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獲ってきた

よろしくおねがいします

「あるじ、ただいま~」


「おかえり、ピクちゃん」


 朝の散策から帰ってき俺のパートナーを軽く紹介しておこう。

 身長2リットルペットボトルくらい、体重400枚入りティッシュペーパー程の、4枚羽を持つパッと見フェアリーっぽい女の子だ。


「肉~、にく獲ってきた。トカゲ~。ドーンってやってゴンてしたら動かなくなって、美味しそうだし食べられそうだから持って帰ってきちゃった」


 いやいやトカゲ違うし、ドラゴンだし。


 赤とおり越して真紅の明らかに普通のレッドドラゴンとは一線を画すレア固体か上位種らしき者の亡骸を、ニコニコしながら尻尾の先をつまんでぶら下げるように持って、地上10メートルほどの高さをふわふわと浮いているピクちゃん。

 もう満面の笑みでこちらを見ながら誉めて誉めてオーラをだしまくってるよ。

 鑑定、っと案の定はじかれたから解析――鑑定の上位っぽいスキル――で見てみると、神竜がどうとか物騒なワードが表示される。


 俺はスッっと目を逸らし見なかった事にしてサッっとウィンドを閉じた。


「やったね! ピクちゃん。今夜は焼肉だ」


「えへへ~イッパイ食べちゃうもん」


「じゃ、そこに置いてくれる」


「はーい」


 ピクちゃんは言われた場所にドラゴンを置いて、いつもの定位置である俺の顔の真横くらいの高さまで戻ってきて周囲をふよふよ漂いはじめる。

 解体を開始して手はじめに逆立てるようにこそげ落とした鱗をピクちゃんに渡してあげる。


「ピクちゃん、ドラゴンの鱗を高熱で炙って鱗せんべいにして食べていいよ」


「うん、ボルケーノッ!」


 ピクちゃんが魔法を発動した瞬間、直径10メートル程の溶岩池が足元に一瞬で出来あがったそれは、かなりの高温らしく溶岩の色も赤じゃなく白みがかっている。


「どあっーーー!! アブ、危なっ」


「えへへ~ごめーん」


 可愛らしく身体をクネクネしながら謝りつつ、受け取った竜鱗を溶岩池にドバドバと放り込んで、さらに術を重ねがけしていくピクちゃん。


「プラズマフレアー、プロミネ~ン」


 オイオイ、むちゃくちゃするなー。

 さらに加熱された溶岩池は、白をとおり越し青白く発光していて、どれほどの高温になっているかまったく想像できない。

 その甲斐あって真紅の竜鱗が結晶化でもしたのか、まるで宝石のルビーのように透明に輝きながら浮きあがってきた。

 それを溶岩池に手を突っ込んで素手でつかんでバリボリ頬張りはじめるピクちゃん。


「ンマッー! ブハァー、ンマンマ、ボハァー、あるじ~おいしいよ~、ボァーー」


 竜鱗をカジりながらウマウマと言いつつ(ほのお)をブハーっと噴きだすピクちゃん。


「はい、あるじにも1枚。一番大きいの持ってきたよ~」


 そう言いながら優しいピクちゃんは口から吐炎しつつ周囲に炎をまとった直径1メートル弱の鱗を持ってきてくれる。


「んー、あるじは猫舌だからチョーット無理かな~。ピクちゃん遠慮せずにどんどん食べていいよー」


「ひゃっほ~、いただきま~す」


 ピクちゃん竜鱗せんべいマルカジリを横目で見つつ、こちらはこちらで色々と準備を進めておく。


 ドラゴンの残り部分をアイテムボックスの作業領域へ放り込み、ボックス内解体スキルを使いササッと片付ける。

 次にフォン・ド・ヴォーじゃなくフォン・ド・ドラゴン? を取る準備をすすめていく。

 まずは土系クリエイトで溶岩の熱を利用したオーブン――ピザ釜の方が近い――を作り、そこに下処理をしたドラゴンの骨と水を寸胴鍋に入れ、ここからはピクちゃんにも手伝ってもらおう。


