Silent Checkmate
将棋の盤上では、すべてが駒の動きで決まる。
でも、恋愛の盤上には正解の一手なんてない。
この短編は、静かな夜に繰り広げられる一方通行の恋と、盤上の戦いを重ね合わせた物語です。
少し大人向けの表現がありますので、ご注意のうえお読みください。
どうしてあなたは涼しそうな表情を浮かべているの。
あなたのその凛々しい顔を見ていると、なんだかぞくぞくするの。
たまらなく、熟していて。
少しの息遣いと、一定のタイミングで繰り返される瞬き。
いつも視線は盤上だけ。私と顔を合わせてくれない。これこそ一方通行の恋なのだと。
私の右四間飛車はヒットしているはずよね。あなたは盤上でしか反応してくれない。いつも毅然とされている。
あなたの振り飛車は、たまらなくバイオレンスで、私の駒組みを全否定してくるかのように襲ってくるの。
あなたの捌く第一歩の突き捨てに、私は条件反射で取り返す。わかるの。これを取るとあなたの猛攻が始まるって。でも、それを期待する私もいて。
危うい変化がそこらじゅうに広がる。盤上は恋模様。いつになったら終わりを迎えるのか。もちろん終わらせたくない。
私は少しでも物語を紡げるように、必死で粘る。不思議なものね。私が攻め込んでいたはずなのに。
時間に追われて必死に解答を探す私と、条件反射のごとくすぐさま暴力をしてくるあなた。
あなたの平手打ちはとても痛々しく、髪を引っ張られては何度も引っ叩かれる。でもその瞬間だけはあなたと目が合うから、私は幸せ。
強引に服を引き裂かれ、壁の隅で無防備になった私を小駒で仕留めにくる。容赦ないあなたが本当に好き。
触れるほど近くなった唇を見つめて、私は最後の言葉を絞り出す。
「負けました」
命だけは許して。するとあなたはぎゅっと抱きしめてくれるの。
お姉さま。
一方通行の恋だとは知っている。あなたとはこれからも盤上で愛し合いましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この短編では、将棋盤の駆け引きと恋心を重ねて描きました。
盤上でしか交わらない二人の世界を、少しでも楽しんでもらえたなら幸いです。




