【悲報】わたくしのド下手な刺繍に付与魔法がついていた
仕事で忙しかった婚約者との久しぶりのお茶会は、お互いの近況報告だけで一時間はかかっただろうか。
それぞれのカップに注がれていた三杯目のお茶もそろそろ底が見えてきている。
「そういえば、シャリーに頼みたいことがあったんだ。君が刺繍をしたハンカチをいくつか分けてもらいたい」
ひと月に及ぶ行軍訓練の疲れがみえる婚約者の言葉に、私は動揺した。
はしたなくもカップの底が固い音を立ててソーサーへと着地する。
「それはその、出来かねます。今お渡しできるものは手元にありません」
嘘である。
私は刺繍が苦手で下手なので、練習したものならたくさんある。
ただ、あまりにも下手すぎて誰かの手に渡すわけにはいかないのだ。
「ハンカチをお譲りする理由をうかがってもよろしいでしょうか」
世間にお出しできる作品が欲しいのであれば、少し時間が欲しい。できるなら半年くらい。
「演習前にシャリーからもらったハンカチの刺繍に、付与がついていたようなんだ。でも、ハンカチを使ったときに付与の効果が切れてしまってね。付与の詳細がわからなかった。刺繍の大きさのわりに付与が強かったようで、我が騎士団の魔法使いが付与の詳細を調べてみたいと言っている。それで、余っている作品があったらぜひ分けてもらいたいなと思って」
想像もしていなかった理由に驚いた。まさかの付与。
『嘘でしょ!?』と叫びそうになり、とっさに両手で口を覆う。
大事なことなのでもう一度確認するが、私は刺繍が下手である。
本当に、シャレにならないくらい下手である。
そこに付与が乗っているだなんて、芸術の神は狂ってしまったのだろうか。それとも魔術神が錯乱したのだろうか。
私があまりにも驚いているからか、婚約者は胸元の内ポケットから一枚の布を取り出した。
薄く赤茶に染まったその布には、端にいびつな文字が三つ並んでいる。
とっても見覚えがあるそれは、私が婚約者のイニシャルを刺繍したハンカチだ。
婚約者はハンカチを広げて私に見せた後、テーブルに広げていびつな文字を愛し気に指でなぞった。刺繍したハンカチを初めて渡したときのリアクションを知っているせいか、目の前の光景が信じられない。彼は正気だろうか。
「演習の終盤に疲れから手元が狂ってね。武器の手入れ中に少し怪我をしてしまったんだ。そのとき、とっさに胸元からこれを出して傷口に当てて止血したんだよ。近くにいた従僕がすぐに怪我を見てくれたんだが、そのときにはもう塞がってかさぶたになっていたんだ。あっという間に治ってしまった。本当にすごい」
ほぼ全部が血の色に染まっていることから、傷口が大きかったか深かったのだろう。
それがあんな少しの刺繍があるハンカチで治ったなら、たしかにすごい。かといってあの下手な刺繍に治癒の付与がついていて、それが発動したとは考えにくい。彼がとっさに治癒魔法を使ったと考えるほうがまだ納得できる。
だってあまりにも下手だから。
ああいうのって、もっと上手な人に発現する能力じゃないの? 下手な刺繍におそらく治癒の付与が乗っててもいいものなの?
