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第六章

  第六章・お出かけしよう♪


 「せっかくみんな集まったんだからどこか出かけないか?」

傭兵団本部でただ無駄話ももったいないと、ネストさんが提案します。活動的なきららさんはもちろん大賛成、ダイゴさんも異論は無さそうです。ただエステルさんは最近ファンなのかストーカーなのかわからない人が多いのが怖くて、今ひとつ乗り気じゃなさそう、ナナカさんはもともと人見知りなので何も言い出せないでいます。

「うだうだしてちゃ何にもできないよ~♪」

どっちつかずのエステルさんにちょっとしびれの切れたきららさんは、エステルさんの腕を掴んで無理やり本部の外へ、活動時間の関係か、特にストーカーとかのいる様子も無さそうです。ナナカさんも一人で居るのはさすがに怖いので、エステルさんについていくことに。

「おい、あれ見ろよ!」

漆黒ブラック姫君プリンセスが二人いるぞ!」

すれ違った人たちが驚いた表情でエステルさんたちを目で追っていきます。容姿も服装も全く一緒なので、傍目には同一人物か双子のどちらかにしか見えないのでしょう。

「やっぱ二人いると目立つねえ…」

きららさんもちょっとびっくり、ただでさえ黒いゴスロリドレスは目立つのに、全く同じ服の女の子、それも見た目までそっくりな子が二人なのですからなおさらです。

「ううっ、やっぱ見られてるぅ…」

半泣きでしょげているエステルさんにもともとシャイで顔を上げられないナナカさん、こうなったら誰にも見分けがつかないわけで…

「本物はどっちだ?」なんて予想ゲームをし始める人も。もちろんやじ馬はどんどん増えています。

「…どこ行くのよぉ…」

やじ馬の怖いエステルさんは泣き声でネストさんに聞いていますが、ネストさんは「ひ・み・つ♪」なんてとぼけて教えてくれず、もはや集団となったやじ馬たちを連れて大通りを歩くゴッドハンド団員たち。やっとのことで着いた先は

「プラチナソル本部?」

そう、プラムさん率いる傭兵団、プラチナソル本部だったのです。

「おおっ、姫君のお出ましだ…って!?」

上機嫌で出迎えようとしたノマドさんですが、漆黒ブラック姫君プリンセスが二人いることに度肝を抜かれ、思わず腰を抜かしてしまいました。

まるで見た目が農家の頑固おじさんという、イマイチぱっとしない感じのノマドさんは、赤と黒を基調としたお洒落なファッションに身を包んだ副団長さん、凄腕剣士だったりするのです。

つづいてヒロロも驚き過ぎで椅子をひっくり返します。こちらは気障な成金の息子風の、キツネみたいな容姿の若者、装備が金一色で統一された妙に派手好きな人だったりします。

金色のセミロングに整った表情と野暮ったいような所はないものの、逆にそれが自惚れを助長させているような、「自分で思ってるほど美形じゃないよ?」と言ってあげたくなる人。不細工でないことは認めますがね。

その他チンピラ一味、といった男たち、彼らもまさか二人の姫君は想像してなくて一様にずざざっと引き下がり、姉妹の二人を愕然とした眼差しで見ています。そうですね、その様子はまるで幽霊か何かを見ているような感じでしょうか。

そうしていると、美人団長のプラムさんが二階の自分の部屋から降りて来て

「何だあんたらはっ!?」

といきなりバックステップ、壁に張り付いて固まってしまいます。

そんなプラチナソルメンバーの反応をひとしきり楽しんだネストさんは、思わず爆笑しておいて妹のナナカさんであると紹介します。それも姉のエステルさんの方を。

半泣きになったエステルさんは、「私が姉のエステルですぅ…」と涙ながらに訂正、焦るネストさんは逆にみんなに笑われてしまいました。

「あんたら双子か?」

相変わらず口の悪いプラムさんは、恐る恐る二人に近づくと目を皿のようにして問いかけます。エステルさんが二つ違いだと説明すると余計びっくり、なおさら信じられなくなった様子。

「見分けつかないよなあ…」

ぎょろりと睨むように必死に見比べるノマドさんもやはり違いが分からないようで、ヒロロさんと一緒に二人をじろじろ。その二人の険しい表情が怖かったのか、妹のナナカさんは思わず涙目に。

「おっとごめんごめん、おじさんたちは怖い人じゃないぞ~♪ 怖いのは団長のプラムだけだから!」

ナナカさんを猫撫で声であやすノマドさんに、プラムさんはつかつかと歩み寄り

「誰が怖いんだって?」

氷のような冷たい表情に刺すようなジト目でノマドさんを鋭く睨みつけます。途端にノマドさんは真っ青な顔になって飛び下がり、

「いやあ、冗談ですってば! 言葉のあやですよぉ!」

両手を振りながら慌てて訂正するノマドさんですが…

「つまらん言い訳なんかするな~っ!」

プラムさんの絶叫とともに繰り出された、それはもう目に留まらないほどに鋭い廻し蹴り! ノマドさんはそれをまともに顎に受け…

「太もも…けふっ!」

よく分からない悲鳴を上げつつ遠くへ飛んで行きます。ノマドさん、危うしっ!

「おわあっ!」

飛んだ先にはチンピラもどきの団員一同、彼らを下敷きにして、ノマドさんはからくも生き延びた様子。完全に脳震盪のうしんとうを起こしてのびているようですけどね。

「他に文句のある奴はいるかっ!」

すごい剣幕で怒鳴り散らすプラムさんに、みんな一様に首を横に激しくブンブン、必死にそれを否定します。殺一警百シャーイージンパイ「一人を殺して百人に警告する・中国のことわざ」効果と言うべきでしょう。

「ま、ここで喋っててもやっぱつまらないから、みんなでモンスターでも狩りに行こうぜ!」

「お、おうっ!」

プラムさんの他を威圧するような一方的宣言に、みんなは慌てて賛同します。が、よく考えるとナナカさんは武器を持っていませんが…?

「ナナカ、武器は?」

心配になったエステルさんが問いかけると

「これ、私魔法使いだもん」

小さな杖を取り出してけろりと言うナナカさん、みんなは一斉に

「ええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!?」

今まで以上に驚いていましたとさ。

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