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貴女を感じる夜

視点が変わります。


案内されたのはどうやら彼女の部屋のようだった。

とりあえず、疲れたのでさっさと寝ようと思い、ベッドに潜り込む。

いつもの俺ならすぐ寝れるはずだった。


ベッドに入った瞬間、女の香りがした。

今日、俺が使ったシャンプーの匂いに近いが少し違う。

たぶん彼女の匂いなのだろう。

そう思った瞬間、意識してしまう。


あっさりと見知らぬ男を家に入れ、さらには自らの寝床を貸すとは…危機感のないヤツだ。

もし俺が変態や不審者の部類だったらどうするのだ…。

まあ、即襲われるのがオチだ。

あの異様なまでの男に対する免疫の無さ、少し扱いを間違えればすぐに涙する。

あれは男を誘っているようにしか見えん。

俺だから良いもの、他の男から見れば…。


ん?それなら一、二度襲われてる可能性があるのでは?

異常な男性嫌いにも頷ける。

そう考えたら非常に厄介なホームステイ先だったのではないだろうか。

下手に扱いを間違えれば怯えてしまう。

しかし、放っておけば他の男の餌食だ。


これは男として彼女を守るのが当然の義務ではなかろうか?

我ながらなんと紳士的なのだろう。自分に惚れ惚れとしてしまう。


明日からは彼女、いやホームステイ先の者を守るナイトとして努めよう。

が、しかしその考えを無にしてしまう事態が起こった。


枕に顔を埋めると、さらに色濃く彼女の匂いがしたのだ。

別に俺は変態ではない。変態ではないが正常な男ではある。

男のむさい匂いより、女の香りの方がもちろんいい。

だから、その、無意識に匂いを嗅いでしまうのは仕方がないのだ。

そう、男なら仕方ない。

いつの間にか考え出したら止まらなくなっていた。


彼女の匂いに包まれ、まるで抱かれてるような感覚に陥る。

嫌ではない。むしろ心地よい。

そのまま俺は言い訳を散々考えつつ、寝てしまった。







ふと目を覚ますと俺は枕に顔を埋め、枕に抱きついていた。

慌てて枕から顔を離し、起き上がる。

変態ではない、決して変態ではないと唱えながら。


時計を見ると針は3時を指そうとしていた。

少し肌寒い。

ベッドに潜り込もうとして、あることが思い出された。

そうだ、花。花は何処で寝ているのかと。


そのあとの行動は速かった。

電気は付けず、足音もたてず、下へ降りていき、彼女を探す。

リビングの扉を開けると、ソファにうずくまる何かがあった。

まあ、そんなことだろうとは思った。


自らの寝床を貸すというのは、他に寝床がないからだろう。

自分を犠牲にして、ソファで寝る。

ため息が出る。馬鹿かこいつは。

こんな寒い中、毛布一枚で狭いソファで寝るなど馬鹿としか思えん。

俺は彼女の首と膝の下に腕を入れ、持ち上げる。

お姫様抱っこなどという可愛いものじゃない。

お姫様が首と腕を垂らしている時点で、そんな甘い雰囲気ではない。

サラサラと長い黒髪が揺れ、ふわりとあの匂いがした。

少し甘く心地よい枕の匂いと同じ。

自分の鼻を彼女の首に押し付け、匂いを確認する。

あぁ、やっぱり同じだ。


吸って、吐いて、吸って、吐いて


何度繰り返したか分からなくなった頃、俺の行動は更にヒートアップしていた。

白い首筋に唇を当てていく。

柔らかく、吸いつくような肌に夢中になって唇を這わせた。

時々、彼女がくすぐったそうに首を動かすのでさえ愛おしい。

…愛おしい?花のことが?


そう理解した瞬間、自分の理性が復活した。

何をしているんだ俺は!!!

これでは寝込みを襲っているようなものではないか!!!

彼女の首筋を確認すると、どうやらキスマークは付いていないようだった。

しかし、また別の問題が起きる。


第 一 ボ タ ン が外れている。


首筋に顔を埋めている時に外れたのだろう。

そこからチラリと見えるピンクの下着。

そして、肌の色とは思えぬさまざまな跡。

首や顔は白く綺麗な肌だった。

じゃあこの青いアザと異様に茶色く変色した肌はなんだ?


先ほどまで寝ていた部屋に、彼女を連れて戻る。

そのままベッドに置き、第一ボタンを閉める。

ここまでしてから、気付く。

俺の寝床はどうするのかと。


後々考えればありえない話だが、俺は寝起きで頭が回っていなかった。

そう、頭が回っていなかったのだ。

彼女のベッドに俺も入り込み、彼女を腕の中に収める。

髪の匂いは枕の匂いと同じで、心地が良かった。

二人で毛布に包まるのも悪くはなかった。

しかし、あの異様な肌が脳に焼きついて離れなかった。

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