いまいち信じられない私をよそに、彼はテーブルに広げたハンカチを丁寧にたたみ直しながら悲し気に目を伏せる。本当にどうしたんだろうか。
「せっかくシャリーが刺してくれたハンカチを汚してしまったのは悲しいけれど」
「…………ハンカチは汚すものですし、仕事を全うしたのであればハンカチも本望でしょう」
惜しまれつつ亡くなったような発言をしてしまったが、なくなったのは私の刺繍についていたであろう付与だ。これっぽっちも惜しくはない。
だいぶいびつな形をしているがきちんと判読できる文字という意味では貴重な、私が刺繍したハンカチ。あれが完成するまで10枚以上の布が犠牲になっている。婚約者の美しい文字を真似て刺繍しようとしたら失敗してしまったのだ。監督をしていた母から、基本ができないのに余計なことをするなと怒られてしまった。
失敗作の中には、文字に見えなくて兄から「巨人と散歩する魔獣」というタイトルをつけられた作品まである。タイトルを聞いたときは思いっきり笑ってしまい、ソファにしばらく突っ伏していた。
兄によってタイトルがつけられた失敗刺繍は、過去のものもすべて額装されてタイトル付きで保管されている。恐ろしいことに、下手な刺繍を気に入ってしまった人に譲ったものもある。タイトル付きで額装された失敗作の一つを、目の前にいる婚約者も持っている。
付与が乗っているか調べるならご自身が持つハンカチで調べてくれないかしら。
たたみ終えたハンカチを大切そうに戻した婚約者は、伏せていた視線を上げて真っすぐにこちらを見つめてくる。
「というわけで、シャリーの刺繍に付与が乗っているか調べたい。手元にある作品で譲ってもいいものがあるなら譲ってほしい。新作はない?」
「お出しできるようなものはありません」
「練習した作品がたくさんあるとテッドから聞いてる。そちらは?」
「兄から何を聞いてるか知りませんが、人前にお出しできるものではありません」
婚約者が困った顔でこちらを見てくるが、失敗作の中でも笑えて世間に出せる失敗と笑えない失敗があるのだ。笑えない失敗作を出すのは本当に勘弁してほしい。
「ロッシュ様に以前お渡しした、その、う……まの刺繍があるでしょう。そちらではいけないのですか?」
三年ほど前に彼の愛馬をモデルに刺繍したハンカチは会心の出来で、見た人がもれなく笑って動けなくなる作品だ。私が刺した失敗作の中でも一、二を争う笑撃を与えてくる。
兄によって「疾走するトレント」というタイトルがつけられたハンカチは、茶色くて太い棒が斜めになっていて、棒の半ばから下までの間に折れ曲がった枝のようなものが七本生えている。走っている馬の脚が何本もあるように見えるため、それを表現したつもりだった。
さらに棒の上部と一番下の端からは、細長い線が後ろに向かって何本も伸びている。これが速度を感じられて疾走しているように見えるのだ。
全体的に問題しかない馬? の刺繍だが、一番の問題は顔だろう。馬の顔を刺繍で表現するには私の腕が足りず、目と口があれば顔っぽく見えるだろうかと頑張った結果が惨事を引き起こした。どう見ても変なトレントにしか見えなくなったのである。
刺繍が完成して初めて全体を見た私は笑い転げて呼吸困難になり、騒ぎを聞きつけた家族や使用人も同じように笑い転げた。その後、数日間は家族や使用人が私の顔を見ては思い出し笑いしていたものだ。家中が笑いに包まれた数日間だった。
笑いは取れても馬には見えないその刺繍は、婚約者の手に渡らず私の裁縫箱にひっそりと眠るはずだった。
しかし、兄が発掘してしまった。
使用人を通じて私の失敗作置き場から探し出したハンカチを、ご丁寧にアイロンをかけて額装し、お得意のカリグラフィーでタイトルを書いて額に張り付けた。そして自分の部屋に保管していたようだ。気がついたら他の失敗作の中でも面白いものだけを厳選したコレクションができていた。
もちろん抗議するつもりだった。
が、額装されたコレクションが並んでいるのを見たら、息ができなくなって気絶するほど笑ってしまって抗議どころではなかった。ただ単に下手な私の刺繍が、兄のつけたタイトルにより笑える作品に生まれ変わってしまったのだ。
一番笑ったのが刺繍をした本人だったこともあって、許すしかなかった。
兄のつけたタイトルとセットになると破壊力が抜群になる。兄妹の合作だ。
兄がコレクションをするきっかけとなった婚約者の馬の刺繍は、今や馬の主である婚約者の手に渡ってしまっている。去年の誕生日プレゼントだったそうだ。もっとマシなものを送っていただけないかしら。
見れば笑えるけれど、出来たら処分してほしい。
今回の付与の話はいいチャンスなのではないか?
