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俺は人間に転生した

作者: 大自然の暁
掲載日:2026/02/23

 俺は人間に転生した。

 死んだ記憶はないが、人間に転生したことは直感的に理解できた。

 本能とでも言うべきだろうか。

 それでも、人間という種族に転生したのだ。


 転生は突然と訪れた。

 新たな生を受け入れるのに少々時間がかかった。

 そのため十数秒の間、俺は動きを止めた。

 その場で立ち止まり、あるいは寝そべり、座り、よろめいた。


 最初に開始したのは思考だ。

 各々の思考を回転させる。

 ある者は仕事の予定を、ある者は恋人の機嫌取りを、ある者は買い物を再開した。

 思考に伴い、肉体も動き出す。

 俺は人間に転生した。

 人間とはそういう種族だ。


 十数秒止まっていた社会が動き出す。

 俺だけの社会だ。

 俺が俺に挨拶をし、媚びへつらい、偉ぶった。

 とある学校、放課後にて、俺が俺をいじめる。

 上司の俺が部下の俺を都合よく使い潰す。

 それらは実に人間らしい。


 俺は人間に転生した。

 けれども、だからといって人間らしくある理由はない。

 邪な考えが脳裏に浮かんだ。

 一つ、やってみることにした。

 公衆の面前で男の俺を全裸にした。

 しかし、俺の理性がそれを阻んだ。

 警察の俺が全裸なった俺を逮捕し、牢屋に閉じ込めた。

 俺の異常性はこれで防がれた。


 実に理性的な判断をした。

 それが正解だったのか俺には分からない。

 俺は人間に転生した。

 人間はそこまで賢くない。

 と言うより、賢すぎるのだろうか。

 善悪の概念を生み出してしまったからいけないのだろうか。

 分からない。

 哲学的なことを考えてしまった。

 正解を考えるのは実に人間らしい。


 政治家の俺が二人いた。

 国民の俺が大勢いた。

 どちらかが大統領に当選する。

 選ぶのは俺だ。

 選ばれるのも俺だ。

 どちらが選ばれようと実質的には何も変わらない。

 国が変わるだけ。

 個人の持つエネルギーは同等のままだ。

 それでも何かが変わったように錯覚する。

 俺は人間に転生した。

 だからこそだろう。


 選挙が終わった。

 俺は新たな大統領として国に君臨した。

 賄賂やコネを使い当選した。

 狡いのは実に人間らしい。

 俺はまた次の選挙を待つことになった。

 国民に寄り添い、誠実に努力した。

 馬鹿真面目は実に人間らしい。

 人間らしい者が大勢いる。

 俺は人間に転生した。


 俺は人間らしくない俺を排除した。

 俺の理性がそうしたのだ。

 時々、人間らしさを捨ててみた。

 それでも、理性はあった。

 社会は人間らしさを望んでいる。

 俺は人間らしさを望んでいる。


 新興宗教があった。

 その教祖に俺はなった。

 信者の俺が教祖の俺に救いを求めた。

 何かにすがるのは実に人間らしい。

 だが、だんだんとおかしくなった。

 俺は人間らしかったはずなのに、理性が俺を拒んだ。

 新興宗教はカルトになり、社会は俺を排除した。

 信仰は実に人間らしい。

 だが、それが強すぎると駄目なのだろうか。

 理性は理論的ではなかった。


 理性は直感的な物だった。

 何かが引っかかる。

 何かがおかしい。

 何かが正しくない。

 人間はそう直感する。

 俺は人間に転生した。

 だからこそ直感的に理性を働かせる。


 俺は人間に転生した。

 人間らしさとはなんだろうか。

 理性的であることだろうか。

 その行為が人間らしいかそうでないか、俺は直感的に理解できる。

 それが理性だ。

 己を律する能力だ。

 人間は多様に存在している。

 俺は人間に転生した。

 しかし俺は多様ではない。


 だんだんと気が付いた。

 人間はおかしくなっている。

 俺一人の善悪感が人間全ての善悪感となっている。

 特定の善悪感を持ったものは排除される。

 それすら俺だからだ。

 俺はそんな俺がいるのが恥ずかしいのだ。

 同じ俺として恥ずかしい。

 理性でそう思うから、俺は俺を排除するのだ。


 異常な俺を排除した。

 ここには俺しかいないのに、それでも恥を覚えるのだ。

 俺は人間に転生した。

 人間とはなぜ恥のために同じ人間を排除するのだろうか。

 そう思ったところで、俺は変わらない。

 この先も、異常な俺を排除するだろう。

 少しは寛容になるかもしれない。

 しかし、人間とはそう簡単に変わらない。


 俺は実に人間らしかった。

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