。


「のっ、乗らんでもっない! がのっ! ド・ウ・ジャ!?」


 奥の個室に拉致られた――


「お前たちは勇者か?」


 部屋に入って指輪をはずし正体を現したロリフが、俺たちにアホな質問をなげかけてくる。


「あ? 意味が分からないけど、じゃあアンタは初対面の相手からお前は処女か? って聞かれて正直に答えるのかよ。何人の経験あるとか答えるのか?」


 そう聞き返した瞬間、ボンッって効果音が聞えて脳天が噴火して噴煙を上げたと錯覚するほどに赤面するロリフ。


「うっわ、引くわ~、今のはピクでもドン引きだよ、あるじ」


「いやいや、ピクちゃん、このロリフにお前の年齢は幾つだって聞かない俺は今、超絶紳士だと思うよ」


「あははっ、女性は年齢の話をされた瞬間に相手滅殺の免罪符を得るから、あるじの危機察知能力による自己保身だと思うな~、ピクは」


「そうだそうだ、それにそれだ! キサマッ」


「いや、どれだよ、和姦(分かん)ね~よ」


「んなっ!? ニュアンスがエロいのは気のせいか――っじゃなくてどうやって私の変装を見破った!」


「ハァ? 正気か、このエロフ」


「――プハッ! あるじ~、換わっちゃってる。ロリフロリフ、エロフ違う」


「お、お前らな~、その駄目な子を見るような目をやめんか! それでどういうカラクリじゃ」


「フゥ、しょうがないな~、ピクが教えてあげるよ。ロリフさんは渋いお爺さんに変装していたつもりなんだろうけど、仕草が丸っきり女性のそれなんだよね。分らない方がどうかしてると思うな~」


「俺たちは一目見て一発で分ったわ。むしろ今までバレてないとか、なんであんたが思い込んでたのかこっちが聞きてーよ」


「なぬっ! それだけか?」


「「うん」」


「ま、まさか、ここのギルド構成員にも……」


「ああ。いつものおじいちゃんゴッコでちゅねぇ~ってなもんだろうな。ね、ピクちゃん」


「うん。愛されてるね~、マスターさん。プププッ」


「嘘じゃろっ!? ウソだと言ってくれーーー!!」


 ぬわ~って感じで顔を覆いながら真っ赤になって、これからどんな顔してギルド員たちの前にーーー! っとか叫びつつ身悶えるギルドマスター。

 その姿を見て俺とピクちゃんは、顔を見合わせ2人で含み笑いをこぼす。

 このロリフおもしれ(面白)え~。


「えっと、ワシ、ギルドマスター。この変装の指輪で今まで姿を変えてたけど……」


 俺たちが連れられて入っていった奥の部屋の様子をうかがっていた人たちが、変装を解除したまま姿を現したロリフを見た瞬間の反応はというと――


「エェェェッーーー!!! ×(かける)ギルド内に居た人数」


「ぬあっ! ななっ、なななな……」


 驚愕の表情を見せるギルド職員や探索者たちのリアクションで、やっぱり変装はバレてなかったと悟り、ギギギギっと擬音が聞こえそうなほどギクシャクしたブリキのおもちゃのような動きで、俺らの方を振りかえる涙目ギルドマスター。


 あ~あ、やっちゃったね、このロリフさん。


 ズダダダッっと奥に引っ込み変装して、あらためて出直し(でなお)してくると、強引に無かったことにしようとした。


「ふむ、(みな)がんばって仕事に(はげ)むように」


 ――いや、無理だから。


「あるじあるじ、おじいちゃんゴッコでちゅねが現実になっちゃったね~」


 圧倒的要望にふたたび指輪を外すしたロリフは、んキャァ~、ギルドちょ~、イヤァ~ン可愛い~、などと受付嬢たち数人に抱きつかれて揉みくちゃにされている。

 ケハァ~って感じで(くち)から生霊(いきりょう)がはみ出たみたいに白目になって、されるがままになっているが、あれは俺らのせいじゃないよな。


 迷宮ギルドではガイドの依頼を()けてもらえそうにないので、俺が暇そうな探索者たち数人に直接ガイドを依頼しようと話しかけると、ものごっつい貫くような視線が背後から飛んできて、俺が話しかけていた男がビクッっと一瞬硬直を起こす。


「い、いや、俺ら仲間とこれから、し、仕事だから請けられねぇ。わ、悪いなあんちゃん」


 チッ、しっかり俺をマークしてやがる。

 貫通属性の邪眼持ちとは、やっぱデキる女は違うなっ!