そう思っていた時期が私にもありました。
「だ、だめだ! あれは私の宝なんだ、他人の手に渡すなどもってのほか。絶対に断る!」
嘘でしょ。
あんな、笑いしかとれない珍妙な刺繍が宝なの?
この方、正気かしら?
「どんなに辛いことがあっても、嫌なことがあっても、あの刺繍を見るだけで笑顔になって、嫌なことを忘れることができるんだ! あれが我が家に来てから、私は毎日を笑顔で過ごすことができて本当に充実している。幸せなんだ。誰かに譲るなど、考えられない!」
……たしかに、悲しいことや腹が立つことがあったとしてもあれを見たら笑うしかない。
「シャリーがどうしても嫌だというなら、刺繍を譲る話はなかったことにしてくれ。ただ、本当になんらかの付与がついているようなら、どこかできちんと調べたほうがいいと思う」
「それはそうですね……どこで調べられるのかしら?」
「ある程度の腕がある魔法師か、研究者ならわかると思う。一番いいのは魔塔に送って調べてもらうのが確実だね。どんな付与が乗っているか詳しく調べてくれると思う」
「あまり人前に出したくないです……」
「それであれば、我が家の魔法師に頼むのが表に出さず内々で済ませられる。そちらの家で魔法師を雇っているならその人に頼む方法もあるけれど、専任の魔法使いを雇っていないだろう?」
うちの領地の規模では魔法師まで雇う必要が無い。
爵位のわりに土地面積が狭いことと、爵位が高いために領地面積に対して騎士団の規模が大きい。だいたいのことは人数がそろっている騎士団で処理できる。わざわざ別に専門の人を雇うことはない。
「専門の人がいないと、こういった場合に困りますのね」
「シャリーは結婚したら我が家に入るのだから、気にせずこちらを頼ってくれたらいい。あと半年もすれば結婚だろう?」
「そうですねぇ……では、結婚までにいくつか見繕っておきます」
「嫁入り道具に含めておいて」
彼は朗らかに笑っているが、あんな下手な刺繍を引っ提げて公爵家に嫁入りするのはちょっとどうかと思うのだった。
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<婚約者 ロッシュ視点>
刺繍を嫁入り道具にと提案したら、彼女が渋い顔になった。
自分が作ったものが好きではないのだろう。いつも渡してくるときに下手であることを強調してくる。実際にお世辞にも上手とは言えない。
彼女と婚約したのは私が12歳、彼女が10歳のとき。
我が国では伴侶となる女性が作成、刺繍した飾り帯が正装に取り入れられている。
それゆえに裁縫、特に刺繍が上手な女性は人気が高い。腕前によっては爵位の差を超えて結婚することもある。
私も母が裁縫をする様子を見ながら、将来結婚する女性はどんな女性だろう、刺繍は上手だろうか? などと考えていたものだ。
そうして婚約が決まり、数か月後に彼女から初めてもらった刺繍のハンカチは、それはもうひどい出来だった。
線がガタガタで、読めたものではないくらい形が崩れた文字が並んでいる。
それを渡す彼女も、刺繍の線のようにガタガタ震えていた。
受け取った私はなんとか笑顔を浮かべ、礼を言った。
顔は笑っていても、目が酷く冷めていたのだろう。彼女は私の顔を見た後にうつむいて、その日はほとんど会話らしい会話もなく終わった。
裁縫や刺繍がすべてだとは思わない。
けれど、期待していたのだ。
この国の女性は裁縫上手が多いから、きっと婚約者の女の子も上手なのだろうと。
期待外れだった婚約者との交流は、苦痛の連続だった。
なまじ優秀だったことが、欠点となる裁縫技術の拙さを強調した。
学問も語学も優秀なのに、裁縫が下手なのはなぜ?
音曲の技術はあるのに、どうして刺繍は上手くないの?
レースや毛糸で編み物ができるなら、針と糸で作業するのも同じじゃないか?
