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魔法が使える自己中

空腹を満たした頃、時既に9時。

疲れて帰ってきた私にとっては、風呂場に直行したいところだ。

しかし、今日はそんなわけにもいかない。

それはなぜか。


目の前の男性のせいなんですけどね!!!!!


家に男がいる状況下で、風呂に入っていられるか!!!!


彼に不満をぶつける。もちろん心の中で。

ちなみにその彼は目の前で絶賛お悩み中だ。

何から話そう…、ここがこう…いやこう…、と考えている。

話す順番を考えるのもいいんですけど、


早く話してもらえないですかね!!!!


目の前の人物が私のストレッサーとなりつつある中、彼が咳払いを一つした。


「あー…俺は異世界で学生を務めている。

今年で卒業なんだが、卒業の絶対条件が異世界留学なんだ。

それで、この世界のホームステイ先に転送されたら、やばそうな男がいてだな…。」


だんだん青ざめていく彼の顔。…そんなにやばいのか。

いや、まずはだな…。


「あの、異世界って言っても理解できないんですが…。」


疑い深い女だなと言うかのように、眉間に皺が現れる。

言葉だけじゃ信用できないですよ。

当たり前じゃないですか。


「仕方ない。ならば魔法を見せてやろう。」


彼は自らの人差し指を上に向ける。

指先を集中的に見ていると、そのまわりの空気がユラユラとしている。

そのユラユラが徐々に色付き始め、朱く燃える火となっていた。


「え?本当に火ですか?」


ぽろっと本音が口から漏れてしまった。

自分が気付いた時には既に遅く、彼の顔は先ほどと同じく眉間に皺が。


「触れてみればわかるだろう。

ま、火傷をしても知らぬがな。」


ん、と彼の人差し指が私に近づく。

手でその火に触ろうとする前に、熱さが伝わる。

これ本当に火だ…。

感心していると、目の前の男は未だかつて見たことがないほどのドヤ顔をしていた。


「魔法って、意外とショボイんですね…。」


決して彼のドヤ顔にイラっときたのではない。決して。…多分。


「ち、違う!!

今は魔法制限をされている故、こんなショボイのしか出来ないのだ!!

こっちの世界で魔法による事故を防ぐためだ!!」


あっ…ショボイのは自覚してたんですね…。

ムキになりながら話す姿はまるで子どものようだ。


「話を戻すぞ。

ホームステイ先の男だが、俺が異世界人だということを利用しようと企んでいたようだ。

こちらに来てすぐに、俺を解剖しようとしてだな…身の危険を感じ逃げた。」


下唇を噛み締め、拳を握り、震えながら話す彼。

怖かったのだろう。

解剖しようとする男も男だが。


「それで、学校に連絡したらお前の家が新しいホームステイ先だと言われ…。

ほら、鍵まで貰ったんだから間違いない。」


彼がポケットを探り、私に見せたものは間違いなく我が家の鍵。

だから扉を開けたらこんにちはだったわけか。

というか…


「なぜ私の家がホームステイ先なんです?」


彼は首を傾げ、頭の上にクエスチョンマークがご丁寧に乗っているようだ。


「知らん。適合者なんじゃないのか?知らないが。」


大事なことなんで二回言いましたね?


「まあ、長くとも年が開ける前には帰らねばならん。

それまでこの俺と生活が出来るのだ。感謝するんだな!」


やだ、この人ナルシスト?

本当に引いているんですが…どこからそんな自信が溢れていらっしゃるんですかね…。


「ところで、風呂場はどこだ?

今日一日でかなり疲れてしまった。

さっさと風呂を済まし寝る。」


もうやだこの人、ただの自己中だった。




彼は、この世界の風呂場の使い方は学校で習ってきたらしい。

場所だけ教え、説明をしようとした。

しかし彼は大丈夫と言い、そのまま風呂へ行ってしまった。

数分後、あっつい!っという悲鳴が聞こえたのだった。

シャワーの温度設定に苦戦しているらしい。

少し噴き出して笑ってしまったのは仕方ない。


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