第三話 同居人
「これで自己紹介は終わりね。後、皆に報告することは明日のレクリエーションね」
レクリエーション? さっきリーゼントに言っていたことと関係あるのか? そういやリーゼントの名前って何だったけ? え~と杉本?何か違う気がする。面倒くさいしリーゼントでいいか。
「はい!」
雨音が挙手する。
「何ですか、雨音さん」
「レクリエーションって何をするんですか?」
「それは明日の楽しみです」
先生は挑発するような表情で言ってくる。嫌な予感しかしない。
「じゃあ、明日はレクリエーションがあるから遅れないようにしてね。これで今日は終わり。後は昼飯を食べるなり先生とエロいことするなり好きにしてね」
それだけ言うと先生は帰っていった。
昼飯には早いし先に部屋を見てくるか。ちなみにネオスクールは全員が寮に入ることが義務づけられている。鍵はホテルと同じようなシステムになっており職員室に置いてあるので取りに行かねばならない。そして外出する時は学校に許可を取ってから職員室に鍵を預けないといけない。正直、面倒くさい。
その後、自己紹介中に起きた雨音と先生の俺の取り合いのことをクラスの男子に問い詰められた。俺はそれをムリヤリ振り切って、職員室で鍵をもらってから自分の部屋に向かった。確か荷物はすでに部屋に届いているはすだったな。
「ここが俺の部屋か」
俺の前には106号室と書かれたプレートが貼ってある扉がある。俺は扉を開けて中に入る。
部屋は二人部屋だが同居人はまだ来てないみたいだ。
にしてもシステムだけじゃなくて部屋までホテルみたい作りになっているな。冷蔵庫にパソコン、シャワールームまである。だが一番気になるのは、それではない。
何故、寝床はツインのベッドが一つあるだけなんだ?もしかして一緒に寝ろ、と言うことか?
まぁ、いい。細かいことは同居人が来てから決めればいいだろ。俺は大した荷物もなく昼まで暇だからネットでもして時間を潰すことにした。
「おおっ! さすがネオスクール! 豪華な部屋だね!」
雨音が部屋に入ってきた。何故、女子が? まぁ、この学校は色々な意味で頭がおかしいことは分かってる。異性で同室だったとしても驚きはしない。その相手が雨音だということは問題だが。
「あれ、飛鳥ちゃん? もしかして飛鳥ちゃんもこの部屋なの? いやぁ、これって運命ってやつ?」
「ただの偶然だ」
俺の平和な学校生活は初日から破綻したようだ。憩いの場であるはずの自分の部屋でまで雨音の相手をしないといけないなんて。
「で、パソコンで何してるの? もしかしてエロ画像でも集めていたの?」
女子がエロ画像とか言うのはどうなんだ? それとも最近の女子高生は普通なのか?
「そんなわけないだろ。寝心地の良さそうな枕がないかネット通販を見ていたんだよ」
「自己紹介の時にも言っていたけど本当に寝るのが好きなんだね」
雨音がベッドの側に置かれていた自分の荷物を確認しながら言う。
「こっちは飛鳥ちゃんの荷物かな?」
雨音が隣に置かれていた俺の荷物をいじり出した。
「おい、何を勝手なことをしてるんだ!」
「良いじゃん良いじゃん。これから同じで部屋で暮らすんだから隠し事はなしだよ。……って見事に安眠グッズばかり。他には最低限の着替えだけ」
俺の荷物を見て雨音は呆れたようだ。人の荷物を勝手に見ていて、そのリアクションはないだろ。
「貸さないぞ」
「別にいらないよ。私にもちゃんと安眠グッズがあるからね」
「何があるんだ?」
もしかしてヌイグルミでも持ってきているのだろうか?
「ねぇ、見た限りこの部屋はツインのベッドが一つじゃない?」
「そうだな。それがどうした?」
何を言いたいのかが分からない。
「だったら私と飛鳥ちゃんは一緒のベッドで寝る、ってことでしょ?」
何となく言いたいことが分かってきた。だが俺はその答えを聞きたくない。
「つまり飛鳥ちゃんが抱き枕ってこと」
嫌な予感が当たってしまった。
「……こうなったらベッドに柵でも作るか」
「何で!?」
当たり前だろ。そうでもしないと何をされるか分からないからな。
「まぁ、いいわ。その事は後で考えましょう。ところで飛鳥ちゃんの能力は何なの?」
「秘密」
「え~、良いじゃない。どうせ授業の時になったら分かるんだから」
そうなんだがな。でも、あまり言いたい能力ではない。
「じゃあ、授業を待ってろ」
まぁ、授業になっても分からないと思うけど。
「私の能力も教えるから飛鳥ちゃんの能力も教えてね」
雨音は俺の返事も聞かずに能力を発動する。
雨音の指から小さな水の塊が出てきた。なるほど、雨音は水のネイチャーか。
「次は飛鳥ちゃんの番ね」
雨音の相手をするのが面倒くさいし、こうなったら早めに昼飯に食べに行くか。俺はパソコンの電源を切って立ち上がる。
「あれ? どこに行くの?」
「昼飯」
「私もすぐに準備を終わらせるから待ってて」
「腹が減っているから無理だ」
本当は腹なんて減ってないけど。
そして俺は扉に向かって歩き出す。
「じゃあ、準備は後回しにするわ」
雨音は準備を途中でやめて俺についてきた。何で、ここまで俺に拘るんだ?
ネオスクールにある食堂についた。昼にはまだ早いので人数は少ない。
「あそこの券売機で選ぶのね」
俺達は券売機に並んで順番を待つことにした。
「あれ、クリスマスちゃんとチビッ子」
雨音が後ろを向いたので俺も見てみると、そこには灰崎兄妹がいた。て言うか、クリスマスちゃん? どういう意味だ?
「よく勘違いされるが俺の名前は『聖なる夜』じゃなくて『静かなる夜』と書く」
ああ、なるほど。そういう意味か。後、よく勘違いされるのか。
「私はチビではありません! 少し身長が低いだけです!」
しつこいようだが少しではない。
「ところで二人は同室なのか?」
「当然です! 私とお兄様の絆を切り裂くことなど誰にも出来ないのです!」
ない胸を突き出しながら自信満々に言う灰崎妹。
「もしかして近親相姦とかやってる?」
いや、それはさすがにないだろ。近親相姦とか色々とマズイ。
「やっていない」
「まだやってないですよ」
まだ? 妹の方にはやるつもりがあるのか。色々と危険だな。
そして灰崎兄妹と話しているうちに俺達の順番がやって来た。
メニューはえ~と、わさび寿司にシュールストレミング! 何でそんなものが学食にあるんだ!? しかもキャロライナ・リーパー入りの激辛麻婆豆腐だと!キャロライナ・リーパーって世界一辛い唐辛子だろ。そんなの食べれる奴がいるのか?
それ以外にも変な食べ物がチラホラあるな。この学校は俺が想定していた以上に頭がおかしいらしい。
一応、普通の食べ物もあるな。俺はラーメンにするか。
「私はキャロライナ・リーパー入りの激辛麻婆豆腐にしよう」
「え!? それを食べるのか!?」
「うん。私、辛いのが好きなの」
いやいや、限度があるだろ。て言うか、キャロライナ・リーパーを食べられる人間なんていたのか。ネオは性格のおかしい奴が多い、という話だが他にもおかしいところがある奴がいるようだ。
そして灰崎妹はストロベリーパフェ、灰崎兄は生姜焼き定食。どうやら灰崎兄だけは常識のある人物のようだ。
三話終了。では感想待ってます。