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第一章

  第一章・話題の彼女?


 「な、なにこれっ!?」

とある本屋でいきなりけたたましい叫び声がしました。

下校時間帯と重なっていたため、客もそれほど多いわけではない店内ですが、やはりみんなの視線が高校の制服を着た彼女に注がれます。彼女の名前は「藤井絵里香」、十七歳。ぶっちゃけロリロリっとしたとこはあるけど、長い黒髪の似合う、色白のすごく美しく、そしてかわいらしい女の子。

男性目線から見ればみんなすぐさまこう言うでしょう、こんな子が彼女だったら、または妹だったら、と。ただ彼女はひどく人見知りで臆病なので、彼氏どころか友達すらもなかなかできません。

周囲の目線に気づいた絵里香は、慌てて俯くとこそこそと隠れるようにしてその本をレジに持って行きます。雑誌のタイトルは「月刊ゲームオンライン」、表紙の見出しには「今ホットなオンラインゲーマー!」というテロップがでかでかと印刷されています。

バスに乗り、彼女は再びこそこそと隠れるようにその雑誌を開くと、トップ記事にでかでかと映し出された黒いドレスの女の子の写真・・・ゲーム内の写真なのでスクリーンショット、というやつですね。をまじまじと見つめ・・・

「・・・これ、私・・・だよね?」と、一人静かに自問自答。

キャラクターの説明には、「カリバーン・サーガの全プレイヤーを救った超絶美少女!」とあります。ちょうどそのスクリーンショットも、最後の戦いで城壁に登ろうとしているエレメンタルドラゴンの頭に双剣を突き刺そうとしているシーンで・・・怒りの形相ながらも凛とした彼女の美しさは少しも損なわれることのない、まさにベストショットといってもいい一枚。ただ、ふわりとしたスカートのためあと少しで下着が見えそうな、そんなきわどい写真でもあったりしますが。

 おっと、自己紹介が遅れました。僕の名前は「高丸和樹」、カリバーン・サーガでは「カズン」の名で彼女と一緒にプレイしていた無名のハンターです。彼女とは従姉妹なので、比較的よく似たやや女性的な容姿がコンプレックスの、とある大企業の下っ端A、とでも名乗っておきましょう。

 中国地方のH市でも北部に当たるその街は、ベッドタウンとしての意味合いが強い閑静な住宅街。パトカーや救急車がサイレンを鳴らして走るたびに「どこに行くんだろうね?」と住民たちが噂し合うようなのどかな街です。そんな街にあるとある造成団地の一角が彼女の住まい。家族構成は両親と、それに妹が一人。

「ただいま・・・」

浮かない顔で帰ってきた絵里香は、誰の返事も返ってこないままに自分の部屋、二階の一室に引きこもると再びその本を広げ

「私、ひどい格好で写ってるぅ・・・」と半泣きの顔でしみじみと見つめています。たぶんこの本を買った若い男性諸君なら「もうちょっと・・・」とか言いながら本の下の方から覗き見したくなりそうな、そんな写真なのですから。

解説記事には、「全プレイヤーを救済する目的で戦われたドラゴンとの戦いで、最後の猛攻を見せる漆黒ブラック姫君プリンセス!」とか、「彼女の活躍で全プレイヤーが開放された、真の立役者!」とか、いろいろ派手なことが書かれています。

「私、こんなすごいことしてない・・・」泣きじゃくりながら呟く絵里香は、ただひたすら、「仲良くなれたみんなを守りたい!」その一心で戦っただけ。決して英雄になりたいなどと思っていたわけではないのです。

何やら家の周囲には一~二人の見慣れない人影、もしかすると彼女の生インタビューを狙っている雑誌記者かも知れません。あるいはストーカーの類いかも…

「はうぅ、これじゃ本どころがかお菓子も買いに行けないよぉ!」

ひとしきり泣いた絵里香ですが、もともとひどい淋しがり屋でもあるので暗い部屋に一人ぼっちは余計気が滅入る様子、ついつい人の温もりを求めて日課となったカリバーン・サーガにログインしたのですが…


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