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第七話 卑怯者

「これなら、どうだ!」


 今度はジクザグに動きながら灰崎に接近する。これなら狙いを付けられないはず。


「ふむ、そうきたか。だが、意味はない」


 灰崎はパァンッと手を叩いた。


 ドォォォンッ!


「うるせぇ!」


 俺はあまりの爆音に耳を塞ぐ。これは音の爆発か。鼓膜が破れそうなくらいうるさい。

 こんな音を出して灰崎自身は大丈夫なのか?

 見てみると灰崎はいつの間にかヘッドホンを付けていていた。あれで音を遮断しているのか。

 俺の動きが止まっている間に灰崎がまた指を鳴らした。


「クソッ!」


 俺は再度、柵にぶつかる。これ、普通の人間なら骨折するぞ。

 こうなったら逃げて雨音と合流するか。一対一で勝てる自信はない。勝つ可能性の低い戦いを無理して続ける理由はない。

 俺はすぐに体勢を立て直すと屋上から飛び降りる。


 ドンッ!


 俺は地面に着地すると、すぐに走り出す。


「逃がさない」


 声が聞こえたから上を見てみると灰崎も屋上から降りてきていた。

 馬鹿な。ネイチャーの身体能力は普通の人間と同じ。それで三階の校舎の屋上から飛び降りられるはずがない。

 と思っていると、灰崎の体が地面に着地する直前で減速した。


「な、何それ? 反則だろ」


「音を緩衝材代わりにしただけだ」


 そんなことも出来るのかよ。音って意外と応用力が高いな。

 とりあえず俺は全力で逃げる。


「ギャーー!」


 俺の前から女子が出してはいけない叫び声で雨音から逃げている灰崎妹がいた。何故か猫耳に猫のシッポがついていて可愛い。ビーストはレベルが高くなると、能力の動物に変身することが出来る。灰崎妹は不完全ながら変身をしているということか。つまり灰崎妹は猫のビースト。

 追いかけている雨音はクネクネと嫌らしい手付きと嫌らしい顔をしている。灰崎妹の猫耳姿を見て暴走したのか。完全に犯罪者の顔をしている。

 俺はカウンターぎみに灰崎妹を殴ろうとする。


「ちょ、いきなり何をするんですか!?」


 灰崎妹はその小さい体を使って俺のパンチをくぐった。小さい体には小さいなりの使い方があるのか。


「だって、これバトルサバイバルだろ?」


「こうなったら!」


 灰崎妹は自分の俊敏さを利用して俺の背後に回り込んで背中に乗ってきた。


「はぁ!? 何のつもりだ!?」


 俺はロリコンじゃないから、そんなことしても喜んで灰崎妹の味方をしたりしないぞ。

 にしても本当に軽いな。飯、ちゃんと食べてるか?


「貴方には私の身代わりになって、あそこの変態に襲われてもらいます!」


「ふざけるな!」


 あんな危険人物に襲われるとか貞操のピンチじゃねぇかよ!

 俺はどうにかして灰崎妹を振り払おうとするが上手くいかない。


「おい、灰崎! どうにかしろ!」


 俺は後ろにいる灰崎に助けを求める。俺にプライドはない。自分が助かるためなら誰が相手でも頭を下げる。

 それに灰崎の位置からは妹が邪魔で俺を攻撃できない。


「仕方ない」


 灰崎は雨音に向かって指を鳴らした。


「甘いわよ! ウォーター・ブロック!」


 雨音が水の盾で音の衝撃波を防いだ。何で雨音は能力を発動する前に技名を叫ぶんだろうな? 別に必要性はないのに。


「だったら次はこうだ」


「そんな攻撃が私に……グッ」


 どういうことだ? 雨音は横に吹っ飛んでいる。つまり攻撃は横からされているということだ。まさか曲がる攻撃まで出来るのか?


「音は反響する」


 なるほど。音を校舎に反響させて雨音に攻撃したのか。

 灰崎はその場に適した攻撃方法を使ってくる。かなり戦い慣れている証拠だ。


「グハッ!」


 何だ、急に前から見えない攻撃が。もしかして灰崎の音の衝撃波か。雨音と一緒に俺も攻撃していたのかよ。

 完全に油断していた分、堪える。


「さっきの仕返しです!」


 灰崎妹が俺を蹴っ飛ばして背中から降りる。そして身軽に一回転して地面に着地する。

 俺は蹴られた衝撃で地面に倒れる。

 ん? 何で俺の前に雨音がいるんだ? さっきまで離れた場所にいたはず。


「ちょ、どけ!」


「ごめん、無理」


 俺は避けることが出来ず、雨音を押し倒す形になる。


『こらぁ! 飛鳥ちゃん、何をレクリエーション中にイチャついてるのよ! そう言うのは先生としなさい!』


「イチャついてねぇよ!」


 俺は先生のふざけたアナウンスに思わずツッコむ。どう見ても雨音の自作自演だろ。


「エッチ」


 イラッとしたので俺は押し倒したまま雨音の鳩尾を全力で殴る。


「グハッ!」


 雨音が女子が出してはいけない声を出して気絶する。

 あ、しまった! 雨音と合流して灰崎を倒す予定だったのに。まぁ、いっか。今のは雨音が悪い。

 俺は立ち上がって灰崎兄妹と対峙する。


「さっきより不利になったけど、どうする?」


「そんなのは決まっている」


 俺は覚悟を決めた表情でハッキリと言う。


「イレギュラーとして何か奥の手でもあるのか?」


 奥の手? そうだな。これは正に奥の手だ。


「なぁ、先生! 棄権ってアリですか?」


 ズテッ!


 灰崎妹が急に倒れた。さっきまでの雨音との戦いで限界が来ていたのか?


「ふざけているんですか!?」


 灰崎妹が急に立ち上がったと思ったら叫んだ。情緒不安定か?


『さすがに無理。そんなことしたら、ここにいる煩い先生に殺されるわよ』


 う~ん、無理か。こうなったら次の作戦だ。


「グッ……。さっき食らった攻撃が今ごろ堪えていた……」


 そう言うと腹を押さえながら倒れたフリをする。今まで仮病で何回も授業をサボって保健室で昼寝をしたことがあるから演技には自信がある。


「……本当ですか?」


 灰崎妹が怪しむように言う。そして確認するために俺に近付いてきた。


「う~ん」


「かかったな!」


 俺は無防備に近付いてきた灰崎妹の足を掴んで持ち上げる。

 持ち上げた時に灰崎妹のスカートの中が見える。スパッツか。いや、別に残念じゃないけど。


「ちょ、騙したんですか!? 卑怯者!」


「俺には最高の誉め言葉だ!」


 俺はそのまま灰崎妹を灰崎に向かって投げ付ける。灰崎が灰崎妹を助けた隙に俺がぶん殴って倒す。

 その隙を付くために俺も灰崎に突撃する。だが、灰崎は一切の迷いなく飛んできた灰崎妹を避けた。


「……え?」


「隙だらけだ」


 俺が驚いた隙をついて灰崎が横っ腹に音の衝撃波を放ってきた。そして俺は吹っ飛んで倒れる。


「……普通、妹を見捨てるか?」


「そんなことしたら俺が負けるだろ」


 妹よりも勝利を選ぶか。何て冷酷な奴だ。

 まだ戦えるけど、このまま負けたフリをするか。続けても勝てる自信はないし。


マトモな終わり方じゃないですが、レクレーション終了。

さて次は何をするか。


では感想待ってます。

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