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2回目だから怖くないもん

「ちょっと!どういうことよ!昨日のあれで終わったんじゃないの?」

ベッドから上半身だけ起こした状態で瑞樹は怒鳴った。

それは当然の事だっだ。変身する事もイヤだし、本人は1回だけで終わると思っていたのだから。

が、しかし、彼?は一言も1回だけとは言ってない。そんな彼?は言った。


「今、この世界には多くの邪念が溢れているんだ。このままだとボクのような存在や

神様、それに似たような良いエネルギーを持った存在が消えて邪念が支配し、君たち人間は至るところで戦争やテロを起こしてやがて滅亡してしまう」


「はぁ?じゃあなに?あたしに世界を救えって言うの?バカじゃないの?あたしただの中学生なんだけど!」


「いや、君のように戦っている人はたくさん居るんだ。ただ、ほんのちょっとその手助けをしてもらいたいんだ」


「じゃあ別にあたし一人くらい居なくたってどうってことないんじゃないの?もう面倒な事に巻き込まないでよ。こんなこと人に話したら確実に病院送りだわ」


「たくさん居るといっても、その絶対数は足りていないんだ。その結果がすでに戦争やテロとして影響を及ぼしはじめているのが現実なんだよ」


瑞樹は時計を見ると午前10時20分を指している。

「あ~!遅刻しちゃう!もう準備するから!あたしが出掛けてるあいだにどっかに行ってよね」

慌ててパジャマを脱ぎ、ブラジャーを着けようとした時に視線に気が付き瑞樹は悲鳴をあげて、その生き物にシーツをかぶせた。

「ヘンタイ!!」

瑞樹にそう言われると彼?は心の中で

「・・・・・・ボクには人間のような感情はないんだけど・・・」

とつぶやいた。




「いってきま~っす!」

ピンクのチェック柄のミニ丈ワンピースに白のサンダルという服装の瑞樹は小走りに玄関を出て行った。時計を見ながら走る後姿に余裕は感じられない。


約束の時間の11時を5分ほど過ぎた駅前で白のマキシ丈ワンピース姿で壁に寄りかかりながら時計を見ている愛子に瑞樹が駆け寄ってきた。瑞樹は謝ったが、愛子は気にしていなかった。

駅前には大型のファッションビルがあり、多くの若者がここで洋服や靴、アクセサリーといった買い物をしている。瑞樹達は2階にエスカレーターで上がり、何件かの洋服を見て12時過ぎに同じビル内にあるケーキとパスタが美味しいと評判の店で食後のレアチーズケーキを食べながら、アイスティーを飲んでいた。瑞樹は今朝の事を思い出して「はぁ~っ」とため息をついた。


「みずきちゃん、どうしたの?」


「ん?ううん。何でもないよ。ちょっと歩きつかれただけ」


「そう?・・ならいいけど・・」


「あ!そうだ!ねえねえ、ここを出たら水着見てみない?来週は秋乃達と海に行くし、新しい水着を着たいな~って思って!」


愛子も先ほどの瑞樹のため息は忘れてその提案に乗った。


4階にある特設の水着売り場はたくさんの女性でごった返していた。瑞樹達は水着を何着か手に持ち、他の水着も探している。気に入った水着を一通り見つけ、試着室に入り胸元からヘソのあたりまであるボタンを外し、重力に任せてワンピースをストンと落とす。水色のTシャツブラを外して黄色で無地の水着を試着した。水着の下は、上に同じ色のショートパンツが付いていてそれがなかなか可愛い。鏡を見ながら嬉しそうにしていたが、再び今朝の事を思い出す。家に帰ったらもう消えていてくれると助かると切望していた。


二人は買い物やお茶を楽しんでまだ明るさが残る18時半頃別れて帰宅した。両親は仕事で遅くなるので、いつも将太と交代で食事の支度をしているが今日は瑞樹がキッチンに立つ日だった。将太はすでに家でハラを空かせてリビングで待っていた。玄関を上がり、リビングを覗き込むと将太が居たのでそのままリビングに入る。

「ただいま~」

そのまま冷蔵庫から麦茶を出してコップに注ぎ、椅子に座った。

「お~、おかえり」


帰って来て15分ほど経つだろうか、いつもならばすぐに自分の部屋で着替えを済ませてから料理をするのに今日は勝手が違う。なかなか部屋へ行かない瑞樹に痺れを切らせた将太が切り出した。

「なぁ、メシまだ?」


「う・うるさいなぁ~、分かってるわよ!」

仕方なくグラスを流しに置いて二階に上がろうとするが、やはり躊躇している。まだ居たらどうしよう。居ませんように!居ませんように!と心の中で祈りながら思い切って部屋のドアを開ける。


「!!・・・・・・」


朝話しかけてきた奇妙な生き物の姿はそこにはなかった。乱れたベッドを直しながら確認したが、やはり見当たらない。ほっと胸をなでおろした。可哀相とは思わなかった。中学生の自分には荷が重過ぎると思っていたし、そんな責任のあることをしたくもなかったからだ。瑞樹は着替えてすぐに料理を作り始めた。気も軽くなって楽しそうにハンバーグを焼いている。ハンバーグをオーブンに入れると肉汁の残ったフライパンに水と大目の砂糖、ケチャップ、中農ソースを入れて煮詰めた。そうすると甘味のあるハンバーグソースの出来上がりだ。ソースが出来たとほぼ同時にオーブンに入れてたハンバーグも焼き上がり、皿に盛り付けソースを掛けて出来上がった料理を軽やかにテーブルに運ぶ。それを見た将太が

