1 捨てる星 燃やす星
誤字脱字等、読みづらい点についてはお知らせいただきたく願います。
表現が幼稚なのは大目に見てください……。
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これは、遠い遠い未来のお話です。
とある場所に、頭のいい博士がいました。博士は今日も研究所で研究をしています。いったいなんの研究をしているのでしょう?
「うーん……あーでもない、こーでもない……」
博士は、何やらいろんなものをこんこんと叩いて回っています。何かを探しているようです。
ヘルメットを持ってきては、こん。フライパンを持ってきては、ぽん。何やら硬いものを探しているようです。
「こんなものじゃあ、まだまだダメだなぁ……」
難しい顔をして、さんざん叩き回っても、博士のお目当てのものは見つからないようです。博士はその曲がった背中を、さらに曲がらせて、しょんぼりとしてしまいました。
「もうわしが生きている間には、見つからないのかのぅ。夢がかなわないのは残念じゃ……」
博士はがっくり落ち込んで、ついに諦めかけていた、そんな時でした。
どっかーん!
研究所が飛び上がるほどに、なにかが地面を揺さぶりました。博士はまるでびっくりして、しりもちをついてしまいました。
博士は腰を叩きながら、窓の外を見ると……なんということでしょう! 博士の家の方向から、煙があがっているじゃありませんか。
博士は慌てて靴も履かずに、研究所を飛び出して行きました。先ほどまでの落ち込みようもどこかへ行ってしまいます。
博士は自分の家に着くと、庭がめちゃめちゃ、それどころか大きなくぼみが出来ていました。博士の育てていたチューリップも目も当てられません。
そんな大変なことなのに、博士は見向きもしませんでした。その理由は……
「い、隕石じゃ!」
そこには、隕石があったのです。隕石、それは宇宙から落ちてきた大きな石ころ。
博士はまだ熱い隕石に庭のホースから水をかけて冷やし始めました。何をするつもりなのでしょうか?
ようやく煙が収まって、熱も取れたころ、博士はその隕石をこんこんと、叩いてみたのです。
「こ、これじゃ! わしが欲しかったのはこれじゃ! やった! これで宇宙に行けるぞぃ!」
博士が研究していたのは、どうやら宇宙船のようでした。宇宙船の材料として、硬い物を求めていたのです。
博士は庭で小躍りするほど喜びました。なるほど、確かに宇宙から来た隕石なら、宇宙に出ても大丈夫なはずです。
博士はやっと、宇宙に行くための第一歩を踏み出したのです。
○□◇△▽☆
……
「……うーんと、推進剤にゃカフシーマを使えばいいから、やっぱり問題になんのは外鋼殻だなぁ。いくら宇宙ゴミ捨て場つってもこればっかしは廃棄材使うわけにゃあいかねぇしな……。使えるもん売っていくらか稼ぐか?……うーむ」
どの方向を見てもゴミだらけの場所の上で、青年はブツブツと何かを呟いている。手に握った大型のスパナは、そのゴミ汚れの向こうに見える白さ、ひょろっと長いその細さにはまるで似つかわしくない。持たされている、というか働かされているようにしか見えない。
「なーにサボってやがんだ、給料減るぞクソガキ。骨も残らねぇほど焼けたくなかったら要るもん持って逃げるぞ。焼けるなら焼けるで、俺たちのスペースが増えるからいいがよ」
「あ、ちょっと!」
少し禿げ上がった頭のおっさんが、目に見えるほど嫌々ながらに青年に注意する。青年は慌てふためいて機械の塊を、つぎはぎで出来たバックに詰め込んでおっさんの後を追いかけた。
『DUSTへようこそ、ご自由にお捨てください』
この星は、名前をカティキアという。十年も前、宇宙進出において、生態系の発展や一定の温度変化についてそれなりの条件を兼ね備えたこの星が発見された。宇宙発展連盟(CDU)の人間はすぐさま、この星を居住区として工事を始めたが……とある問題が発見された。