思えば子供の癇癪だったのだろう。
全く関係ない技術を結び付けて、あちらはできてこちらはできないと、できないことばかり注目していた。彼女にとって最低な婚約者だっただろう。
関係を上手く築けないまま二年以上の時間が過ぎたあるとき、彼女の兄で私にとって友人でもあるテッドが自宅へ招いてくれた。
そこで見せてもらったのだ。
私の宝物を。
人生で一番笑ったのはあの日だと断言できる。
あとにも先にもあれ以上笑うことはないだろう。
変な刺繍の数々と、そこにつけられたパンチの効いた作品タイトル。「とろけたスライム」「グリーンソースの中の生肉、あるいは腐った目玉焼き」「疾走するトレント」「破壊されたモザイク」等々。
額装された作品の数はそんなに多くはなかった。10よりは多く20よりは少ないくらいだったはずだ。
そのどれも壊滅的にへたくそな刺繍で、誰が作ったものかすぐにわかった。
彼女だ。私の、婚約者。
刺繍単品で見るとため息をつきたくなる作品ばかりだが、タイトルがつくと一気に読み解く楽しさが加わって面白くなった。
タイトルをつけたテッドに解説をしてもらい、何を刺繍しようとして失敗したのかがわかると余計に笑えるものになった。
笑って笑って、声が枯れるくらい笑って。
笑いが落ち着いたときに、テッドが教えてくれた。
「シェリーはさ、本当に刺繍が下手だけど悪気があるわけじゃないんだ。刺繍の練習を始めたころに針をかなり深く指に刺してね。それから針が怖くて触るのも苦痛なんだって」
思わぬ話が飛び出してきて、私は息をのんだ。
「一時期は本当にひどくてさ、刺さるものが全部怖いって、フォークも持てなくなったんだ。先がとがってて刺さるものは全部だめって、裁縫しなきゃいけない女のひとにはつらいだろうね」
私は自分を恥じた。
へたくそだと、内心でずっと馬鹿にしていて、あんな女の子と結婚しなきゃいけない自分は不幸だと思っていた。そんな自分のことが心底恥ずかしくなった。
こちらが見下して優位に立っているつもりの間に、彼女は努力していた。
恐怖と戦い、苦手な裁縫を頑張っていた。
なんて立派なことだろう。
怖くても、上手くできなくても努力を続ける彼女に、私は釣り合うのだろうか?
テッドが嘘を言っているのではないか、本当だったら自分はどれだけ恥知らずなのか。そんな気持ちが渦巻いて、あれだけ笑って楽しかった気分が一気に暗くなってしまった。
落ち込んでうつむいた私の肩をとりなすようにテッドが叩く。
「まあ、それはそれとして。へたくそなのは事実だからな! 遠慮なく笑ってやれ! 本人もすごく笑ってるから気にしなくてもいいぞ!」
「シェリー嬢も笑っていたのか?」
「うん。あの馬っていうかトレントのやつ。あれが完成したときに廊下まで響くくらい大笑いしてて、なにがあったのかと部屋に行ったら使用人までそろって床に跪いて笑ってた」
「使用人まで?」
「そうそう。でさ、俺もひと目みて笑っちゃって、一緒に笑ってたら母上とか父上までやってきてやっぱりみんな笑ってた。最後に、めったに笑わない家令のロン爺がきて仕事が進まないって怒ったんだけど、刺繍を見せられたら壁にこう……手をついてずっと震えてたよ」
そこまで笑うものか? いや、たしかに私も笑っていたな。
見た人全員が笑顔になる刺繍とは、ある意味傑作なのでは?
