2話
さっき会った神の家に着くと僕の心のときめきは消えてしまった。
それどころかついつい顔をしかめてしまった。
神の家の庭は雑草だらけでろくに掃除されておらず家はボロボロで古かった。
こんな家誰が住みたいと思うか。
「はー、どうしたらいいかな。」
「恵田、早く闇退治にいこうよ。」
「僕は実田じゃなくて雪だよ。」
「え、うっそだー。冗談は程々にしないと私も怒るよ。」
顔は笑っているのに目はもうすでに怒っていた。でもここで僕が実田扱いされるのは耐えられないし。
もしかして僕は貧乏くじを引かされたのか。
「本当だよ。恵田と契約したもん。」
すると恵田はこの神にとって大事な存在だったのか目の前の神は口にても当ててプルプルと震えていた。
あいつめ親しい奴になにも言わずに来たのかよ。居心地が最悪なんだけど。
「それは恵田が自分で選んだことなのね。」
小さな声で確認を求めてきた。
「そうだよ。契約を持ちかけてきたのは恵田の方。」
「ならいいや。雪は神の仕事とか知らないよね。なら教えてあげる。雪の仕事は人の闇退治。
そして闇を退治したときにもらえるあめは人生キャンディーといってその人生キャンディーを貯めることによって私達は存在を維持できる。」
「もしも闇退治をしなかったら。」
「そうしたら神はだんだんと存在が薄くなっていってやがては消えてしまう。それが神の死。だから死なないように努力しなさい。」
「わかった。」
「あと言い忘れてたんだけど、交換したのならばその神器に名をつけてあげなさい。」
それだけ言うと神はスッと消えてしまった。
なんだ、面白くなってきたじゃないか。
まずはこの刀に名前をつけるとこからだな。
剥き出しになっている刃は満月のように青白く光っていて美しい気がする。
あ、決まった。けどこんなに簡単に決めてしまっていいのだろうか。
うーん、悩みどころだ。こうなったら返事してくれるかわからなけど刀本人に聞いてもらうのがいいだろう。
「美月、じゃだめか。」
「素敵な名前をありがとうこざいます。主さま。」
ニコっと刀から飛び出してきたのは僕よりも背の高い可愛らしい子だった。
「君は何て言う子なの。」
「だから私は美月ですよ。あ、もしかして強く頭を打って頭のネジが一本緩みましたか。」
「いや、打っていないけど。」
なんなんだよこの子は。
「あ、もしかして主さまは私の存在がなにかと言っているんだね。私の存在はこの刀に宿る付喪神。主さまが私に名前をつけてくれたので私はこうして存在していられるの。てかこれぐらいの知識も持たずに神やってんなよ。このド低脳神が。」
........今ものすごい悪口が言われた気がするのは気のせいだろうか。
きっと気のせいだろう。こんなキレイな子が悪口なんて言うはずがないよね。
「まぁ、いいや。家に入ろうか。」
「私はここでいいよ。大体あの家、私には潰れる一歩手前の家にしか見えない。」
そりゃそうだけどさ、一応あれが僕達の家なんだから。
「入ろ「家に潰れて窒息死したいならお一人でどうぞ。」
言われる前に遮られた。なんか悔しい。
でも確かにあの家はいかにも潰れそうかも。そしてせっかく神になったのに家に潰れて死ぬなんて無様な死に方は遠慮したい。
「じゃあ今日はここで寝ようか。」
「仕方がないですね。今日はここで寝ます。」
そうして横になると
「うわわわわわわわーーーーーーー。チクチクして痛いです。」
「まずは草刈りからやろうか。」
冷静に言うとポカリと頭を殴られた。
「痛いんだけど。」
「さっさと草むしりしますよ。」
「わかった。」
刀をつかみ草を切り始める。草刈り鎌の役目も果たしてくれるなら良いものを貰ったものだ。
しかもとても切れ味が良くざっくざっくと切れる。
「私で何してくれてんですか。神聖な刀なのに。」
「切り味が良いんだからいいじゃないか。」
「一応私だって末端の神なんですよ。少しぐらいは使い方を考えて下さいよ。」
少しだけ美月の顔が不快感によって歪められている。
「使えるものはなんでも使わなきゃ。」
「くっ、無駄に正論なのが余計にイライラします。でも付喪神としてのプライドがー。
こうなったら手でやった方が早いということを実証しなければいけないのですか。だけども手でやって勝てる気がしません。。」
隣で悶々と考えているバカをほっておいて黙々と進める。
本当にこれは切りやすくてスパスパと作業が進む。
「ふー、今日はこれでいいか。さ、闇退治をしに行こう。」
「よ、待っていました。さぁ、闇をじゃんじゃん切りに行きますよ。」