それが近くに鎮座する恒星「クアステ」である。この恒星が問題児であることが発覚したのは、工事中の生命維持兼建材置き場として作ったシェルターを作り上げた翌日のことだった。
爆音。それは、星面に駐在してあった宇宙船のエンジンがクアステの「フレア」によって焼却されたことによるものだった。一気に莫大な熱量が宇宙船を爆ぜさせたのだ。
すぐさま、CDUの連中は引き上げをはじめ、その話が漏れたおかげでいつしか新たな発展の場だったはずのカティキアは、今や「DUST」へとなってしまったというわけだ。
しかし、そんな危険な星に、彼らがいるのはなぜなのか。言うまでもあるまい、そこはDUSTなのだから。彼らは親に、社会に、そして星に捨てられた人間たちなのだ。彼らは、ゴミを集めてそれをリサイクルし使えるものにして、無法者共の食料やら何やらと交換をする。そうして生計を立てているのだ。
「ふぅ! あっぶねー」
青年は汗を拭いながらそう漏らす。すると剣呑な顔をした中年の同行者が、青年を怒鳴り散らした。
「けっ! てめぇのせいで俺まで丸焦げになるとこだったぜ。注意してやったこと感謝しろよ」
「あんたの足の遅さは知らねぇよ。俺は別にピンチじゃなかったしな。第一誰がここまで運んできたと思ってる。途中から脇腹抱えてバテちまってたくせに」
「んだと!」
「うっせぇ運動不足が! 運動しろメタボ! 弱重力で下腹が遊んでるぜ!」
殺伐した喧騒が始まる。他のDUSTの住人は「また始まったか」なんていって呆れるが、一人の優男が二人を割って入った。
「ま、まぁまぁ喧嘩なんかするのはよくありませんよ。人も少ないんですし仲良く平和に……
「「お前は黙ってろ!」」
綺麗なハモリ。こんな時だけは仲がいい。二人ともこの優男にカチンときたらしく、矛先が互いから一人に向けられることになる。優男は何か嫌な気配を察知したらしく、額に汗をかき「あれ? こんなはずじゃ……」と呟いた。
「じゃあお前はどこの誰とも知らないガキのために死んでもいいのか? 誰も弔ってくれない様なココでか」
「ムカっ!! 自分が死にかけたのを人のせいにするような輩は、ゴミに埋もれて死ぬのがお似合いだろうが! 俺の方が老い先長いんだ。第一こんなとこくるようなあんたが、死なないでいる理由がわからん!」
「なんだとクソガキ。おいルーペル! お前もこの大口叩いたガキに何か一言言ってやれ!」
「い、いえ私は特に……」
「どうしてお前はそうなんだこの根性無しめ! 俺が根性入れ直したる!」
「あぎゃ! あ、ひえええええええーーーー!」
断末魔の叫びがシェルターの端から端まで埋める頃、少女はその隅で、静かに本を読み耽っていた。
「よ。……またその本読んでるんだな」
青年はいつのまにやら騒がしいその空間を抜け出して彼女の傍らに座っていた。少女は青年の問を頷きで返す。
「面白いかな?」
彼女は頷くのみである。
「そっか。そいつはよかった」
こんな、大したふうでもない会話は彼らのいつもの挨拶である。
「俺もそれに出てくる博士の序盤と変わらん、まるでうまくいかないことばっかでさ……」
青年の言葉は、そこで詰まる。その先は彼の口から言うことを憚られたからだ。
少女は、いつも能天気なまでの明るさを持つ青年の、その深刻な表情に、今まで一時も本から離さなかった目をそちらに向けた。
青年はそのことに驚き、慌てて少女に手を振る。
「おいおい、心配されるほど弱ってねーよ! お前は本読んでろ、な」
青年は、小さい兄妹のように、少女の頭を雑で優しくクシャっと撫でた。
少女はその頭を自分でも撫でたあと、本を読み始めた。
シェルターの中に、フレアの終を告げるブザーが鳴った。
「死なないでいる理由がわからん、か。確かに、そうかも知んねぇなぁ……」
「へ? 今なんと?」
「……なんでもねぇよ、ルーペル」
メタボリックな中年は、口の端を少しだけ上げた。