私の愛馬……をモチーフにした、トレントにしか見えない刺繍。
この作品は私の心に残り続け、辛いときや苦しいことがあったときなどに思いだしては笑うようになった。
そんな日々が続いているうちに、あの下手な刺繍がいつの間にか心の支えになっていたのだ。
私は友人に頼み込み『疾走するトレント』を譲ってもらった。それまでの人生の中で一番うれしい誕生日プレゼントだった。彼女は信じられないものを見る目をしていたが。
私の宝物が手元に来てからは、婚約者であるシェリーとの関係も変わっていった。
褒められたものではない私の態度からいずれ婚約を解消するかもと危惧していたシェリーは、どうせ結婚しないだろうからと忌憚ない意見を述べるようになっていた。テッドにその話を聞いたときは正直落ち込んだが、これまでの私の態度を思うと仕方がないだろう。
使われる言葉は明け透けでも、話の内容は真っ当で参考になることが多い。
頭がよくて努力を忘れない女性だからか、さまざまな話を振ってもきちんと答えが返ってくる。私は段々シェリーとの会話を楽しむようになっていた。
その裏で、私もこっそり裁縫に手を出してみたこともある。
人の作品に文句を言うのだから、自分はもっと上手にできなくてはおかしいだろうと考えたからだ。
そうして出来上がったものは、シェリーが作ったものより少しマシかな? 程度の出来映えだった。人のことを見下せるものではなかった。
裁縫上手な母と侍女に教えられて作った自分のイニシャルを刺繍したハンカチは、戒めとして保管してある。針を刺すとどのくらい痛いかも理解できた、いい経験だった。
一度だけテッドと一緒にシェリーが刺繍しているところを覗き見たこともある。
ハンカチのように白い顔で真剣な顔で針を動かしていた。あまりにも顔色が悪くて心配になったが、少しずつ顔色がよくなっていったのでほっとしていたら今度は顔が真っ赤になっていく。急な顔色の変化に戸惑っていたら、隣で作業していた彼女の母が背中を叩いた。「息をしなさい!」と慌てたようにそう叫ぶ夫人を見て、彼女がずっと息を止めて作業していたことを知った。
針を怖がっているのは知っていた。それがここまで酷いものだとは思いもよらず、私の心に強い衝撃を与えた。
真っ白な顔で刺繍を刺す姿。止めていた息をしたときに震えている刺繍枠。この二つが今も私の脳裏に焼き付いている。
「ねぇシェリー」
「なんでしょう」
「私はね、今はうまくできなくてもいいと思う。結婚して、子供ができて。子供が大きくなって、跡目を譲ってからでも上手くなるのは遅くないよ。そのときに、いまある作品を懐かしく思うことができたらきっと幸せだろうね。進歩の軌跡を楽しむ余裕があれば、人生はきっと充実して楽しいものになるよ。私はシェリーとそんな人生を歩んでいきたいと思っている」
今までこういった話をしたことがなかったからか、シェリーがポカンとしている。かわいいなあ。
本当なら裁縫をしなくてもいいと言ってあげたい。けれど、私が言ったところで彼女は苦手でも努力を諦めないだろう。
他人が作ったものを自分が作ったとごまかさない。そんな女性だから信頼できるし尊敬もできる。
「な、なにを言って……」
「つまりね、私は君と結婚するのが楽しみなんだ。生活が変わることで心配することはあるだろうけど、困ったことや悩んだことがあればすぐに相談してもらえるとうれしい」
「そのつもりではありますけれど……どうなさいました? 演習中に頭でも打ちました? それともどこか病気でも?」
シェリーが困惑しかないという表情でこちらを見つめる。給仕をしていた侍女が一瞬こちらへ目を向けた、不敬になりかねない発言が気になったのだろう。私は気にしないが外ではこういった発言をしないよう後で注意しておかなければ。彼女の名誉にかかわる。
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結婚後、シェリーが渋々持ってきた失敗作の刺繍を解析したところ、やはり付与がついていることが判明した。それも、高度な治癒魔法だ。
妻が嫌がったために公表は見送り、身内の緊急用にいくつかストックを用意することで決着がついた。
解析を任せた魔法師は妻の刺繍を見ても無反応だった。
「平民の刺繍もよっぽど上手い人じゃなければこんなもんです。刺繍下手な人は若旦那が思うよりたくさんいますよ。貴族の方々は基準が高すぎるんですよ」
とのことだった。
身近にいる人は見事な刺繍をする人ばかりだった。そのくらい上手なのが普通だと思っていたのが間違いだったようだ。
地位や立場が変われば、普通の基準が変わるのだなと非常に勉強になったのだった。
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作中にタイトルがでてきた刺繍の解説が活動報告にあります。
よろしければそちらも合わせてご覧ください。