「ちょっと、お姉さんっ! 探索者さんを邪眼で射る殺すのヤメテって。みんな俺から目を逸らして依頼をうけてもらえないじゃん」


 今、ギルド内ではロリフにほとんど全員が意識をむけて気を取られてるのに、そんな中で俺たちから一瞬たりとも目を離さないこの受付嬢は、本当にプロフェッショナルだ。


「誰が邪眼持ちですかっ、誰がっ! だから駄目って言ってますっ。 経験を積んだ冒険者の方でないと探索許可は下りません」


「ええ~……せっかく美人さんなのに、ナンカこのお姉さんメンドくさいんですけど」


「それはコッチのセリフですっ!!」


 まだやりあってるって感じで、すでに俺とピクちゃんと受付嬢の会話を聞いている人間はまったくおらず、近寄ってもこなくたった。


「あるじ~、せっかく迷宮都市まで来たんだけど、しょうがないよ。お姉さんも心配して入らせないだけで、いじわるしてるわけじゃないんだし」


「う~ん、それもそうか。今回は諦めようかな。ピクちゃんもそれでいい?」


「うん!」


「あの、アールジ様、ピク様、ありがとうございます。冒険者として経験を積んで、改めて登録にいらっしゃったときは歓迎させていただきますので。もうしわけございません」


 おお~、あれだけイジリたおしたのにこの変わり身とは、さすがだな。


「いやいや、俺も無理言っちゃってごめんね」


「いえ、こちらも画一的(かくいつてき)な返答しかできなくて……ごめんなさい」


「残念だけど、そろそろおいとましようかピクちゃん。この街でも迷宮に入れたらよかったんだけど、まあいいよね。途中でみつけたダンジョンに潜るから。ボソッ(それにしても見事な偽乳だったな)」


「そうだね~。あるじ、行こっ」


「ちょっ、ちょっ、ちょお~っと待ってください! いっ、いまっ、今なんて(おっしゃ)いました!?」


「えっ、見事な偽乳?」


「ち・が・い・ま・す! その前っ」


「途中でみつけたダンジョン?」


「そそそ、それですっ! どういうことなんですか、アールジ様」


「どうもなにも、なんか洞穴(ほらあな)があって、中に小さな部屋がいくつか在って」


「そっ、それから、在ってなんです!? アールジさまっ」


 このへんから誤魔化しながら、山賊のアジトをイメージして受付嬢へ伝えていき話をボヤかしていく。


「ん~っと、テーブルがあって」


「テッ、テーブル?」


「中から、おっさんたちの話し声が聞こえてきて」


「…………フゥ~、アールジ様、それダンジョン違います」


「え、いや、入ってみないと分からないじゃん?」


 そのあとは、あ~ハイハイみたいな感じで話を切り上げ仕事に戻る受付嬢。

 俺がお馬鹿キャラで(とお)したせいか、あっさり追及をやめた――いや、やめる振りか。

 俺が話す気がないとみるや無理に食いつかず引いてみせるとは、つくづく有能な女性だな。

 それに比べてロリフはギルドマスターのくせに……う~ん、まだ抜け殻のままだし今回はノーカンにしておいてやろう。


 ギルドの管理している迷宮には入れないのが分かったので、ギルドをあとにして夜とは雰囲気の違い、商店や露天商などで活気あふれる街を見て回る。

 街での商売のルールは商人ギルドで聞いたほうが早いらしいので、そのうち顔をだしてみよう。


 ピクちゃんを肩車しながらしばらく歩くと、ちょっと目を引くチンマイ(ちいさい)のが俺のふところを探りにきたので、これ幸いと捕まえる。


「うわっ、は、はなせっ、はなせぇぇっーー!」


 ◆

 ◆

 ◆


 その日の夜、ギルドでは2人の女性がかつて無いほどの醜態を晒してしまい羞恥と自己嫌悪に頭を抱えて身悶えた。


 「ふ、不覚だわ――」

 ――ナンバーワン受付嬢なんて周囲から言われていて、自分ではそんな気はなかったつもりだけど、知らず知らずのうちに自惚れてしまっていたことについては弁解の余地ないわね。


 唯一のコンプレックスである胸の偽装を真正面から指摘されて、なんとか平静を保とうとしたけどアッサリ崩されてしまった。

 た、たしかにサイズは少々こぶり、小さ……物足りないのは認めないわけにはいかないけど、けどっ! ペッタンコは言い過ぎでしょっ!!

 頭にカッっと血がのぼり、もうそのあとはあの男の言葉に振りまわされて、いいようにあしらわれて(ころ)がされてしまった。

 だけど、3年間もかけて徐々にカサ増ししていった胸のオプションパーツを今さら手放す勇気もないし、どうしたものかしら。

 それから、最後に言っていたダンジョンってのも気になるわね。

 マスターにだけは彼が言っていた未確認情報として伝えてあるけど、本当なのかしら。

 あそこでしつこく聞いても答えてくれそうになかったし、不特定多数の人間が会話を聞ける状態で話すようなことでもなかったしね。


 「やってしもうた~、やられてしもうた~――」

 ――いきなり変装を見破られて動揺したところにきて、なんじゃあの男の返しは。

 面とむかってお前は処じ、しょ、し、~~~!! クソッ、今思い出しても顔から火がでそうじゃ。

 いまだかつてワシにあんな暴言はいたもんはおらんぞ、まったくっ。

 頭に血がのぼったところに、なんやかんやと指摘しまくられて、それがまた的を射ており、あれよあれよと言いくるめられてしまい、まんまと口車に乗せられて変装を解いたままギルド員たちの前に姿を晒してしもうた。

 はたと気が付けばもう姿をくらましおらんようになっとるし。


 しかも、うちのエースを手玉に取るとはの。

 あの娘があんなに感情をあらわにしている姿はワシでも初めてみたわい。

 こんなことを直接言うと、マスターだってと逆襲くらいそうなので言わんがの。


 おまけに、別の場所のダンジョンときたか。

 さて、どうしたもんか、ん~……どちらにしても、次に会ったときに単独で会話にのぞむは避けるが無難じゃな。

 あっという間に言いくるめられて、何を吹き込まれるか分かったもんじゃないっ。

 クッ、なあ~にがっ、んキャァ~、ギルドちょ~、っじゃっ!!


 投稿間隔が一定せず、すみません。

 

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