表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[長編版] え? まだ現代魔法使ってるの? 古代魔法のほうが最強なんだが? ~魔導アカデミアの落ちこぼれは、禁断の知識で成り上がる~  作者: みんと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/25

24


 学内ランキング選抜大会での優勝から、数日が過ぎた。

 僕の日常は、以前とは比べ物にならないほど変わってしまっていた。


「あ、ロイ様だ!」「エンシェント・レイの司令塔よ!」


 僕が廊下を歩くだけで、女子生徒たちから遠巻きにキャーキャーと声が上がる。

 休み時間になれば、サインを求める生徒たちに囲まれることも日常茶飯事だ。

 僕はそんな状況に全く慣れず、どうしていいか分からずに挙動不審になってしまう。


「え、あ、あの……僕は別に、様とかじゃ……」

「やれやれ、英雄様は大変ですわね。少しは堂々となさいな」


 シャルロッテが、やれやれといった風にため息をつく。


「もー、ロイったら、もっとシャキッとして!」


 ニコが、いつの間にか僕のマネージャー兼護衛役のように、慣れた手つきで人垣を捌いてくれる。

 僕たち三人の、新しい、そして少しだけ騒がしい日常が始まっていた。


 そんなある日の授業後だった。

 グラン教官が、僕たちの教室にやってきた。


「アンデシウス。学長がお呼びだ。……それと、ニコ君、シャルロッテ君もだ。三人でご一緒願いたいとのことだ」


 チーム全員が呼ばれた、という事実に、僕たちは顔を見合わせる。

 ただ事ではない雰囲気を察し、僕たちは緊張した面持ちで学長室へと向かった。


 

***

 


 学長室の扉を開けると、そこにはグレイワイズ学長とグラン教官、そして見慣れない、いかにも高官といった風情の壮年の男性が待っていた。

 彼の胸には、王家の紋章が誇らしげに輝いている。


「紹介しよう。こちらは王宮魔術師団の副団長、アイゼン様だ」


 学長の言葉に、僕たちは息を呑んだ。

 アイゼン副団長は、厳しい目で僕を値踏みするように見つめ、重々しく口を開く。


「君が、ロイ・アンデシウス君か。大会での活躍、そして地下遺物の件、報告は陛下にまで届いている」


 その言葉が意味するのは、僕の功績が、このアカデミアという小さな枠を飛び越えて、国家レベルで注目されているということだった。

 特に、古代魔法という失われた技術を、実践レベルで、しかも新たな形で復活させたことに、王宮の魔術師団が強い関心を持っているらしい。

 アイゼン副団長は、従者から金色の装飾が施された、王家の印が押された羊皮紙の巻物を受け取ると、僕に差し出した。


「それは、王家からの正式な招待状だ」


 僕が戸惑いながらもその荘厳な巻物を受け取ると、アイゼン副団長がその内容を説明する。


「君を、王都にある『国立魔法研究所』の特任研究員として、期間限定で招聘したい。もちろん、アカデミアには在籍したままで構わない。君の持つ古代魔法の知識を、国のために役立ててほしい」


 グレイワイズ学長が、にこやかに補足してくれた。


「王都には、国中から集まったエリート魔術師や、アカデミアの比ではない古代の遺物が数多く眠っている。それこそが、私が言っていた『本当の“試練”』の第一歩だよ、アンデシウス君」


 王都の、国立魔法研究所。

 僕は、突然のスケールの大きな話に圧倒される。

 だけど、そこで一つの重要な疑問が頭に浮かんだ。


「あの……学長。大変光栄な話ですが、僕は、この大会で優勝したので、アカデミアの代表として学園対抗戦に出場することになるのでは……? その件は、どうなるのでしょうか?」


 僕の質問に、学長は「うむ、よくぞ気づいたね」と穏やかに微笑んだ。


「その通りだ。だが、心配はいらない。学園対抗戦は、次の学期、つまり秋に行われる。王都への招聘は、それまでの夏休みの期間を利用したものだ。むしろ、王都でさらなる知見を得て、より強くなって帰ってくることを期待しているよ。それこそが、対抗戦で我が校を勝利に導く、最大の力となるだろう」


 学長の言葉に、僕の中で点と点がつながった。

 僕のやるべきことが、明確になったんだ。

 その僕の表情の変化を見て、シャルロッテが目を輝かせる。


「王都の国立魔法研究所……! それに、対抗戦のためのパワーアップも兼ねていると。面白そうですわね!」


 ニコは、少し不安そうにしながらも、僕の手をぎゅっと握りしめた。


「ロイが行くなら、私も行く! どこへだって!」


 僕は、力強く頷いてくれる仲間たちの顔を見て、そして手の中の重い招待状を見つめる。

 僕の目の前には、アカデミアという枠を超えた、広大な世界への扉が開かれようとしていた。

 僕は、静かに、しかし力強く頷く。

 僕たちの、新たな舞台への挑戦が、今、始まろうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