「ピクちゃん、鍋を沸騰寸前まで加熱よろ。灰汁(アク)も取ってね」


「は~い。サモン、サラマンディ。アポ~ツ、アク(灰汁)


「おおー、魔法でアクをとるか。流石ですお姉さま」


「ムッフ~、まっかせなさい」


 ピクちゃんが召還した精霊が一気に沸騰前までもっていってくれたから、さっそく煮詰めにかかろう。

 じか火で沸騰しすぎたり焦げたりしないように、寸胴鍋のままオーブンにフロート魔法で運び入れて、熱のあたりが柔らかい状態で詰めていく。


 あ、アク取りは小まめにだ。魔法最高超便利。


「あるじぃ~、ピク思ったんだけど、水で煮たぐらいでドラゴンから出し汁取れるの?」


「ああ、ドラゴンの頑強(がんきょう)さや堅牢(けんろう)性は、生きている状態でこそなんだよ」


「そなの?」


「土は土、灰は灰、塵は塵って事だね」


「あ! ピク、それ知ってる。ビンはビン、缶は缶、ペットボトルはペットボトルだよね」


「そう、ゴミはキチンと分別してマナーを守って違う! ナイスボケだよピクちゃん」


「えへへ~、あるじもナイスノリツッコミだよ~」


 ピクちゃんに寸胴を見ていてもらって俺は次の準備をはじめる。


「ピクちゃん、俺は昼飯用に尻尾を背開きでオリハルコンの串に刺して、見た目を蒲焼っぽくタレ焼きで作ってみるから」


 そろそろ昼飯時だからね。


「はーい。あるじ~あっさり塩焼きもおねがいねー」


「あいよ~」


 オーブンの中のフォン・ド・ドラゴンが間に合えば味がもっと引き立つんだろうけど今日は無理か、夕飯には間に合うかも微妙だしな。

 でも塩焼きの風味付け程度には使ってみるのも有りか。試してみるかな。


 尻尾をさばき始めて気がついたけど、根元から真ん中あたりまでは蒲焼にできそうだが、それより先は肉質固めなのでミンチでドラゴンハンバーグ行きだな。

 塩焼きを作りながら同時進行で焼肉のタレにホルモンを漬け込んでいく。

 後日食べる用のホルモンはしっかり漬け込んでそのままアイテムボックスへ仕舞い、今から食べる用は薄味さっぱり風味で漬けてピクちゃんに渡してあげる。


「うはっ、あるじ~、いいの? 焼いて食べちゃうよ。もう良いの?」


「おー良いぞー、今焼き網出すからね」


 溶岩池周囲に土台を置き、ヒヒイロカネ製の焼き網を渡して、横に数種類のタレも置いてあげる。


「味噌ダレ、醤油ダレ、さっぱり塩ダレ、レモン、ニンニク、さあどうぞ召し上がれ」


「ピク行っきまーーす」


 ◆

 ◆

 ◆


 VRMMOプレイ中に偶然創り出してしまった異界門。


 ただの転送ゲートと勘違いし、扉を開き何も考えず無警戒で(くぐ)ってしまう。


 周囲を散策の後にステータスチェックするとログアウトボタンが無くなっている事に気が付いた。


 帰る為の基点となる位置にマーカーも設置し忘れている。


 明らかに現代日本ではない、この訳の分からない世界での自分の今後。


 元の世界への帰還は現時点では諦めていないが実質不可能な状態。


 この状況、他人事だとドキドキワクワクだが自分事だと笑えない。


 これが俺一人だったなら間違いなくパニックに陥っていただろう。


 だが、扉を潜った先で出会った最強の相棒と一緒ならば話は別だった。


 ピクちゃんと二人で異世界観光旅行。


 立ったフラグは折りまくり。


 俺の異世界生活はイージーモードで確定だ。


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