「なんかいい事でもあったのか?」


「べっつにぃ~」

気持ちも軽くなって楽しく食事を始めた。テレビでは明日の天気が映っていた。

食べ終わって流しで後片付けをしてるとテレビの音が耳に入ってきた。

「こちら現場です。犯人は会社の上司や同僚6人を殺害し、現在も人質をとって立てこもってます!なお、先ほど死亡が確認された山下一郎さんは先月お子さんが生まれたばかりだそうです。」


お茶を飲みながら将太が

「おいおい、近所じゃん!おっかね~なぁ」


「君たち人間は至るところで戦争やテロを起こしてやがて滅亡してしまう」

あのヘンテコな生き物が言った言葉が頭をよぎる。まさか今回の事件も自分が手助けをしていれば誰も死ななかったのでは?彼を追い返したのは間違いだったのでは?と思ってしまう。

責任を感じ、うつむきながら部屋に戻った。ドアを開けた瞬間、瑞樹は泣き出しそうになっていた。

「やぁ、おかえり」

例のヘンテコな動物が涅槃のような格好でベッドに寝そべっていた。


「・・・・・えええええええええええええええええ!!」


「ちょっとあんた!帰ったんじゃなかったの?」


「???・・・・・ボク、帰るなんて言ったっけ?ちょっと仲間と会ってきただけなんだけど」


瑞樹はその場にへたり込んだ。

「はっ、そうだ!ねえ!さっきの事件ってまさかあたしが手伝わなかったせい?」


「さっきの事件って?」


「ほら!6人殺して立てこもってるアレよ!」


「・・・・良く知らないけど、その事件は関係ないと思うよ」


「なんでそんなに気楽に言うのよ!こっちは怖くて仕方なかったんだから!」

瑞樹は泣きながら続けた。

「自分のせいで人がたくさん死んだって思って・・・・・」


「・・・・・・・やっぱり君は優しいね。ボクの目に狂いはなかったよ・・・。改めて言うけど、さっき君が言った事件だけど・・・ボクにも君にもそれを止めるほどの力はないんだ。ボクらに出来るのはそういう感情になる前に、強力な邪念が生まれないようにする事だけなんだ」


「そっか・・・。少しだけど救われたわ。いいよ。手伝ってあげる」


「ホント?凄く助かるよ」


「もうあんな思いをするのはたくさん!・・・変身は・・・イヤだけど・・・」


「じゃあ早速お願いしてもいいかな?」


「え!いまぁ~!?心の準備が・・・・・」


「今手伝うって言ったばっかりなのに・・・・・」


「わ・分かったわよ!やればいいんでしょ!」


「はぁ、・・で?今度はどこの誰?」


「うん、君のお兄さん」


「え?・・・・・・・・えええええええええええええええええええ!!!」


「ちょ・・・ちょちょちょちょちょちょちょ・・・なんでお兄ちゃん?」


「君・・・1年くらい前からお兄さんとあまり喋らなくなったでしょ?」


「え?そうかな・・・・あ、でもちょっと気まずくなって話す機会は減ったかも・・・」


「君のお兄さんもそれを感じてるし、あの時君に見られてショックを受けてるんだ」


「・・・・・・そう・・だったんだ?・・・・・・・っ!ちょっと待って!もしかしてあたし、お兄ちゃんにあの格好見られちゃうワケ?!」


「いや、今回は身近な相手だし、ちゃんと話せば解決すると思うから。まぁそれでダメならやってもらうしかないんだけど・・・・」


「ぜっっっったいに話し合いで成功させるわ!!」


「が・・頑張ってね・・・・・・・」




瑞樹は将太の部屋のドアをノックした。どうぞ、と言われて久しぶりに兄の部屋に入った。依然とは様子が少し違う。飾ってあったフィギュアがなくなっている。「いいかい?彼は別に悪い事をしてたわけじゃないんだ。それを認めてあげれば問題は解決するよ」その言葉を思い出しながら兄に話し始めた。


「ねえ・・・フィギュアとか無くなってるのって・・・あたしのせい?」


「い・いや・・もうやめようかなって思ってたからちょうど良かったんだよ。それにもう・・・どうでもいいじゃん」


「・・・聞いて!あたし別にお兄ちゃんが嫌いになったわけじゃないの・・・ただ・・・あの時はちょっと気まずくて・・・。だから自分の好きな事に遠慮なんてしなくていいんだよ!」


「お・俺は別に・・・・気にしてないっての!」


「うそ!ホントの事言ってよ!」


「まぁ・・嫌いになったってわけじゃないから・・・その・・・・」


「うん!いいんだよ!好きな事続けて」


「ああ、ありがとう、瑞樹」


「じゃあ行くね、それを言いたかっただけだから!おやすみ」


「おやすみ、瑞樹」


一仕事終えて満足げに部屋に入ると彼?はベッドで寝てた。

ハラが立った。ぶっ飛ばしたくなった。ベッドを蹴飛ばして起こした。

「あんたねえ、人が働いてるってのに何あたしのベッドでくつろいでるのよ!一回殴らせなさいよ!」


「いや・・今回は大丈夫って思ってたから・・・ははは・・・分かった!殴っていいよ!」


瑞樹は殴ろうと思い近づいた。が、よほどの鬼畜でなければ動物じゃないと分かっていても、見た目が小動物の生き物は殴れない。

「はぁ~、もういいわよ!それよりもさぁ、あんた名前とかないわけ?呼びづらくて仕方ないわ」


「・・・・・ずっと、あんたって言ってたじゃないか・・・・・・・・」


「っ!い・いいから教えなさいよ!」


「ボクには名前はないんだ。良かったら君が付けてよ」


「瑞樹!あたしは瑞樹よ。あんたは・・・そうねぇ」

瑞樹は部屋の中に、名前になるようなものがないか探した。

「決めた!あんたの名前はパステル!」


「うん、ボクはパステル!よろしくね、みずきちゃん」

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